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三学期-4

「それともあれか、女とやりすぎて飽きて、男とやってみたかっただけか。そんで、女とやるより気い使わなくていいし楽だからずるずる、みたいな?いつでもやれるし?」 こんなことを言うつもりなんてなかったのに、言葉は驚くほどするすると出てきた。 それで気がついた。 俺はずっとこれを言いたかったんだ。 気になっていたんだ、悠人が俺のことをただの興味本位で抱いてみただけなんじゃないかと。 自分でも知らなかった自分の本心。それをこんな形でぶつけるなんて、俺はなんて女々しいんだろう。たぶん今、俺はものすごく醜い顔をしている。 でも、考えれば考えるほど、今自分が言ったことは真実だという気がした。 軽すぎる始まり方も、付き合い始めるきっかけも、二人で会うと必ずセックスしていたことも。つまり、そういうことだ。 「お前にとって俺は、ただの性欲処理の道具だろ…」 「…ざっけんな!」 ガンッという激しい音。悠人が自販機に拳を打ちつけたのだ。 「お前それ本気で言ってんのかよ!」 「本気だよ」 悠人は俺を睨んだまま唇を噛んだ。それから長い、長い沈黙のあと、 「…分かった。もういい」 諦めたように、呆れたように小さく呟くと、ゆっくりと踵を返し、駅のほうへと去って行った。 それが俺と悠人の最後の会話だった。 一度も振り返らなかった固い背中が、今でも俺の目にくっきりと灼きついている。

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