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逃げてばかりではダメなのです20話

くちゅ……、 舌が口内へと入って絡みつく。 「ん……っ」 碧はフワフワした夢の中、西島にキスをされていた。でも、リアルな夢。 ゆっくりと目を開けると目の前に西島の長いまつ毛が。 ちひろさん……まつ毛長い……。 「んっ、」 舌が力強く絡んできて碧の身体はビクッとなる。 唇が離れて碧を真っ直ぐ見つめる西島は「おはよ?目、覚めた?」と碧に聞く。 碧はゆっくりと頷く。 「さっきの……王子様はちひろさんですね」 「えっ?」 「目を開けたらイケメンの王子様が僕に微笑んでいましたもん」 「あはは、何だそれ?」 西島は碧の頭をくしゃくしゃに撫でると「ほら、顔を洗っておいで朝ごはんにしよう」と椅子から立たせた。 碧は洗面所に顔を洗いに行く。 顔をパシャパシャ洗いながら今日、何かあったような……と考えた。 そして、「あ!星夜くん!」と斉藤が今日から仕事に来るのを思い出した。 「ちひろさん!今日から星夜くんが」 「こら、碧!ちゃんと拭いて」 慌てていたので碧はタオルで顔を拭くのを忘れていた。 西島はタオルを手にすると碧の顔を優しくタッチしながら拭く。 「ふふ……なんか……前にもこんな事ありましたね」 女子社員に化粧をされて西島に顔を洗って貰った事を思い出す。 「あったな」 西島も思い出したのか微笑む。 「あれには感謝してるよ」 「えっ?」 「あれがなかったら碧とこんなに仲良くなれなかったかも知れないからな」 「……そうですね」 あ、そうだ!と碧も思った。 もし、あの時……化粧されなかったら西島とは急接近出来ていなかった。 嫌だったけれど、プラスに繋がる事ってあるんだなって思う。 「碧、可愛かったし」 「えっ!!」 碧は真っ赤になる。 「猫耳のメイドさんも可愛かったし……またやってよ」 「えっ!ええっ?」 「いいだろ?」 じっーと見つめられ碧は顔を赤らめる。 「ち、ちひろさんがそんなに見たいなら」 「やった!」 喜ぶ西島。 「でも、ちひろさんもまた執事の格好してくださいね!似合うから」 「執事?いいけど?」 「そ、それと……王子様の格好」 「は?」 その言葉に西島は固まる。 「騎士様でもいいですよ」 騎士様……ふと、此上が騎士をやったのを思い出す。 「あ……い、衣装があればな」 学園祭でやった劇の衣装って返したんだっけ?と考えながら返事をした。 碧は「やったあ!約束ですよ?」と嬉しそうだった。 ◆◆◆ 「碧!!」 会社近くで斉藤に呼び止められた。 「星夜くん!」 碧は嬉しくて大きく手を振る。 斉藤だけのようで碧と西島の元へ走ってきた。 「おかえりなさい」 「ただいま!碧、寂しかったぞお!」 斉藤は碧に抱きつく。 もちろん、直ぐに西島に阻止された。 「西島部長……相変わらずですねえ」 阻止する西島を見てニヤつく斉藤。 「うるさいよ!佐々木はどうした?」 「先に会社に行きました」 「あ、そう」 「あ!お土産です!俺とゆうちゃんから」 斉藤は西島に紙袋を渡す。 「お前はともかく……佐々木からの土産は怖いんだけど」 でも、ありがたく受け取る西島。 「こっちは碧」 碧にも袋を渡す。 「わあ!ありがとう」 「碧」 斉藤はちょいちょいと手招きをすると耳元で「そのセクシー下着穿いて西島部長をメロメロにしろよ」と囁く。 せ!セクシー下着ですとおお!! 碧の顔はみるみる赤くなる。 「こら、何吹き込んでる!」 碧の真っ赤な顔でいかがわしい事と判断した西島は斉藤を睨む。 「やだなあ!二人の夜の手助けですよお!碧に似合いますから」 斉藤は西島の肩を叩いてニヤニヤした。

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