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第217話Anger

〝お仕置き〟そう口にしたハルは、俺をベッドから半ば引きずり下ろすように腕を引いて俺の部屋まで移動した。ハルが向かったのが今はドアの外れているクローゼットだと分かると、体が緊張し始める。 「なに…しようと…嫌だ、やめ…」 「多分今話聞いても俺落ち着いたりできないから…ごめんね」 「ハル…ごめ…ごめん、ごめんなさい、謝る…から!」 「俺が今欲しいのはごめんじゃない。勇也は俺のものだよ、ちゃんと分かって」 逃げ出そうとする俺を捕らえて、ダンボールの中に入っていたビニール紐で腕をラックへきつく縛り付けた。 これから何をされるのか、明確に何と分かる訳では無いけれど、決して良くない事だというのははっきりと分かる。 「けど、普通にするだけじゃ勇也は喜んじゃうもんね。ちょっと趣向を変えてみようか」 「やめろって…ハル、ほんとに」 一度ハルは部屋を出ていってしまう。薄暗いクローゼットの中で、どうすればハルに許してもらえるのかを必死に考えた。 「はい、これあげる」 ハルが俺の目の前に差し出したのは赤い首輪。まるで犬が着けるようなそれを見ただけで、本能的に何かを察知して背筋が凍ってゆく。 「な…んだよ、これ」 「見たらわかるだろ」 その赤い首輪を俺の首に付けて、冷たい目のまま満足げに頷いて笑う。 「今から勇也は犬になってね」 「ふざけんな…なんで俺が」 「口答えすんなよ」 口を無理矢理塞ぐように、ハルの唇が乱暴に重ねられた。いつものハルと違うその容赦ない舌を思わず噛んでしまう。 「いった…聞き分け悪いな」 「やめろよ、こんなことして…何になるんだよ」 「犬は人の言葉喋らないけど」 「は…?」 全く言葉を聞き入れようとしないハルのその態度に冷や汗が垂れた。 「ほら、犬はなんて鳴くの」 「ふ、ふざけるのもいい加減に」 「ワンでしょ」 口調は柔らかくなったけれど顔は全く笑っていない。ハルのこんな表情は久しぶりに見た。この先の恐怖よりも、ハルが俺のことを嫌いになってしまったのかという焦燥のほうが圧倒的に心を占めていた。 「ど…して、ハル」 「喋らなくていいよ。どうしても鳴けないなら…」 ハルは持ってきた箱の中身からコードのついたローターを数個取り出して、下着の中へ突っ込んでいった。腕が縛られているから取り出せるはずもなく、下着によって密着したまま固定されたそれらが動き出したらと思うとゾッとした。 「やめろ…よ、これ、取っ…」 「喋んなって。これでもしゃぶってろ」 口の中に棒状の何かが突っ込まれてえづいてしまう。そのまま頭の後ろにベルトのようなもので固定され、それがマウスギャグなのだと分かった。 ハルはダンボールの中を漁り、体育祭か何かで使ったであろうハチマキを取り出したかと思うと、それで俺の視界を遮るように頭に巻き付けてしまった。 視覚を奪われ、何が起こっているのか分からない。叫ぼうにもマウスギャグで口を塞がれ、くぐもった呻き声しか出せなかった。 「勇也は…俺のものだよ」 ハルがそう言うと、下着の中に入れられたローターが一気に動き始めた。振動は微弱であったが、ローター同士がカタカタとぶつかり合いながら自分のものを刺激していくのに耐えられず、そこはすぐに硬くなっていく。 「ん゛っ…んん、んう…」 「これもあげるね」 下着の中にさらなる振動が加わる。マッサージ器のようなローターよりも大きい何かが、硬さを持ち始めた俺のものの先端へと当てられ、その状態のまま下着に挟まれた。更にガムテープでその柄の部分が腹辺りに固定され、どんなに身を捩ってもその快感から逃れられない。 「じゃあしばらくしたらまた来るから、ワンって言う気になったらちゃんと言ってね」 「んん…んっ…ん!」 ハルの足音が遠ざかってゆく。この場に一人取り残されてしまったのだろうか。視界を遮られている恐怖と、容赦なく襲いかかってくる快感。 どんなに動いても余計刺激が増すだけで、頭を振り乱してひたすらそれに耐えようとした。 完全にいきり立ったそこは、先端への刺激によって先走りを零していく。ただただそこへ集中的な刺激を与えられ、少しでも気を抜いたらすぐに射精へ追い込まれてしまいそうだった。 どうしてハルはあんなに怒ってしまったのだろう。俺が黙っていたからだろうか。けれど今のハルは俺の話をまともに聞いてくれそうにない。それがただ悲しかった。 ハルはもう俺に呆れてしまったのかもしれない。嫌われてしまったらどうすればいいのだろう。ハルに嫌われたくない。俺だって好きなのはただ一人ハルだけだというのに。 「んん、んっ…うう…!」 しばらくの間微弱な振動に責められていると、ビクンと体が跳ねて下着の中に出してしまった。不快感が増す中、未だにその無機質な刺激は止まる兆しを見せない。果てた後にそのまま刺激が与えられると、ただただ気持ちが悪くなってくる。 「ーーっ?!」 急に振動が強くなって、追い打ちをかけるように達したばかりのそこを責めていく。気持ち悪さを乗り越えて、最初とは比にならないくらいの快感に襲われた。 内からこみ上げてくるものに恐怖を感じながら足をばたつかせていると、ドアの開く音がしてまた振動は微弱なものへと戻っていく。 振動は弱くなっても余韻で体は変に震えて、マウスギャグで塞がれた口からは唾液が溢れていた。 「どうだった?まだ一回しかイッてないか、まああの弱さでこれなら上出来かな」 「ん…んん…!」 「はいはい、今口と目のは外してあげるから」 マウスギャグが引き抜かれ、溜まっていた唾液が口の端を垂れていく。視界が開け、目の前にはぼやけたハルの輪郭が見えた。 咳き込んだ後もまたその振動に小さく呻くしかなくて、どうすればいいのか考える頭もない。 「あっ…あ、ん…も、嫌だ…止め…」 「ワンって言うか言わないかどっちかでしょ」 「い、やだ…なんで…っあ、あぁっ!」 再び振動が強められ、気持ち悪さが訪れる。これを超えた先に何があるのかを垣間見てしまったから、これ以上されたら自分がどうなってしまうのかわからなくて怖かった。 「待っ…だ、め嫌だ、あっ!これ、以上…」 「ワンって上手に鳴けたら止めてあげる」 体が痙攣して、尿意にも似たようなものがこみ上げてくる。このままでは出してしまうと思っても刺激は容赦なく強められていって、一刻も早く止めなければ痴態を晒すことになると直感的に思った。 「あっ…い、うから…止めっ!」 「じゃあほら、早く」 「あ゛…あっ!わ…ん」 口角をわずかにあげたハルは冷たい目のまま柔らかく微笑して、手元にあったスイッチのつまみを回した。 その瞬間今までの中で一番強い振動に変わり、声も出ないまま体は弓なりに大きく仰け反る。 そして勢いよく排尿感の波が押し寄せ、止めようと思っても止まらずそのまま下着の中を濡らしていく。 こんな年になって失禁してしまったのかと思い、その羞恥と屈辱で涙までが溢れ出した。

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