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第218話Anger②
涙を流したまま、まだ余韻の残る快感に身を震わせてハルの方を虚ろに見つめた。やってしまった。屈辱的な痴態を晒してしまい、顔に熱が集まっていく。
「へえ、男の潮吹きって初めて見た。本当に漏らしたみたい、恥ずかしいね?」
グシャグシャになった下着を足で踏まれて、さらに擦られる。これ以上の刺激は体が受け付けたくないのに、快感には素直に反応してしまった。
「んっ…ん、も、やめ…て」
「やめてくださいでしょ?どうすんのこんなに床まで濡らして。犬だから気持ちよすぎて嬉ションしちゃった?」
「ちが…っちが、う…」
「何が違うんだよ。言い訳は別に聞くつもりないから」
ハルの冷たさにまた新しく涙が溜まっていった。俺が悪かった。だから謝ってるのに、ハルに嫌われたくない。ハルに好きでいてほしい。
下着ごと中に入っていたものを全て取っ払われて、シワのよったシャツも脱がされ遂には首輪だけの格好になってしまった。縛られていた腕も解かれたが、逃げ出せそうにない。
「腰上げて」
「や…だ、また、何か」
「いいから上げろ。返事はワンね」
「わ、ん…」
言われるがまま、ゆっくりと腰を上げていく。すると、ローションを纏ったハルの指が後孔から中に入ってきて声が漏れてしまった。
「あっ…や、め…」
「慣らさないと痛い思いするのはそっちだよ。でもお仕置きだからね、痛くてもいいか」
自分の中に指ではない無機質なものが入っていく。小さめだがディルドの形をしたもので、その先には犬の尻尾のようなものが付いていた。まるで自分から尻尾が生えているみたいで余計に羞恥心を煽られる。
「あっ…あ、あ…」
「痛くしても気持ちよくなっちゃうなら意味無いじゃん」
いきなり捩じ込まれたそれは確かに少し痛かったけれど、自分がそれに快感を覚えてしまったのもまた事実だった。だからそう言われると本当に自分が変態みたいに思えてきて、顔が熱くなっていく。
「タオルで自分が汚した床拭いて。流石に舐めてとまでは言わないから」
そう言ってタオルを無造作に投げられ、自分の粗相してしまった跡を拭くという屈辱的な命令に従うため、一度立ち上がろうとした。けれどそれをハルは足で制す。
「犬は二足歩行しないから。ちゃんと四つん這いで掃除するんだよ」
「んっ…」
「返事は」
「…わ、ん」
足で尻尾を奥に押し込まれて、声が上擦る。いつになったら開放されるのかも分からないまま、クローゼットの床をタオルで拭いた。
「はい、よく出来ました。ご褒美あげるからおいで」
手招きされたところまで四つん這いになったまま進んでいく。動くたびに中に入っているものを締め付けている気がして、中々前へ進めなかった。
ハルの足元まで行くと、ハルはズボンを下ろして自身のものを俺の顔の前へ出す。言わんとしていることは分かったのだが、体が固まってしまったかのように動かなかった。
「早く。ご褒美だって言ってるだろ」
ハルの強い口調に肩を震わせ、恐る恐るそれへ手を伸ばすと、また制止するようにその手を掴まれた。
「手は使わないで」
「…おかしい、だろ…こんな」
「口答えするなって聞こえなかった?」
苛立ったようにそう言うハルを見て、嫌われたくないという思いから舌を出してハルのものに口をつけた。
誰のものだって咥えたくないのは変わらない。けれど相手はハルだから、できるだけハルが気持ちよくなれるように舌を動かした。
「ん…上手だよ、いい子」
そう言って頭を撫でられるのを嬉しいと思ってしまう自分はおかしい。どう考えたってこの状況が普通であるはずはないのに。
ハルに頭を掴まれて、この後されるであろうことを察知し咄嗟に頭を引く。それにハルは眉をひそめて見せた。
「何逃げようとしてんの」
「んっ…ん、ぐ…」
喉の奥をハルのものが突く。その息苦しさにむせ返ってしまいそうだった。気持ちでは何とか応えなくてはと思っていても、体は拒否反応を示している。
自分で何ができる訳でもないまま口の中でハルが果てると、生暖かいものが喉の奥へ流し込まされた。吐き出したくても、まだハルのものが入っているからどうにもできない。
「ん…ちゃんと全部飲んで」
「んっ…う…」
無理矢理飲み込まされ、喉に絡みつくようにそれは流れていった。不快感よりも、ハルに乱暴に扱われているという事実が自分を苦しめる。
ズボンを履き直したハルは立ったまま俺を見下ろして、上から声を降らせてきた。
「ありがとうございますは?」
「な…にが」
「ご褒美もらったらちゃんとありがとうしなきゃだめでしょ?」
足先で顎を下から持ち上げられ、ハルの方を向くことになる。その冷たく笑う顔が怖い。また俺は道具のように扱われてしまうのだろうか。
「ほら、どうしたの」
「あ…りがとう…ございます」
「何が?」
「ご褒美…くれ、て」
何を言っているのだろう、俺は。こんなの言う通りにする必要ないのに。俺がこんなことをするなんて自尊心が許さないはずなのに。
そんなにもハルに嫌われるのが怖いのか。
「そうだね、じゃあちゃんとご奉仕しないとね」
「も…こんなこと、やめ…」
「聞こえないなぁ」
「あっ…!」
遠隔操作されているのか尻尾の付いたディルドに振動が加えられ、その場で蹲って動けなくなる。
中からの刺激を受け取ってしまうと、先程果ててしまったばかりだというのに俺のものは再び硬さを取り戻していった。
「こんなのが気持ちいいの?」
「やっ…あ、ちが…やめ、ろ!」
「なにその生意気な態度。まぁそういうところ嫌いじゃないけど、ていうかそこが好き」
好きという言葉に反応して、中が締めつくような気がした。それによって尚更受け取る快感は増し、出したくもない声が噛み締めた唇から漏れていく。
「うっ…あ、んんっ…」
「こんな玩具使われて尻尾振って喜んじゃうんだ、そんなに気持ちいい?」
「ちが…あっ、だめ、いやだ…あぁっ」
足でぐりぐりとディルドを奥に押し込まれ、振動も相まって腰が起こせないほどに震えてしまった。
「これだけじゃつまらないよね…これだけじゃ足りない、満足出来ない」
独り言のようにそう零したハルの目には悲しみが映っているようで、またそれがどうしようもなく自分の心を締め付けるのだった。
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