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二学期-3
「ふーん」
芦澤の目はどうしてこんなにきらきらしているんだろう。この目に見つめられると、俺はいつもいたたまれなくなって、視線を逸らしたくなってしまう。
思わず顔を背けそうになった次の瞬間、
「よかった」
芦澤がにやりと笑って言った。
「は…?何が」
怪訝に思って問い返すした途端、文脈を思い出して、一気に体温が上がった。
「お前のファーストキスがまだで」
分かっているのにご丁寧に説明を加えられて、やばいくらい心臓が暴れ出す。
芦澤はさらに顔を近づけてきた。そして輝く瞳で俺を見る。
「水原って、色白いよな」
「…お前みたいに外で遊び呆けてないからな」
「肌つるつるだし」
「…だから何だよ」
「触ってみていい?」
「…な、に言って…バカか」
すると芦澤は「また嘘だ」と笑った。それからすっと手を伸ばしてくる。
その指先が頬に触れた瞬間、電流が走ったような気がした。びくりと肩が震える。
「ははっ、震えてんじゃん。怖い?」
「はっ、怖いわけないだろ、バカか」
言ってから、あ、しまった、と後悔したが、時すでに遅し。
「じゃ、いいんだな」
芦澤の指が頬をすべり、顎を軽くつかまれる。くいっと仰向かせられ、芦澤の影に包まれた。
その影がどんどん大きくなる。
もう触れ合ってしまう、と思った瞬間、芦澤の動きが止まった。
「…いい?」
どこか戸惑ったような、困ったような顔。俺は内心で舌打ちした。
――今さらそんなこと聞くなよ。
俺は無言のまま手を伸ばし、芦澤の首筋に腕をまわした。
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