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三学期-2
「樹、先行く?」
問われて首を横に振る。二人きりで会うときは誰にも見られないようにばらばらに動くことにしていた。
「じゃ、俺が行くわ。また後でな」
おう、と答え、悠人の姿が見えなくなるのを待ってしゃがみこんだ。頭を抱えて髪をくしゃくしゃかき回す。ふー、と長いため息が出た。
こんなふうにため息つくことなんてなかったのに。あいつと付き合うまでは。
悠人と付き合うことで俺は一から十まで変えられた、という気がする。
しばらくぼんやりしていたら予鈴が鳴ったので、俺は慌てて教室に戻った。
ドアを開けると、そこにはいつもの光景。クラスの真ん中で大勢に囲まれて楽しそうに笑っている悠人。
俺は根本から変えられたのに、多分あいつは、何一つ変わっていない。
ずっと一人だった俺にとって悠人は特別すぎる存在だけど、悠人にとって俺はあくまでも、あいつが今まで関係してきたたくさんの人間の中の一人だ。
そんなこと分かりきっていたはずなのに、今になって急に怖くなってくる。
そして、一度怖れはじめると、恐怖と不安は急速に育っていき、自分でもコントロールできないほどに膨らんでしまった。
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