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三学期-1
◇
「…ちょ、おい悠人…っ」
「んー?」
「学校だぞ…っ」
「知ってる」
めったに人が来ない場所なのをいいことに、悠人は俺のワイシャツのボタンを外しにかかる。俺は「いい加減にしろ」とその手をぺしりと叩いた。
「昨日もやっただろ。この万年発情期ヤロー」
「喜べよ、お前で毎日発情してんだよ」
「キモいわバカ」
「あー嬉しいのね、うんうん」
俺の悪態に少しもめげない悠人の手が襟元から忍び込んでくると、いつものように抗えなくなってしまう。自分がこんなに押しに弱いなんて、こいつと付き合うまで全く知らなかった。
はだけた首もとに柔らかい唇が触れると、一瞬で身体中に沸騰した血が巡るのを感じた。二人分の少し荒くなった吐息が階段下の空間にこだまする。
あー、もう、なんでもいい…という気になってしまう。
色づいた雰囲気に流されて目を閉じ、背後の壁にもたれた直後、ぱたぱたと足音が聞こえてきた。
二人同時に息をつめ、硬直する。足音が遠ざかるを確認してほっと息をついたものの、膨らみかけた欲情は一瞬で萎んでしまっていた。二人していそいそと服装の乱れを直す。
「ちっ、タイミングわりーな」
「いや、場所が悪いんだろ」
「しかたねーじゃん、樹の顔見てたら我慢できなくなんだもん」
悠人は悪びれずに笑ったが、俺はふと、いつまで続くんだろう、と思いついて、胸の奥がずきりと痛んだ。
悠人が俺に執心しているらしいことは分かっている。
でも、そんなの、いつまでも続くとは限らない。いや、いつまでも続くなんて思えない。一時的な熱に浮かされたようなものなんじゃないか。
そう思いついてしまったら、薄寒い気持ちになる。
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