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第219話Anger③

ハルは手にローションをとって、半分ほど引き抜いたディルドにそれを満遍なくかけていった。 そして容赦なくその尻尾を掴み出し抜きを繰り返す。もちろんその間も振動は続いていた。 「あっ、あ、やだ…あぁっ!ん…ん、うっ…」 「勇也ここ擦られるの好きでしょ?」 弱い所を狙うように責められ、床の上に爪を立てて空を掴んだ。すぐに気をやってしまいそうになり、涙で濡れた顔を歪めて必死に耐えようとするが、情けなくも体はそんな強制的な刺激に感じてしまう。 「すきじゃ、な…あっ」 「そんな気持ちよさそうな顔してるのに?ほらどうしたの、もっと鳴いていいよ」 潰れたような呻きは次第にただ気持ちがいいだけの甘さを纏った甲高い嬌声に変わっていく。そこを触られている訳でもないのに、昂った俺のものからは先走りが垂れ始めていた。 「あーあ、また床汚れちゃった」 「ごめ…な、さ…んっ…ゆるし、て」 「許すって何を?床を汚したこと?それとも、朝比奈くんとキスしてたこと?」 振動が更に強められ、ピストンも早くなっていく。息継ぎの間もない程に責め立てられて、全身が痙攣し始めた。 「あ゛っ…あ、も、むり…ごめ、ごめん…やだって、あぁっ!も…いっちゃ」 「勝手にイッちゃダメでしょ。こんな酷くされてるのに気持ちよくなっちゃうんだ?」 気をやりそうになった寸前でまた緩やかな動きに戻って、早くやめてほしいのに何故かもどかしくて仕方がなかった。 「ねえ、気持ちいいの?これ」 「んっあ、あ…きもち、よくな…」 「気持ちよく無かったらそんなアンアン言わないと思うけど」 ハルが手元の何かを操作すると、また振動が強くなった。さっきよりも強いからこれが最大なのかもしれない。 「ねえ、気持ちいいのか聞いてんの」 「あっ…あ、う…止め…だめ、とめ、て…!」 「ワンだろ」 慈悲のない責めに涙を流し、恐らくワンと言うまでハルはずっとこれを続けるつもりだろうと潤けた頭でそう思って絶望に浸る。 「もう一回聞くよ?気持ちいい?」 「わっ…ん」 「イキたい?」 「いや、だ…いきたく、ない…あっ!や…っいきたくな、も、むり」 その最大の強さで振動し中で暴れるものを、再び前立腺に擦り付けるように抜き差しされた。腰が跳ねるようにビクビクと震えて、もう駄目だと思った時にはまた振動が弱められる。 「返事はワンって教えたでしょ?イキたいですって上手にオネダリしてみなよ」 「や、だぁ…っあ、ほんとに、いきたくな…い」 「ずっと寸止めされてたいの?やっぱりド変態だね」 「ちがっ…あぁ!ん、んんっ…あ、だめ、もう…っ」 絶頂まで追い込まれてはギリギリのところでそれを止められてしまう。本当は寸止めなんてされたくないし、早く楽になってしまいたい。けれどそれでハルがこの〝お仕置き〟をやめるとも思えないし、なによりこの無慈悲に味あわされる快感が辛かった。 愛を持ってハルに抱かれるのとは全く違う。これはただただ俺に恥辱を与えるだけだった。 「イキたくないなら仕方ないね、これも付けとこうか」 今度ハルが取り出したのは一度見たことのあるリング。それを付けられるのがどれほど辛いか知っているから、目にした瞬間体が震え始めた。 「い、やだ、つけたくない…」 「イキたくないんでしょ?」 「あっ、あ、やめ…いや…」 俺の言葉を聞き入れることなくハルはリングを俺のものの根元へ嵌めた。締め付けられたそこは既にきつくなっていて、その僅かな痛みでさえも変に感じてしまうほど体の感覚は敏感になってきていた。 再び手にローションをつけたハルは、リングの付いたそこをその手で扱き始めた。さっきまで触られていなかったせいで、いきなり強い刺激を与えられたそこは更にきつくなっていく。 「あぁっあ、も、やめ…おねがっ…あっ!」 「お願いしますでしょ、ちゃんと言おうね?」 「お、ねが…い、しま…やめて、くださ…っ」 もうこのまま果ててしまうかと思ったけれど、締め付けているそのリングのせいでそれも叶わず、ひたすら射精の伴わない絶頂前の快感を耐え続けなければならなかった。 「リング付けてるからイけないし気持ちよさそうだからいいでしょ?」 「や…っあ、やだ、ごめんなさい…ごめ、なさ…」 「謝らなくていいって、その代わりイキたくなったらまた教えて?」 中の振動は微弱なものに戻り、もどかしい刺激でイけそうにもない。リングのつけられた前はどんなにハルに扱かれても射精まで漕ぎ着けることができなかった。 自分で言わなければこの地獄のような状況はずっと続く。かと言ってここで折れる訳にもいかなかった。自尊心がそれを許さなかったのだろう。 床の上で涙と汗と先走りまでを垂らしながらのたうち回るしかなくて、それだけでも既に自尊心は押しつぶされてしまっているはずだった。 この先ハルが自分のことを今までのように愛してくれなくなるのが嫌だった。だから屈したくはなかったのかもしれない。 「あっ…あ、も…ほん、とに…」 「ただオネダリしてくれればそれでいいんだよ」 ハルは耳元でそう言って、そのまま耳を舌で舐める。急に加えられた刺激で、そこに熱が集まっていった。甘噛みされると耐えられないくらいにそれが気持ちよくて、快感に身を委ねてしまおうと気持ちが傾いてしまいそうだ。 「はぁ…っあ、も…やめ、てくださ…」 「粘るね。じゃあもう少し放っておこうか」 「え、あっ…いや、そんな…」 また放置されるのかと思うとつい必死になってしまって、踵を返しかけたハルの脚にしがみついた。 「なあに、どうしてほしいのか言ってくれなきゃ分かんないよ。それともワンちゃんだから言えない?」 「い、や…やだ、行かなっ…で…んっ」 「じゃあオネダリするの?」 それに対しては頷くことが出来ない。唇を噛んでその歯の隙間から熱い吐息を絶えず漏らした。 「…じゃあ選ばせてあげる。コックリング外して俺の前でシコってイくのと、バイブのスイッチ最大まで上げて無様に中でイかされるの、どっちがいい?」 ニコニコと微笑みながらハルが提示してきた最悪の二択に、俺はただ硬直してしまうしかなかった。

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