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一学期-3
「あ、これ俺も読んだ」
「嘘だろ」
「失礼だなー」
と言いつつも芦澤はおかしそうに笑い、本の感想を述べてみせた。どうやら本当に読んだらしい。それほど有名どころではなく話題作でもないので、けっこうな読書家でないと読んでいないだろうに。
「…他に最近読んだ本は?」
試しに訊ねてみると、すらすらと複数のタイトルが出てきた。半分ほどは読んだことがあり、残りは未読だった。
「…本当に読むんだな。にわかには信じがたいけど」
しみじみと言うと、芦澤はにゃははと笑った。
「人は見た目によらないんですよ水原くん。覚えておきなされ」
「うるせー余計なお世話だ」
お前だってどうせ俺のこと見た目で判断して地味で根暗でコミュ障だと思ってただろ。まあ俺は見た目によるんだけど。
「あはは、マジおもしれーな水原。これから仲良くしようぜー本好き同士」
「いらんわ。俺は下の緩い奴と仲良くする趣味はない」
「にゃははー確かに緩いけどさー」
断ったはずなのに、それ以来芦澤は俺にしつこく付きまとってくるようになった。何度拒否してもめげずに話しかけてくる。
そのうち拒絶するのも無駄に思えてきて、なぜか受け入れる形になってしまったのだった。不覚にも。
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