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第116話Homecoming②
「はぁっ…あ…ん…っ」
何もしていないのに、空気の触れる肌が熱い。
少しでも動けば服が擦れて感じてしまう。身体が疼いてしょうがなかった。
触りたい…でも
ソファにもたれて倒れ込む。朝畳んで積んでおいたハルの服が崩れて頭にかかる。退かそうとすると、ハルの匂いがふわっと広がった。
それだけなのに身体が熱さを増して下半身が反応しているのが分かる。触らなくても勝手に硬くなり、先走りを下着に染み込ませていった。
「ん…っ、あ…なんで…」
ハルと暫く触れ合っていないからなのか、その匂いだけでハルを思い出して疼きが治まらなくなってしまう。このままではまともに眠りにつくこともできない。
今日は一人だから…少しだけ
もう日が傾き始めたというのに、リビングの電気も付けずに俺は一人でなんてことをしようとしているんだ。
迂闊にアレを飲まなければこんなことにはならなかったというのに。
「ん…んっ…ふぅ…っ」
触れると、そこは刺激を待ちわびていたかのようにとめどなく先走りを溢れさせる。
一人きりだと余計に声が響いて恥ずかしくなるので、自分の着ていたTシャツの裾を咥えて声を抑えた。
服の上から触っているのがもどかしくなり、膝までズボンと下着を下ろして直に刺激を与える。
自分から出てきたもので濡れて滑りがよくなったそこは、気持ちが良すぎて何も考えられなくなりそうだった。
「んっ…んんっ…ん、うっ…あぁっ」
自分のものを扱く手が加速していくと、ついに我慢出来なくなり咥えていた服を口から離してしまう。
もう周りも何も見えなくて無我夢中に手を動かした。自然と声を抑えることもしなくなり、ハルの服に顔を埋めて何度も喘ぎを漏らす。
流石に自分の中に指を突っ込むわけにはいかないが、中も刺激を求めて疼いているのは確かだった。
無意識にハルの名前を何度も呼ぶ。
「あっ…ぁ…はる…はる…っ」
頭がぼうっとして視界がぼやけてくる。もう達してしまいそうだと思ったとき、急に部屋がぱっと明るくなった。
ゆっくりリビングの入口の方を振り返ると、電気のスイッチに手を当てたまま硬直しているハル。
何故かは分からないが、ハルはまるで走ったあとかのように少し汗をかいて髪も乱れていた。
ようやく思考がはっきりしてきて、慌てて手を止め服を戻そうとするがもう遅い。
それでもまだ身体は熱いままなので、色々考えようとしても混乱するばかりだった。
「勇也…?」
「ん…ちが、くて…そのっ…」
「見せて」
「は…?」
言っている意味がわからなくて目をぱちぱちと瞬かせていると、ハルがこちらへ歩み寄ってきて荷物を床へ放り投げた。
「続きしてていいから、俺に見せて」
「そ…なの、無理…」
「…俺だって勇也とするまでずっと我慢してたのにさぁ、一人で楽しむなんてずるいよね?」
後ずさると、その分ハルも詰め寄ってくる。本物のハルを目の前にしたからか、熱も呼吸も抑えられない。
「お前…明日、帰ってくるって…」
「勇也が寂しいっていうからから急いで帰ってきたんだよ?」
「そんなこと言ってな…あ…」
送信したスタンプを思い出す。まさか返信が来なかったのは、帰る準備をしていたから?
「寂しすぎて一人でシたくなっちゃった?俺とはしてくれないのに?」
「だから、これは違うって…」
「何が違うの?ここ、こんなにして…」
ハルの手が俺の下半身へと伸びていく。まずい、今触られたらこのまま…
「あ…待っ…!」
腰がビクンと跳ね、急いで履いたズボンに恥ずかしい染みができる。
ハルも驚いているのが表情から伝わってきた。
「今ので…イッたの?」
「っ〜〜」
恥ずかしさがこみあげてハルの顔をまともに見れない。
「まだビクビクしてるけど…欲求不満?」
「ちが…薬…間違えて…」
「薬?」
あながち欲求不満というのも間違っていないのかもしれない。実際俺は、触れ合えなかったハルを求めながら一人でしてしまったのだから。
ハルは机の上に置いてあった瓶を手に取ってラベルを見る。
「これ…全部飲んだの?」
「ん…栄養ドリンクと、間違えて…」
「普通の飲み物に数滴垂らすだけでも充分なのに…丸々1本飲んだらそうなるのも無理ないか」
「お前が…あんなとこに置くから…!」
「何オカズにしてたの」
いきなり直球な質問が飛んできて言葉が詰まる。正直にハルを思っていたなんてこいつに言えるわけがない。
「は…何も…別に」
「もしかして、会長?」
「っ何で…違う!」
ハルの視線が急に冷たくなる。
どうしてこんなときまで会長がでてくるんだ。ハルはやっぱり会長のことを…
「ふーん…手に何持ってんの、見せて」
「…嫌だ」
持っていたハルの服を丸めて背中側に隠す。
会長というワードが出てから、お互い表情が曇り始めた。
「何で?見せられないものなの?」
「嫌だって…あっ」
丸まった服を取られ、取り返そうとするが適わない。ハルはそれを広げて見始めた。
「あれ…これ、朝脱いだやつ?」
「違う…ほんとに…違ぇから…」
自分の顔を両手で覆って俯いた。
気持ち悪いと思われてしまっただろうか。
指の隙間からハルの方を窺うと、何故か少し嬉しそうにしていた。
「そっか…そうだよね」
「何だよ…」
「まだどうなるかは分からないけど…やっぱり俺が一番でしょ?」
「また、その話…んっ」
頬にキスをされたかと思うと、徐々に位置を下げて首、肩、胸に唇を押し付けていく。
口にはしないのが気になったが、怖くて聞けなかった。
ゆっくりと押し倒しながら、身体中にキスの雨を降らせてくる。
ただ、火照った身体の疼きはそんな刺激で治まるはずがなかった。むしろ余計に我慢ができなくなって、もどかしさで腰を揺らしてしまう。
「もう満足?」
「な、にが…っ」
「1ヶ月間、変なことしちゃいけないんでしょ」
そういえばそういう約束だった。時折危なかったが、ハルは一応きちんとそれを守っている。
でも、これで終わりと言われて我慢できる気がしない。お預けを食らっているも同然だった。
「あ…れは…」
「まあ、勇也は我慢出来なくて俺の服オカズに抜こうとしてたみたいだけど」
「言うなって…!」
「怒らないの。今日はもう寝ようか?」
「あ…」
立ち上がろうとしたハルの腕を無意識に掴む。
どうしたい…俺は
ハルに、どうされたい?
まだ会長のことも、ハルの言葉の意味も聞けていないのに。
「なに?」
「や…なんでも…ない」
「寝れるの?そんなんで」
足で俺のものをぎゅっと踏みつけられる。
相変わらずハルは足癖が悪い。
屈辱的なのに、薬に侵された身体は勝手に快感を受け入れて反応する。
「やっ…あぁっ…」
「もう勃ってるけど…あれだけ薬飲んだら耐えられるはずないよね。知ってて飲んだの?」
「そ、んな…わけ…んっ」
「…触ってほしい?」
触られたい、けど素直に頷くのも気が引ける。
迷っていると、足の刺激が強くなった。
「あっあ…ん…」
「ほら、答えて」
「さわ…って…」
俯きがちにそう言うと、ハルはしゃがんで俺の頭を撫でる。
「よく言えました。じゃあ一人でシてるところ、見せて」
「は?なんで…」
「触ってあげるとは言ってないからね。一人で上手にできたら触ってあげてもいいよ」
ハルのことを睨みつけるが、薄ら笑みを浮べたままそこを動こうとしない。
正常な判断ができていれば人前で自慰行為なんてしようとは思わない。
しかし、今まさにそれが出来ていなかったために、ハルに触れられたいという気持ちから自身のものに手を伸ばしてしまった。
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