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第220話Anger④
「そ、んな…どっちも、いやだ…」
震える声でそう言ったが、ハルはそれに対してつまらなそうにこちらを見据える。
「どっちが良いのか聞いてるんだけど。どんな風にイキたい?」
わざと屈辱的な言い方で選択肢を並べて、俺の羞恥心をより一層煽っていった。
「それとも…これが欲しい?」
〝これ〟と言って俺の手を取り、ハルのズボンの上から既に硬くなったそれを触らされる。
無機質な玩具なんかよりもハルの方がと思っていたけれど、それを察されてしまったみたいで余計に恥ずかしくなる。
「ほら、選んで勇也」
熱を帯び潤んだ目でハルの方を見上げる。ハルは最初から俺がそれを選ぶと分かっていたみたいに片方の口角を上げた。
「そうだよね、勇也は俺のこと大好きだもんね。こういう時はなんて言えばいいの?」
「わ…から、な」
「今俺は犬の飼い主だから。ご主人様のが欲しいですってちゃんと言わないと」
そんな言葉を言わされるのかと顔を赤らめるが、きっとどの選択肢を選んでも同じだっただろう。今の俺とハルの関係は対等でない。
ハルという飼い主と、それに逆らってはいけないペットの自分。こんな耐え難い屈辱を与えられていながら、なぜ俺は本気で逃げようとしないのだろうか。
「ごしゅ…じん、さま…の…」
「俺の目見て、もっと媚びるように言って」
ハルの目を見ようとしても、心臓の音がうるさくて直視ができない。どうやって媚びたらいいのかも全く分からなかった。
「ごしゅじん、さまの…ほし…」
どうすればいいのか分からなくて、恥ずかしさで熱くなった顔を俯かせてしまった。ハルは小さく唸って俺の頭を撫でる。その撫でてくれる手がいつものように優しかったから、つい内心喜んでしまう自分がいた。
「思ってたのとは違うんだけどこれはこれで普通に可愛いな…」
「なにが…あっ」
ハルは俺を抱え込んでベッドの上に移動する。あまり使っていなかったが俺のベッドは狭いから、なかなか身動きが取れない。なんの合図も前触れもなく中に入っていた尻尾付きのディルドが引き抜かれた。
「あぁっ!あ…っん…」
「それで、俺のが欲しいんだっけ?」
なんと答えて良いのか分からず、とりあえず首を縦に振る。ハルの体温を感じられるのなら、酷くされてもいいとさえこの時は思ってしまっていた。
「ほし…ほし、いです…」
「いい子だね。けどワンちゃんのお願い簡単に聞くほど優しくないんだ、俺」
「え…や、あっ…なに」
入ってきたのは玩具でもハルのものでもなくて、ただローションを纏っただけの指だった。
一本入ったかと思うと、確かめるように二本、三本と中に入っていく。
「三本余裕で入るんだね。もっと入りそうだけど」
「んっ…や、広げな…」
「勇也の気持ちいいところちゃんと教えて」
ハルの長い指が三本バラバラに動いて、中を探りながら擦っていく。確かに触れているのはハルの体温に違いないのだけれど、今の俺にはもどかしく感じる。
足りない。これでは楽になることなんて到底できない。
「…ん…んんっ…」
「なんで声抑えてんの。口開いて、ほら」
もう片方の手を口の中に突っ込まれて、無理矢理口を開かされる。それと同時に中に入っていた指が前立腺を責め立てるように擦って声が漏れた。
「あっ、あ、ん…そこ、あっ…!」
「ここがいいの?」
「やっ…だめ、あ、あぁ…っん」
「ダメじゃないでしょ。ここがいいのかって聞いてんの。ここが感じるの?」
今の俺に求められているのはワンと犬のように従順に鳴くこと。
「んっ、あ、…わんっ…」
「そっか、じゃあ指だけでイこうね」
「そ…な、むりっ…んっ!あっ、あ、んん」
弱い所を三本の指で何度も擦って出し入れする。手のひらの当たる音やローションが空気を含んでたてるいやらしい水音が部屋に反響するのが自分の耳にもよく聞こえた。
ずっと責められていると、絶頂を迎える準備みたいに腰が震えて足の先に力が入る。拘束されている訳では無いから、思わずハルの手を掴んでしまった。
「…なにやってんの」
「あっ、ちが、ごめ…なさ」
「犬なら犬らしく服従のポーズしたままイかされなよ」
犬が飼い主に腹を見せるのは服従の合図らしい。
両手は腕を曲げて上げ、そのままベッドのシーツを強く掴む。ハルに足を開かされ、その足の間にハルの体が割って入った。
なんとも情けないこの格好に顔が熱くなるのを隠せない。
「ほら、イけよ。ちゃんとイクときは言って」
「あっあ、あ、んんっ、も、だめっ…あぁっ!」
服従のポーズのまま、腰が跳ねて絶頂を迎える。ハルの指であっけなくイかされてしまった。
中は熱く収縮を繰り返して、全身が火照ったままだ。それなのにハルは未だにその手を止めず同じところを責め立てる。
「勝手にイッてんなよ、イクときはちゃんとご主人様に報告でしょ?」
機嫌悪そうに先程より激しく指を動かされ、絶頂を迎えたばかりのそこはより敏感になっていて、すぐにまた絶頂へ追いやられた。
「あっ!待っ…いった、から…!も、やだ、あっ、だめ…あっまたきちゃ…んんっ」
「言えって」
「ごめ、なさ…っいき…ます、あっ!いく、あ、だめ…!」
またもや二度目の絶頂を迎える。これ以上されたら本当におかしくなってしまう。
指はようやく引き抜かれたが、体は続けてやってきた絶頂に震えたままだ。
よく分からない涙が垂れてきて、それをハルが舌で掬った。
「ちゃんと言ってくれなかったから、もう一回」
一度引き抜かれたディルドを再び中に突っ込まれる。滑りが良くなっていたからか滞りなくそれは奥まで入っていって、また振動を始めた。
絶頂に至るまでの間隔が短くなってきているのを感じながらベッドの上で浅い呼吸を繰り返して声を漏らしていると、赤い首輪に紐が付けられ、それをベッドヘッドの柵に結び付けられてしまった。
「俺汗かいたから風呂入ってくるね、いい子にして待ってて」
「やっ…あ、行かな…やだ、待って…!」
無情にもドアは閉められ、ハルの方を追おうとした体は首輪に繋がれた紐によってぐっと引き留められる。
熱を持った自身の体を抑えるように抱きしめながら、ベッドの上で蹲って静かに涙がこぼれていった。
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