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第117話Homecoming③
そこは、さっき出したばっかりだというのに既に熱を帯び始めている。
ベタつく下着とズボンを少し下ろして、露わになったそこに触れると声が漏れた。
「んっ…んう…」
「本当にやってくれるんだね。そんなに触られたいの?」
「あ…っ、ん…違…」
何が違うのかと自分に問う。
何も違くない。ハルに触れられたい。
自分一人ではこの疼きを鎮めることが出来ない。薬は、俺が内に秘めていた欲求不満の心を引き出してしまった。
「俺のこと考えてるの?」
「う…るさ…」
「俺に見られながらオナニーなんて、ド変態だね」
「ちが…違う…んっんん」
そうだ、ハルに見られながらこんな事をして、感じている。本当は死ぬほど恥ずかしいはずなのに、薬がその思考を溶かす。
ハルに触れたい、キスしたい。唇同士を重ねて、確かめ合いたい。
ハルの手を空いている手で取って握った。
自身のものを扱く手が早くなっていく。
「そっちから触りに来るなんてね。俺に触られてると思いながらイッていいよ」
「あっ…あ…んっ、はる…っ」
「可愛い…ほら、イクところちゃんと見せて」
「やっ…あ、見な…っで…あっあっ…んんっ」
可愛くない。俺は可愛くなんてない。
ビクンと上半身が軽く反って白濁したそれがパタパタと手に落ちていく。
ハルに一人でしているのを見られながら達してしまった。
まだ身体の熱は治まらない。むしろどんどん熱くなっていく。
「よく出来ました、えらいえらい」
「ん…はや、く…」
「そんなに急かさないでよ」
ハルは俺の手についた精子をティッシュで丁寧に拭き取った。
頭の中が溶けてしまったみたいで、ハルの唇にばかり目がいってしまう。
「は…る…」
「ん?」
次の瞬間、俺はハルを床に押し倒した。
「えっ…ちょ、勇也?今日はやけに積極的…んっ」
ハルの唇に自分の唇を強引に重ねる。舌をねじ込ませて、何度もその唾液を吸い取った。
「ゆうや…んんっ…」
「はる…んっ…はる…」
唇を離そうとすると、後頭部を手で押さえられる。今度はハルに主導権を握られて、お返しと言わんばかりにさっきよりも激しく水音をたててキスされた。
久しぶりの噛み付くようなキス。
唇を甘噛みしながら舌を強く吸われて、体の力が抜けていく。
ハルが応えてくれたことが何故か凄く嬉しくて、感極まって涙の粒が零れていった。
「…泣いてるの?」
「泣いて、な…」
「この前はごめんね」
ハルが起き上がって、俺を胸に抱いてポンポンと頭を優しく撫でた。
「…じゃなくて…い…から」
「ん?」
「一番じゃなくて…いいから」
「なんの話?」
思っていたことが、口から溢れて漏れだした。
「二番でもいい…だから…っだから」
「勇也…」
「ハルの…側に、ずっと…」
言葉は消え入るように小さくなって、ハルの胸へ吸い込まれていった。
「どうして…そんなこと…俺は勇也がずっと一番だよ」
「そんなの…分からねえだろ」
「…不安になるのは分かるよ、俺も同じだから」
そうだ、ハルが一番がどうとか言うようになったのは、きっと同じような気持ちだったから。
ハルの手が髪を撫でて、ブラックダイヤのピアスに触れる。夏なのに、やっぱり手が冷たかった。
「そんな簡単に気持ちは変わらない…といいけど、それは言い切れないからね」
「っ……」
また涙がこみあげて瞳に溜まっていく。それをハルが指で拭ってその指を舐めた。
「だけどさ、今この瞬間は間違いなく勇也が一番好きだよ。もちろん、勇也と出会ってから今ここまで、勇也以外に目移りしたことなんてないけど」
「ハル…」
「勇也は違うの?」
「違く…ない…」
ハルの背中に手を回して、殆どしがみつくように抱きしめた。
「きっと、まだ言いたいことは沢山あるだろうけど…それは文化祭が、全部終わってから」
「なんで…文化祭…」
「こっちの都合でね…俺、勇也のことちゃんと信じてるから」
ハルも俺を抱きしめる力を強める。何のことを言っているのか分からないが、あまり良くない予感がする。
ハルが信じてくれるなら、俺も信じよう。少なくとも今は、俺を好きでいてくれるのだから。
「…したい」
「何を?」
「ハルと…したい」
「…素直すぎるのも心臓に悪いなぁ」
また俺の方が押し倒されてハルに足を持ち上げられる。いつもはこんな格好は嫌だと駄々をこねていたが、今日はそれも気にならない。
「勇也。後ろ、自分でほぐして」
「そんな…なんで」
「したいんでしょ?じゃあちゃんと準備しなきゃ。それとも1ヶ月待つ?」
そう言われておずおずと自分のそこへ手を伸ばそうとしたが、潤滑剤なるものがここにないことに気づく。
そこでこの前のことを思い出して、徐ろに自分の口の中に指を突っ込んだ。
「ん…っ」
「言ってくれればローションくらい持ってきたのに…そんなに我慢出来ない?」
こくこくと頷くと、ハルは自身の顔を手で覆ってなにか悶えていた。
指が中に入っていく。さほど滑りがいい訳では無いが、きつくもない。
ハルと何度もしていたからここが柔らかくなってきているのだと気づいて顔が熱くなった。
「んっ…ん…あっ…」
ハルに見られてる。こんな格好で、自分でここを解しているところを。
そう思うと逆に指が止まらなかった。
弱い部分を指が掠めると気持ちよくて上半身が反れる。その様子をハルは何も言わず眺めていた。
「ん、そのへんでいいよ。それ以上やったらまたイッちゃうでしょ」
「はぁ…あっ…はや、く…」
「本当にいいの?」
「い…から、はやく…」
ハルも服を脱いで、その逞しい体が露わになった。
その首に腕を回すと、小さく笑ってハルが俺の中に入ってくる。
「あっ…あぁ…っはる…」
「きっつ…ちょっと力抜いて」
「ん…わかん、な…あっ」
「たまには…こういう勇也もいいね」
ハルは、している間何度もキスをしてくれた。その度に好かれていると実感できて幸せだった。
それと同時に、この温もりを失ってしまったら自分はどうなってしまうのか分からなくて怖くなった。
二番でもいいなんて嘘だ。本当はハルの一番のままずっと隣にいたい。
自分が綺麗で可愛い女だったらよかったのにと、今まで一度も思ったことのない願いまでしてしまった。
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