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第191話Miss Flower⑥
夕食を終えて一人で風呂に入った頃から、ようやく頭が冴えてきてさっきまでの自分の態度を恥じた。
ハルの前では泣いてばかりだったけれど、あんな子供みたいに泣きつくなんて高校生としてどうなのだろう。
さっきのことがあったからか、ハルはベッドの中でひたすら俺の頭を撫で続けていた。
「なあ、もういいから…さっきは悪かった」
「まだ寂しそうな顔してるくせに」
「うるせえ、もう撫でんな禿げる」
「やめてよ…俺の勇也が禿げるわけないじゃん」
こいつは俺のことをなんだと思っているのだろう。俺だって歳をとれば見た目は変わるし、それはハルだって同じだ。
「お前もいつか禿げるだろ」
「なんでそういうこと言うの?勇也だって嫌でしょ俺が禿げたら」
それを想像して少し吹き出してしまう。ハルはそれを見て少し膨れたかと思うと、俺の前髪をかきあげて軽く押さえ、顔をじっと見つめてきた。
「…やめろよ、こっち見んな」
「笑ってるほうがいいよ。ずっと笑ってて」
条件反射のように目を閉じると、案の定額に唇が当たった。
「でもたまに俺の前でだけ見せてくれた方がいいかな、そっちの方がプレミア感あるし」
「意味わかんねえ」
ハルに捕えられたまま、身を翻して背中を向ける。ずっと喋りかけてくるのを無視していたら、拗ねたのか少し静かになる。
「やっと静かになったか……んっ」
ハルの手がゆっくりとくすぐるように骨盤を撫でる。際どいところを触られると、抑えられるものも抑えられなくなってしまうのに。
触れられたところが熱を帯びて、身をよじって逃げ出したくなってしまう。けれど、ハルに触られるのは嫌じゃなかった。特段今は恐怖がある訳でもない。
「ん…明日、がっこ…う」
「あれ?やめろとは言わないんだ」
「う、るさ…バカ」
顔が火照って自然と俯く。やめろと言わなかったのは、ハルに触られるのが気持ちよかったからだ。背を向けているからハルが今どんな顔をしているのかわからない。もう一度ハルの方に向き直って、少し上を向いた。
「何、その上目遣い」
「違…そういうのじゃねえし」
ハルは相変わらずの余裕綽々な笑みを浮かべているが、耳が赤くなっているのも良く分かる。
なんだかそれが、少し嬉しくて誇らしかった。
「抵抗してくれないとその気になっちゃうよ…いいの?」
「んっ…んん」
もっと触れていたい。もっと、全部。
ハルの指が唇に当てられて、ふにふにと弄ぶように撫でられる。その指が唇を割って侵入しようとするものだから、舌を少し出してハルの指を咥えた。
「勇也…それじゃ煽ってるみたいだから、ダメだよ」
静かに咥えていた指を離し、もう一度上目遣いにハルの方を見つめる。
「…煽ってんだよ、バカ」
ハルの耳はもっと赤くなったけれど、きっとそれより俺の顔の方が赤くなっているに違いない。自分で言っておきながら目を逸らし、もう一度背を向けた。
「いいの?」
「いい」
「…でも、最後まではしないからね。そこはちゃんと我慢するから」
別に俺はいいと返そうと思ったけれど、ここでまたぶり返して怖くなったらハルも傷つけてしまう。ハルなりに少しずつ、ゆっくり解していこうと努力してくれている。
前まで場所も時間もわきまえずがっついていたのが嘘みたいだ。
頬に手が触れ、確かめ合うように唇を重ねる。電気を消していないからお互いの顔が良く見えて、紅潮するその頬に堪らず唇を押し付けた。
少し強引に頭を押さえられ、舌同士が絡み始める。漏れ出る声を抑えながら、ゆっくりとベッドへ体を倒していった。
「怖くない?」
「ん…」
冷たい手が滑っていったところはすぐに熱を帯びて、呼応するように体がビクリと小さく震える。まさに愛撫という言葉が相応しかった。
「あっ…や、んっ」
「少し固くなってるね」
「見、んな…」
自分の顔を腕で覆い隠すと、下半身への刺激が始まり、思わず自分の腕を噛んで声を抑えた。
「んっ…ん、あっ!や、だ…」
「嫌だった?」
「ちが…そ、じゃな…」
「気持ちいい?」
素直にそれを認めることが出来ず、首を横に振る。すると、これならどうだと言わんばかりに手の動きが加速された。
「あっ、あ、や…だめ、んんっ」
「気持ちいい?勇也」
「あ…んっ、も…でちゃ、あっ、だめ」
気持ちいいと言うまでやめないつもりなのか、ハルの手を止めようと手を重ねてもまだ止まらない。腰が震え始めもうダメだと思った時、ピタリと手の動きが止まった。
「ほら、ちゃんと気持ちいいって言わないから。でも勇也寸止めされるの大好きだもんね?」
「す、きじゃ…ねえし」
寸止めされるのは辛かった。まだ息も整っていないのに、再びそこにハルの指が絡みつく。
さっきよりもゆっくりと、纏わりつくように指が俺のものを撫でていく。そのもどかしさに腰が揺れ、自らハルの手へ擦りつけているかのようになってしまった。
「こら、勝手に動かさないの」
その指の動きがまた激しいものに変わる。上下に強く擦られて、指先でくすぐるように撫でられた。それなのに腰の動きは止まらず、早く楽になりたい一心で快感を求めた。
「あっ、んっ…い、きた…」
「気持ちいいって認めないくせに」
「んっ、あ…あぁっき、もち…いいから」
また手の動きが早くなって、腰が浮き始める。荒い呼吸を繰り返しながら、目を瞑ってそれに耐える。
「目、瞑っちゃダメ」
「んっ…んうっ」
深く口付けされて、目を開く。代わりに手は止められてしまい、またお預けの状態となった。
口から零れた唾液を吸い取られ、舌先が八重歯をなぞる。それすら気持ちが良くて、腰が震えた。
「こっち…大丈夫?」
ハルの指が後孔を軽く撫でる。それに肩を震わせて反応すると共に、小さく首を縦に振った。
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