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三学期-3

◇ 「樹ー、今日お前んち行っていい?」 すたすたと駅に向かって歩く俺を追って、悠人が声をかけてくる。 「…だめだ」 「なんで?親いるの?」 「…いないけど」 「じゃあ珍しく何か用事?」 「…そういうわけじゃないけど」 「じゃ、うち来る?」 「…行かない」 前を向いたまま答えると、悠人ははーっと息を吐き出した。 「最近そんなんばっかじゃん。どしたの、お前。なんかあった?」 「…なんもねーよ」 ならいいけど、と悠人が俺の腕を引いて、自販機のかげに入る。そのままキスされそうになって、思わず顔を背けた。 「え、なんなん。普通にショックなんだけど」 「……」 「どういうこと?俺のこと嫌になった?」 「…そういう、わけじゃ」 おい、と悠人が俺の肩をつかんだ。 「目え見て話せよ」 「……」 少しだけ顔を向けると、悠人が険しい表情で舌打ちをした。 「…んだよ、わっけ分かんねえ。腹立つ」 今まで聞いたことのないくらい低くて厳しい声で悠人が言った。息が苦しい。 「…じゃあ、やめれば」 ごめん、と一言言えば済むかもしれないのに、俺の口から飛び出してきたのはそんな言葉だった。 「やめるって、何を」 「俺に構うの」 「はあ!?」 今度こそはっきりと怒りが滲む声。びくりと肩が震える。 「何言ってんだよ。構うとかじゃねーだろ、俺とお前は」 「あれだろ、ただの好奇心だろ。俺がお前の周りのやつらとタイプ違うから興味もっただけだろ」 「マジで、何言ってんの」

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