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第102話Touched②
ハルの手が服の中に滑り込んでくる。身体の形を確かめるようにゆっくりと骨をなぞりながら触っていく。擽ったくて思わず手を掴んでしまう。
「ん?どうした?」
「…しつこい」
「久しぶりなんだから許して」
「んっ…んん…あっ」
指が胸の先端を掠めて声がでてしまう。学校でしているわけではないから声は我慢する必要も無いのだが、やはり自分のこんな声を聞かれるのは恥ずかしい。
「声、抑えないで」
「ん…う…っんん、や、ぁ…」
シーツを握ってその快感に耐える。ハルの指は時々そこを掠めるが、確実に責めてはこないからもどかしい。
「どこ触ってほしい?」
「そん、なの…お前の好きでいい…」
「ちゃんと勇也が触ってほしいところ言って」
「わかってる…くせに…っ」
「…ここ?」
きゅっと抓られて体が跳ねる。
「ぁ…いやっ」
「嫌なら触らない」
「違っ…ちがう、から…」
「ちゃんと言ってごらん」
「ん…触、れよ…」
なぜだか命令口調になってしまった。それがおかしかったのか、クスクスと笑う。
「どこがいい?」
「…全部」
「欲張り」
その回答に満足したのか、何度か抓ったり捏ねたりしてから頬にキスして、俺の足元に移動する。
つま先に口をつけたかと思うと、徐々に上にあがっていき、全身にくまなくキスをした。
こう体にキスをされると、キスマークのことを思い出してしまう。
ハルの印…俺だけの
「は、る…」
「ん?」
首に唇をつけていたハルがこちらを向いたときに、俺の方からハルの首筋に唇を押し付ける。ハルがやっていたように少し吸い付くと、少し痛そうに顔を歪める。ハルは驚いているようだった。
「勇也…?」
「ん…」
「なに?」
「お前も、やれよ…」
Tシャツの襟を引っ張って、自分の首元を見せつける。
「痕になるから嫌なんじゃなかったの?」
「お前がつけた印…消えるの、嫌…だから」
「俺の印?」
「消えたらお前のものじゃ、なくなる気がして」
「俺のものになってくれるの?」
さっきからハルは問いかけるばかり。答えるたびに恥ずかしさがこみ上げる。
「た、ぶん…?」
きっとこの想いを抱き始めたときからずっと、俺の心も体も…人生も全てハルのものだった。
「いいよ…何度だって印はつける。消えたらまた新しくつければいい」
「あ…でも、数は考え…」
俺の言葉を聞こえないふりをして、首筋に何度も吸い付く。その度に痛みが走るが、その痛みでさえ少し気持ちがいい。
「好きだよ…勇也」
「あっ…ん…」
胸元にも痕を残していく。そして下半身へと手が伸びてきた。
「…ここ、もう硬くなってる」
「う、るさ…お前だって」
「やっぱり、我慢出来ない…もういい?余裕なくてごめん」
「んっ…別に、いい」
ズボンに手をかけられ、下着も一緒に下ろされていく。もう何度も見られているがこの瞬間が一番恥ずかしい。
「慣らしたいんだけど、今ここにローションとかないんだよね……あ、そうだ」
「…え?」
ハルが俺の顔の前に指を差し出す。どういう意味なのか分からずハルを見上げると、その指で唇をなぞって少しずつ口内に入れてきた。
「指、舐めて。ローション代わりにするから」
「なん…れ、そんな…んっ」
口の中に指が入っているからうまく喋れない。指がもう一本入ってきて、二本の指で口内を蹂躙される。さらに空いている手で硬くなった俺のものをゆるく扱く。声も唾液もだだ漏れで羞恥がこみあげるが、指で上顎を優しく撫でられるのが気持ち良くてハルの指に舌を絡める。
「ん…もういいかな?」
口から指が引き抜かれて、そのままそれが下に宛てがわれたかと思うとすぐに中へ入ってくる。
「いっ…あっ…あぁ…」
「痛い?」
「大丈…夫」
痛くはないが、本当は少し怖かった。それでも心はハルを受け入れたいと思っているから目を閉じて我慢する。シーツを握る手に力が入った。
「すぐ良くするから…」
「んっんん…そこ…だ、め」
「勇也がダメっていうところは本当はイイところでしょ?」
「…ん、そこ、ばっかり…あっ…んん!」
この前よくわからない道具を使ったからか、明らかに前より中で感じやすくなっている。それにハルは俺がどこで感じるかを全てわかっているようで、尚更快感の波が止まらなくなった。
指だけで気をやってしまいそうになったとき、いきなり指が抜かれる。
「ごめ…勇也、俺、もう…」
ハルは息が荒くなって頬が紅潮していた。ズボンを脱ぎ始め、ハルのきつそうに張り詰めたものが露わになる。目をぎゅっと閉じて身構えた。
「やっぱり…怖い?なら無理しなくても…」
「いい…止めるな…」
「でも…」
「酷くしていいって…言っただろ」
「勇也…」
ハルが俺に覆いかぶさって、ハルのものが中に入ってくる。痛くはない、気持ちいい、けど怖い。父のことも、あの三人組のこともやはり脳裏に浮かんでしまう。閉じた目から涙が出てくる。
「うっ…あっ…あ、ん…んう…」
「勇也、俺以外のこと考えないで…ちゃんと俺で感じて」
「ごめ…ごめん…あっ…ん」
胸が苦しい、辛い。でもこれを乗り越えないとハルを受け入れられない。
「目…開けて、俺のこと見て」
「あっ…あっあっん…!」
「名前呼んで」
「は、る…はる…あっあぁ…っ」
シーツを握っていた手を掴まれ、代わりにハルの指が絡んで手を繋がれる。
「動くよ…」
ハルのもので奥を突かれると、体中痺れたようにビクビクと痙攣する。快感に呑まれる恐怖に襲われた。ハルの手をギュッと強く握り返す。
「あっ…う…んんっ…ん、く、るし…」
「大丈夫?でも、ごめん…止めらんな…」
「いい…っ止めなくて…いい、から…あっ」
律動が早まると、与えられる快感も増していく。自分でもなんの意味を孕んでいるのか分からない涙が流れる。それに気づいたハルは動きは止めずに、舌でそれを掬いとった。
「ごめん…ほんとに、その顔、すごくそそる…」
表情を見ただけでもハルが興奮しているのがわかる。苦しいのに、自分のものからはいつの間にか先走りが垂れてきていた。
声を抑えるために唇を噛み締めていると、それを解くようにハルの唇が重なって舌を割り込ませてくる。嬌声は口づけの息継ぎの間に漏れて、恥ずかしくて目を閉じる度に制するように中を奥深く突き上げられる。
ハルももう限界に近いようだった。切なそうに目を細めて律動を更に早める。汗で髪が頬に張り付いた顔は、とても艶やかで綺麗だった。
「勇也…っ、もう、出そう…」
「待っ…中、は嫌だっ…」
「あっ…無理、止まんな…っ」
「だ、め…だって…あっあ、や、だめっ」
ハルが俺の上半身を強く抱きしめると、腰を強く押し出して中に熱いものが流れ込んでくる。
そのあと何度か緩く動いて、残りの精が吐き出された。その時間が異常に長い。ハルのものが抜かれると、自分の脚にそれが垂れてくるのがわかった。
これで、俺はちゃんとハルを受け入れられたことになるのだろうか。
「どんだけ…溜めてんだよ、馬鹿」
「ごめ…1週間抜かずにセックスもしないなんて初めてだから…」
常人からしたら別にそれは珍しいことではないと思うのだが、こいつの異常な性欲ならありえない話でもない。それだけ我慢していたのだろう。
「…また中に出しやがった」
「抜くタイミングなくて…次からはゴムするから、ね?ほら、ちゃんとここにあるし」
そう言って机の引き出しからコンドームの箱を取り出す。その箱が新品ではないのが少し気に食わない。
「だったら途中でつければ良かっただろ…」
「ごめんって…ほら、まだ10枚はあるし」
「は…?」
「さっきは優しくしちゃったからね…勇也も、まだ足りないでしょ?」
「え…いや、もう…怖くないから…いいって」
「まだイッてないじゃん。無理しないで、ほら」
ハルはコンドームの袋を口で開けて、自身のものにつけ始める。俺の方はさっきので酷くされたつもりだったし、もうハルで満たされて充分という心意気だったのだが…
「な、んで…もう勃ってんだよ…お前」
「あと5回くらいはいけるよね?」
そう言って微笑み、舌舐めずりをする。後ずさって、追い詰められ逃げ場がなくなった。
「いっぱい酷くするから…好きなだけイッていいよ」
「あ…いや、もう…」
体勢を無理矢理変えられ、俺の抗議も虚しく後ろから挿入される。今ならわかる、本当にさっきのは優しくしてくれていたのだと。今はそれが微塵も無い。
「あ、だめ、だって…も、むり…!あっあっ…ん、あぁっ…ん!」
結局俺は、そのコンドームの箱が空になるまで抱かれ続けた。
こいつを受け入れるというのは、思っていたよりもずっと大変なものだった。
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