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第95話Revive

三人組は、気味の悪い笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ってくる。そしてリーダー格の男が、俺の顔を覗き込むようにしてしゃがみ込んだ。 『久しぶりだなぁ三浦。今は双木、だっけ?』 「……てめぇらのことなんて覚えてねえよ」 『見た目だけじゃなくて中身まで変わっちゃったの?ユウコちゃん』 「るせえ、その名前で呼ぶな…」 『なーんだーちゃんと覚えてるじゃん』 キッと三人を睨みつける。縛られているから殴ることも出来ないのが歯がゆかった。 『随分男前になったなぁ?喧嘩もすごい強かったんだってね』 『人って変わるもんだね、すごいすごい』 「いい加減にしろよ…鬱陶しいんだよ」 『いや、自分の立場くらい自覚しろよな』 一人が笑いながら俺の目にかかった前髪をかきあげて耳にかける。 『髪濡れてるのいいね…昔みたいに泣かねーの?』 「誰が泣くかよ」 『三浦が泣かないとなんも面白くねーじゃん』 『よく見たら今もキレーな顔してんね。昔の方がもっと女の子みたいだったけど』 『俺たち何も聞かされてないから知らねえけどさ、これからオトモダチが助けに来るんだろ?』 「…来ねえよ」 畳み掛けるように三人口々に話してくる。 こいつらの顔を見るだけでも不快だ。いったいこれから増える人員というのは何人ほどなのだろうか。もしも小笠原が一人できてしまったら? 『なんだよ、そのオトモダチと仲良しなんじゃねえの?』 『ああ、もしかして友達じゃなくて彼氏だった?』 そう言って下品に大きく笑う。もうこいつらと何を話しても無駄だ。話す価値がない。 『なんだよ、黙り込んじゃって』 『彼氏が助けに来てくれるか不安なの?ユウコちゃん』 『そんな怖い顔すんなって。彼氏が来るまで俺達が遊んであげるからさ』 顎を掴まれ、無理やり上を向かされる。目を細めてこちらを見てくるので、視線を横に逸らした。 『こっち見ろよ…うわ、まつ毛なっが』 「っ……」 顎に手を添えたまま、親指で唇をすっと撫でられる。その気持ち悪さに、反射的に頭を振って手を払った。 『なんだよ、いいだろちょっとくらい』 『〝こういうこと〟慣れてるでしょ』 『そうだったな、転校したのってお前の父親が性的虐待してたからなんだろ?』 それを聞いて背筋が凍る。どうして、それをこいつらが知っているのか。 『お前のかーちゃんが職員室でぎゃーぎゃー騒いでたの聞いたんだよ、俺ら』 『あんときはその意味もわかってなかったけどな』 『真田ってそのこと知ってんの?』 『さぁ?アホだから知らないんじゃね?』 『おい、聞こえたらどうすんだよ。あいつの父親まじでやべーって』 淡々と会話が流れていくが頭が追いつかない。勝手に引越しと転校を決めていた母親は、学校に押しかけてそんなことまで言っていたのか。古傷が、また少しずつ開き始める。 『男に性的虐待とかありえないよな、しかも息子って』 『小学生のころのこいつなら女の子とそう変わんないでしょ』 『いや…今も意外といけるんじゃね?』 『お前まじかよ、ホモじゃん』 『声変わりさえしてなければな〜』 『流石にこれはきついっしょ』 一体なんの話をしているんだ。 まずい。最近夢を見たばかりだからか、呼吸がまた乱れてしまいそうだ。さっさとこの話をやめてくれ。 一人の手が、俺の服へと伸びてくる。 「やめろ、触んな…!!」 そのまま着ていたTシャツの裾を上まで捲りあげられてしまった。 『体つきはもう男っぽくなっちゃったね』 『だからきついって…でも、めっちゃ肌白いな』 「やめ…ろ…って」 『震えちゃってどうしたんだよ、また泣くのか?』 また父の記憶が引きずり出されてしまう。息を整えないと過呼吸になりそうだ。こいつらの前でそうはなりたくない。 そっと腹筋にそって指を這わされる。その感覚と恐怖が相まって体が震えた。触れる手の温もりが気持ち悪い。 「ふざけんな…」 『昔はあんなになよなよしてたのにな』 そのまま手が胸元をなぞる。一番触れてほしくない所を指が掠めてしまう。 「ぁ…んっ…」 少し声が漏れてしまうと、ピタッと指の動きが止まる。 『…いい声出せるじゃん』 『なに…感じてんの?やばくねこいつ』 『父親に開発されたんじゃねーの?』 今度は力をこめてぎゅっと抓られる。あまりの痛さに顔を歪めた。鋭い痛みがはしると同時に、小笠原はいつも加減をしながら痛みを与えていたのだとわかる。 「い゛っ…あっ…やめ、ろ」 『こういうことされてたんだろ?』 『うわ、乳首勃ってるじゃん』 『これって気持ちいいの?』 気持ちよくなんかない、ただ痛いだけだ。どんなに痛くても刺激を加えられればそうなってしまうのだからどうしようもなかった。 『嬉しいか、三浦ぁ?』 「んっ…ふざ、けんな…死ね!!」 『生意気言うなよ』 しつこくグリグリと責められて、ただただ気分が悪かった。それなのに声が出てしまうのが嫌で口を必死に噤む。それが面白くなかったのか、いきなり胸板に舌を這わせてきた。 「なに、すんだよ…!気持ち悪い…やめろ!」 『お、こっちの方が反応いいな。もっと嫌がれよ』 「ん…あっ…い、やだ…やめろ…」 『感じてるじゃん…きも』 『お前そう言いながら勃ってるじゃん!ユウコちゃんで勃った?』 『うるせぇなしょうがねえだろ!最近女ともシてねぇし…』 なんでそうなるんだよ、気持ち悪い。それは愛撫とは程遠かったし、快感も何も無かった。舌の生ぬるい感覚から逃れたい。 どうして俺ばかりこんな目にあわなければならないのだろうか。そしてこんな時まで、小笠原の愛撫と比べてしまう自分が嫌だった。 『じゃあ三浦に抜いてもらおうぜ』 『え〜まじで言ってんの?』 『いいじゃん、意外と上手かもよ?』 「は…?お前ら…何言って…」 正気か?そんなこと出来るはずがない、触るのも見るのも嫌だ。俺の気持ちはお構い無しに、その忌々しいものをズボンから覗かせる。 「気持ちわりぃもん見せんな…!!」 『なんだよ、見慣れてるんじゃねえの?ほら、お前もっと見せてやれよ』 「やめろ…!近づけんじゃねえ!!」 『お前のせいでこうなったんだからな…』 『手使えないけどとうすんの?』 『口があんだろ』 嫌だ。嘘だ。逃げられないとわかっていても、必死にもがいて拘束から抜け出そうとする。 だめだ、息ができなくなる。その顔が父親のものと重なって見えた時、呼吸の仕方をまた忘れてしまった。 「ひっ…あっ…ぁ…やっ…」 『あ?どうしたのこれ』 『怖くなっちゃったかなー?』 『息できねえの?可哀想だね、今栓してあげますからね〜』 まともに喋ることすらままならない。首を振って何度も拒否を示すが、それも無意味だった。 顔を掴まれて固定され、いきり立ったそれが近づけられる。 『ほら、お口開いて〜』 「…っや…ぁ…」 『チッ…さっさと開けよ!!』 その瞬間、顔に思い切り膝をいれられた。 鼻が経し曲がってしまいそうだ。 「あ゛っ…ぁ…うっ…」 『おいおい、あんまり手出すなって真田に言われただろ?』 『ふん、誰があいつの言うことなんてまともに聞くかよ』 『あ、鼻血出しちゃった』 言われてみれば鼻からなにかが垂れていく感覚があったような気がする。しかし今はそんなことも気にしていられない。 手が伸びてきて、鼻の下を指で拭われたかと思うと、今度は鼻をつままれた。ただでさえ過呼吸で辛いのに、余計苦しくて口を開かざるを得ない。 『はいはい、いい子にしててね』 『じゃあ、入れるぞ…』 遂に口の中にそれが入ってくる。匂いが充満して今にも吐いてしまいそうだった。 『…どんな感じ?』 『あったけぇ…結構気持ちいいかも』 『三浦、どうだ?うまいか?』 本当は嫌だという意思表示をしたい。けれど苦しくて何も出来ずにただ睨みつけるしかなかった。口の中が気持ち悪い。今すぐに噛み切ってしまいたい。 『生意気な目ぇしてんな…』 『ほら、動いてやれよ』 『あ、あぁ…歯、たてんなよ…?』 ゆっくりそれが喉の奥をつく。息苦しいのに息継ぎもうまくできなくて最悪の状態だ。 そして、頭を他の二人に掴まれて無理矢理口内を犯された。 「んっ…んぐ…う…っ!!」 『あー…やば…気持ちいい』 『お前腰振ってんじゃん、そんなにユウコちゃんの口いいの?』 『良かったな三浦、お前の口名器だってよ』 嫌だ、苦しい、気持ち悪い、怖い。でもこんな奴らの前で泣くわけにはいかない。必死に涙を堪えて気持ち悪さに耐えた。 何が違うのかわからない。小笠原とやっていることは同じなはずなのに。助けてほしいとどこかで思ってしまった時に浮かび上がるのは小笠原の顔だった。 『はい、スピードアップしようねー』 それを合図に頭を動かされる速度が上がる。喉をついてくる回数も増えて何度も吐きそうになった。 「ん゛っんっ…ぅ…ぐっ…っ」 『あっ…待って、もうやばい…』 『早くね?お前早漏かよ』 『うるせえっ…良すぎんだよこれ』 『じゃあお前終わったら次俺な』 冗談じゃない。まさか三人分も同じようなことをするつもりなのか。このままでは体力も精神も削り切られてしまう。 喉の奥を何度もそれで突かれて、その度に嗚咽が漏れそうになるが動きは止まらない。口の中に広がった嫌な味がいつまでも消えなくて、本当に死んでしまいたかった。 『っ…あー…出そう、もう出る』 『ユウコちゃん、ちゃんと飲んでやれよ』 『俺の番になったら顔にぶっかけるわ』 『顔射かよ、お前そういうの好きだよな』 「んぅ…っん…う…」 『…っ出すぞ!』 喉の奥に気持ちの悪いその液体が溢れる。口の中からそれが引き抜かれたと同時に、床に口内の液体を吐き出した。息は乱れて、口の中もまだ気持ち悪いままだ。 『おい、ちゃんと飲めって言っただろ?』 『美味しかったか?』 「ふざ、けんな…お前ら、絶対に…殺す!!」 『なんだよ、さっきまでちんこ咥えてたくせに』 『息治ってきたじゃん、俺のおかげ?』 『なぁ、次俺やっていい?』 口々に違うことを話す。いつまでこの空間に耐えなければならないのだろうか。苦しい…気持ち悪い。 『じゃあ俺こっちに入れようかな…』 『え、お前まじ…?』 『それはやばいって』 すっと下半身へ手が添えられる。全身の血が一気に引いていくのがわかった。 「っ…やだ…いやだ、やめろ…!!」 『めっちゃ嫌がるじゃん?処女なの?』 『男に処女とかうける』 『ケツって気持ちいいのかな』 「ほん、とに…これだけは…」 ズボンへと手がかけられる。 本当に俺はここで犯されてしまうのか。 誰にも助けを求められない。誰も助けてはくれない。 「い、やだ…!!やめろって…いやだっ!!」 『うるせえな…大人しくしろ!』 「おい、何やってんだお前ら!!」 そのとき、外から帰ってきた真田の声がした。 三人は渋々俺から離れる。 助かったのか…? 「そろそろ援軍が来るからお前らも外にいろ」 『チッ…いいとこだったのに』 『いいから行こうぜ』 『俺まだなんもしてもらってないんだけど〜』 三人と入れ違いに真田がこっちへやって来る。俺の姿を見るとぎょっとして目を見開いた。何か罵声の一つでも浴びせられるかと思っていたが、真田は眉を下げて唇を噛み締めている。 「…ごめん」 そう言いながら服の裾で俺の口元を拭う。なぜ真田が謝るのだろうか。やはりこいつは根っからの悪人ではないようだ。 「なんで…お前が謝るんだよ…」 「何も言ってねえし…遥人達が来るまで、大人しくしてろよ」 そう言った真田は、ずっと俺に背を向けて顔を見せようとしなかった。

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