13 / 16
卒業式-2
自分の名前が呼ばれ、機械的に足を動かして証書を受け取り、そのまま退場の列に加わる。体育館を出て、渡り廊下を行く。
一番前に、俺の目をひきつけて離さない背中。振り返らない背中。
俺の脳裏に、全く別の方向からやってきて一瞬だけ交差し、それからまた全くの別方向へと離れていく二本の直線が浮かんだ。
もう二度と交わることのない、俺と悠人の人生。
―嫌だ。
こみあげるように、思った。
嫌だ、もう二度と悠人に会えないなんて。
俺はなんて馬鹿だったんだろう。
俺にとってあいつはこんなにも大きい存在になっていたのに、どうして自分から突き放すようなことをしてしまったんだろう。
右手に持った卒業証書を握りつぶし、二ヶ月前の愚かな自分を呪った。
もう二度と話せないなんて嫌だ。
もう二度と顔を見れないなんて嫌だ。
もう二度と触れあえないなんて嫌だ。
もう一度、悠人が俺を見てくれたら、
もう二度と、悠人から視線を逸らしたりしないのに。
もう一度、悠人が俺に笑いかけてくれたら、
もう二度と、裏腹な言葉で悠人を怒らせたりしないのに。
友達と写真を撮っている横顔に、心の中で呼びかける。
なあ、悠人。
もう一度、お前が俺の手をとってくれたら、
もう二度と、裏切ったりしないから。
もう一度、お前が俺を抱きしめてくれたら、
もう二度と、離れたりしないから。
だから、どうか、こっちを向いてくれ。
素直になれない俺が馬鹿だったんだ、許してくれ。
なあ、悠人――
ともだちにシェアしよう!