484 / 526
逃げてばかりではダメなのです19話
◆◆◆
寝返りで目を覚ました西島。
あれ?俺……ベッドで寝たっけ?
寝返りをして自分のベッドだと気付いた。
少し身体を起こすと横で眠る碧が視界に入る。
ぐっすりと眠っていて可愛い。
思わず頭を撫でる。
俺……ソファーに居たよな?
碧の頭を撫で終わるとベッドから起き上がる。
ベッドに自分できた記憶がないから……もしかしなくても……此上?
碧に運べるわけがないので此上か神林が運んで来たのだろうな……と思う。
ちくしょう!ソファーに寝かせて置けばいいものを!!!
きっと、お姫様抱っこを碧に見られたに違いない。
俺はお姫様抱っこをする側なんだよおお!!!と心で叫んでみる。
そして、水を飲みにキッチンへ。
冷蔵庫を開けると足元にフワフワした感触。
何なのかは見なくても分かる。
「ニッシー、ワシもミルク」
足元から聞こえてくる声。
フワフワの正体の諭吉。本当に目ざといなあと思う西島。
「本当にお前ってどこで見てんだよ」
「耳も良かとぞ!」
「はいはい」
西島は猫用ミルクも一緒に冷蔵庫から取り出した。少し温めて諭吉に与える。
「なあ、俺を運んだのって」
「神林ぞ!碧がキラキラした目で見よった、碧もニッシーばお姫様抱っこしたかげなぞ」
諭吉はぺろぺろとミルクを舐めながら答える。
ちくしょー!神林だったか。
「碧は騎士に憧れとるけんな、マッチョになるかもぞ!」
「は?それは嫌だ」
西島は即答する。
「碧もああみえてオスやけんな!好きな人ば守りたかとたい、此上とかみたいに軽々とお姫様抱っことかしたかとやろなあ」
「碧は俺のお姫様でいいんだよ!俺が碧を守る」
「ニッシーは守られ上手やけんな」
「は?」
「気付いとらんか?ニッシーは沢山の人に守られとっとぞ?ニッシーはお姫様が似合うばい!此上が騎士で良かやっか」
「はあ?何でそこで此上なんだよ!お姫様とか絶対に嫌だ!」
西島はペットボトルを掴む手に力が入る。
「ニッシー早う気付けな」
諭吉は尻尾でパシンと西島の足を叩くと寝室へと歩いて行った。
「あんにゃろーめ!」
何に気付けと言われたのか西島はまだ気付かない。
◆◆◆
「碧、おはよう朝だよ」
身体を緩られ、碧は目を開けた。
目を開けた先にはキラキラした笑顔の西島がいる。
思わず手を伸ばして「王子様だあ」と抱き着く。
王子様?
一瞬、キョトンとなる西島だがお姫様よりはマシだ。
「寝惚けているのか?」
くすくす笑いながら抱き着く碧の頭を撫でるとそのまま抱き上げた。
抱き上げる碧は軽い。
本当にお姫様みたいだな……なんて思う。
抱っこされたままテーブルに。
「碧、ほら、着いたよ」
椅子に座らせる。が、ぎゅっと抱き着いて離れない。
まだ、寝惚けているのかな?と背中をトントンと叩く。
「んー」
少し声を上げてその後は寝息が聞こえる。
やっぱ寝惚けてたか……。
西島は碧の耳元で「起きないとチューするぞ?」と囁く。
「んー、チュー……してぇ」
碧がもぞもぞと身体を動かす。
西島は碧の身体を椅子の背もたれに押しやるとウトウトしている碧の顔を上にあげ、薄く開いた唇にキスをした。
ともだちにシェアしよう!