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第224話Underwater

無理矢理腕を引かれ組み敷かれる。抵抗しようにも、ハルは加減のない力で押さえつけているから適うはずもなかった。 「ハル…や、め…あぁっ!いっ、た…」 「叫ぶと痛い思いするよ」 ハルのものがいきなり中へ侵入し、声を出しそうになるが静電気を恐れて口を噤む。けれど感じてしまうのに代わりはないから、声を出さないことなど不可能に近かった。 「あっ…ん、あ、あぁっ、う…」 「ほら、気持ちいいでしょ?」 「や、だ…!あぁっ!」 静電気と快感が同時に訪れて感覚が麻痺しそうだ。無理矢理体を重ねるハルは、最初の頃のハルと何ら変わりがない気がした。 「勇也は俺のなんだから、俺でしかイけない体になってくれないと困る」 「あっ、あ、やだ、も…やめ」 「俺のこと好きでしょ?勇也は俺が一番好きでしょ?」 そうだよ、お前のことが好きだから、こんなことにも耐えてきたんだ。お前は、俺のことが好きならどうしてこんなことをするんだ? 「もう…いい…」 「え?何がいいの、これからまだ__」 「んっ…もう、つか…れた」 俺が嫌がるのを止めると、自然とハルも動きを止めた。けれど激情したように、また激しく奥を突く。 「何がだよ、だって俺、こんなに勇也のこと…!」 「あ゛ぁっ!あ、やだ、いやだ…!あぁ、あっ!」 押し寄せる快感とその静電気に怯えながら、堪えていた涙が一気にぼろぼろと零れ始めた。 「も、嫌だ…やめ、ろよ」 ハルはまた動きを止めて、俺の中から自身のものをずるりと引き抜く。 「なんで俺の話聞いてくれないんだよ、なんで俺のことモノみたいに扱うんだよ」 「勇也…けど、それは」 「結局お前は自分のことばっかりじゃねえか。俺がどんな気持ちでずっと我慢してきたと思ってるんだよ」 首に付いていた首輪を、自らの手で二つとも外す。最初から、自分の手で外すことなど容易だった。 ハルのことを拒むのも、容易であったはずなんだ。そう出来なかったのは、きっと好きだから。 「だから、俺はこの後ちゃんと、話を聞こうと…」 「いつお前がそんな素振り見せたんだよ。俺がなんでもお前の言う通りにして、思い通りの従順な犬になれば満足か?」 「待って、違うんだよ…俺は、ただ」 ああ、駄目だ。一度言い始めてしまったらもう止められない。こんなことが言いたいわけじゃなかったのに。ただ話を聞いてほしいと言えればそれでよかったのに。 「何が違うんだよ!俺はお前の恋人なんだろ…何でこんなこと出来るんだよ。俺だってあの時朝比奈にキスされて、お前になんて言ったらいいか分からなくて…」 ハルは何も言えず黙ってしまう。所詮そんなものだったのだろうか。やはり俺を玩具にして楽しんでいたということか。 「俺からキスした訳じゃない。確かに抵抗できなかったわけじゃねえけど、いきなりだったからどうすることも出来なかったし」 「勇也…分かったから、ねえ、だからもう」 「分かってねえだろ!結局俺のこと信じてないじゃん、お前。俺のこと玩具にして楽しんでただろ。今までトラウマと向き合ってきて、俺に優しくしてくれたのも全部嘘だったのかよ」 「違う!それは絶対に嘘じゃない!」 涙が止まらない。自分で言っていて自分で悲しくなってしまった。いつだって我慢するのは自分の方だったから、ハルの暴挙を何度も許してきてしまった。 ここで甘やかしたら、きっとこいつは一生反省しない。もちろん俺だって本当はハルのことが大好きで、ハルに嫌われたくなんかない。 だからこれは賭けでもあった。ここでハルに手放されたり、俺自身が本当にハルを突き放してしまったらこの関係もそれまでということになる。 「俺にここまでさせておいて…好きかどうかなんてよく聞けるよな」 「だっ、て…勇也は、俺のこと好きでしょ?」 ハルの目に焦りが見える。珍しくこんな狼狽え方をするハルを、涙を流しながら横目で見た。 「こんなことするお前は…好きじゃ、無い」 「は…?どういうこと?」 「お前なんか、嫌いだ」 勢いで言ってしまった。そんなこと本当は思っていないからか涙が余計止まらない。けれど、今の状況でハルのことを好きとは言えなかった。ハルがこのままこういうことを続けていたら、俺だって本当にずっと好きでいられるかわからない。 このまま好きでいられたとしても、俺が先に壊れてしまう気がしていた。 「きら、い…?って…」 まるでそんな言葉初めて聞いたとでも言うように、ハルはぽかんとした顔になる。次第に顔が青ざめて、泣いている俺の方に縋るように飛びついてきた。 「待って、ねえ、嘘でしょ?なんでそんな事言うの。嫌だ、ごめん。謝るから、お願いだからそんな事言わないで」 「俺が今欲しいのは…ごめんじゃない」 ベッドから立ち上がり、ウェットティッシュで適当に体を拭いて服を着替える。バッグの中に必要なものだけ適当に詰め込んだ。 ハルは慌てたように服を着て、部屋を出ていこうとする俺を呼び止めた。 「ま、待って!どこ行くの」 「どこでもいいだろ」 「もうこんなことしないから…勇也」 「しばらく出ていくけど、ちゃんと飯食えよ」 ハルは俺を追いかけようかどうか迷いながらも動けないようで、顔を青くしたままその場で静止していた。 ハルが動き出す前に足早に家を出る。正直まだどこに行くかなんて決めていなかったけれど、今真田の家に行けば上杉もいるはずだし、なんとかなるだろう。 勢いで家出までしてしまうとは、自分でも驚きだった。ハルに腹を立てたのは事実だったし、もうこれ以上耐えられなかったからいいのだけれど、少し気がかりだ。 甘やかしては駄目だと首を振り、真田にメッセージを送るとすぐに快諾してくれた。 ………………… 真田の家について驚いたが、この辺りでもよく目立つ高級マンションだ。マンションというより、所謂億ションと呼ばれるものだと思う。 少し緊張しながらも、エントランスに足を踏み入れた。

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