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第212話HappyBirthday②
ハルの部屋に入るのを躊躇していると、ガチャりとドアノブの音がして咄嗟に自分の部屋に身を隠す。自分の部屋のドアから顔だけを出して様子を伺うと、ハルも同じように顔だけを出して辺りを見回していた。
「あれ、勇也なにやってんの?なんか遅いなと思ったら」
「べ、つに…」
「早くおいでよ、俺もう寝ちゃうよ」
どうしてもそのまま出ることが出来なくて、一度自分の部屋に引っ込んでから、薄手の掛け布団替わりにしていたタオルケットで全身を覆ってハルの部屋に入った。
「…何その格好。寒いの?」
「そういうわけじゃねえけど…」
「服着てないとか?」
「んなわけねえだろアホ!」
突っ込んだ反動でタオルケットを離してしまいそれがはらりと落ちる。慌ててそれを手繰り寄せた時にはもう遅くて、目を丸くしたハルは俺の格好を凝視していた。
「それ…着てくれたんだ。捨てられたかと思ってた」
「似合わないなら似合わないって言えよ、着替えてくる」
ハルは後ろを向いた俺の腕を掴み、ベッドに引き込む。そのまま抱きしめられ、ハルは何も言わずどんどん腕に力を込めていった。
「そのままでいい…どうしよう、可愛い」
「けど…こんなの俺には」
「だって俺のために着てくれたんでしょ?」
確かにそうだ。ハルのためでなければ自らこんな服着るはずがない。どうやら喜んでくれているようだからこれで良かったのかもしれない。
背に腹は変えられぬと思っていたけれど、少し羞恥心の方が勝ってしまっていた。
「嬉しいか…その、こういうの」
「うん、嬉しい」
「そうか…良かった」
これで今日すべきことは完遂したと思っていたが、最後に北条先輩が書いていた『大事なのは言葉』というのを思い出す。
言葉といってもすぐには出てこないし、言葉ではこの気持ちを全て表せないけれど、自分なりに伝えることがやはり大事なのかもしれない。
「ハル…」
「ん?」
「お前…部屋の片付けしたつもりになってるけど全部クローゼットに押し込んだだけだし、可燃ゴミと不燃ゴミ分けねえし、未だに靴下脱ぎっぱなしにしてるだろ」
おかしい。どちらかと言うと好きなところを言うべきなのに、何故か私生活のだらしない部分の指摘しか出てこない。これじゃあ俺は本当にハルのことが好きなのかどうか疑われてしまう。
「…返す言葉もございません」
「まだ人参とピーマン残してるし…髪濡れたままリビングでアイス食うし…けど」
俺はハルのそんなだらしないところでさえ愛おしいと思っている。自分にだけ見せる隙も、ハルの出来ない家事も、全部自分だけのものにしたかった。
「俺の前では甘えたがって優等生じゃなくなるところも、子供っぽくて無邪気なところも…全部す…す」
「す?」
「す…き、だから」
面と向かって言うのは何度やっても恥ずかしい。そう思うとハルはよくスラスラとあんなことが言えるなと感心する。
感極まったようにハルに抱きしめられ、苦しくなる。けれどやっぱり俺はこの苦しさが嫌いじゃない。
「最初こそ本気で死にたかったしお前も死ねと思ってたけど、今生きてられるのも多分お前のおかけだし…」
「正直だね」
「だから…お前が生まれてきたこと、間違いじゃねえから。生まれてきてくれて…ありが、と…」
ハルの真似をしてそう言ってみたが恥ずかしいのに変わりはない。けれど思っているのは本当だった。
またひしと強く抱きしめられて、シーツにポタリと雫が落ちて染みができる。僅かに震えるハルの背中に腕を回して、抱きしめ返した。
「勇也…」
涙を含んだ声にそう呼ばれて、目を閉じてそれに応える。重ねた唇からは少ししょっぱい味がした。
唇を離して目を開くと、ハルの視線はまたパジャマへと移された。
「これ、下に何か着てる…?」
「着てねえ」
「…上のチャック下ろしていい?」
上は確かにパーカーのような型だったけれど、下によれたTシャツを着るのも変かと思ったので素肌に直接着ていた。俺に断りを入れたものの返事をする前にハルは前のチャックを下ろしていく。
「あっ…おい、お前」
上着の前を開けたままハルの手は背中をさするように這っていく。完全に脱がされた訳では無いから、逆にそのはだけた状態が恥ずかしい。
「結局脱がすのかよ」
「全部は脱がせないよ」
「明日学校だぞ」
「今日は触るだけ。それくらいならいいでしょ誕生日なんだし」
誕生日を言い訳に、露わになった上半身にキスマークを付けていく。身を捩りたくても背中に手が入っているから思うように動けなかった。
「んっ…ん、う」
電気がついたままだから妙に見られているという意識が強くて、自分の顔を腕で覆って隠し、下唇を強く噛み締めて刺激に耐えた。
「声、出して」
「い、やだ…」
今度は胸板の上を手が這っていき、敏感になったそこを指で挟むように刺激された。それに呼応して体はビクッと震え、そこはすぐに芯を持って赤く腫れる。
「んっ…あ、や…」
「感じやすくなったね、ここいじられるの好き?」
「お前の…せい、で…あっ」
胸元にハルが顔を埋めて、そこを舌の先で舐める。温い舌のざらついた感覚がおかしいくらいに気持ちよくて、無意識にハルの頭を押さえ込んで自分から離そうとしていた。
「あっ…ん、吸うな…ばか」
口に含まれて吸われたかと思うと歯を当てて甘噛みされ、上半身が跳ねる程に震える。けれどハルの愛撫は気持ちいいだけじゃなかった。それ以上に感じる何かがあるような気がする。
愛撫を喜ぶように主張する自分の胸元が見えてしまい、どうしようもない羞恥の中涙目になってその刺激に耐えていた。
自分が自分じゃなくなっていくみたいだ。
喘ぐように呼吸をして腕と腕の隙間からハルの方を見ると目が合った。腕を退かされベッドに押し付けられると、そのまま貪るようにキスをされる。口を開いてしまえばハルの舌が口内を蹂躙して、精気を吸い取られるみたいに自分の全部がハルに奪われていく気がした。
「我慢したいからこの辺で終わりにしようか。次の日に学校なければ…いいの?」
「まあ…それ、なら、別に」
「じゃあ今週末…楽しみにしてるから」
嬉しそうに笑って、今度は額に短くキスをされる。服を着直して電気を消すと、今日はハルの方が早く寝てしまった。一方俺は先程の刺激で体の熱が抜けずに、ハルの隣で息の荒いままそれが鎮まるのを待つのだった。
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ストックが少し溜まってきたので、一度
毎日更新に戻してみようと思います。
もしかしたらまた忙しくなって更新頻度を
下げることもあるかもしれませんが、その
時はまたこちらからお知らせします。
これからもLabをよろしくお願いします
たまこ
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