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第267話Bath
痣の上から痕を付けたのが痛かったのか、ハルが若干顔を歪める。自分のした事を省みて急に恥ずかしくなった。
「悪い、痛かったか?」
「大丈夫。やけに積極的だね?」
「そういう、わけじゃ…」
ないとは言いきれない。最初の頃よりも体を重ねることへの抵抗は少なくなっている。というよりかは、寧ろそれを自ら望むようになってきていた。
勿論ハルほど性欲が強い訳では無い。けれどこうしてハルに対してドキドキしてしまうとどうしても〝そういう〟気分になって流されてしまいそうになるのだ。
だからといって簡単に体を開くわけにはいかない。それはプライドとかではなくて、ハルに調子に乗らせないためだ。これで夏休み毎日のように抱かれたらたまったものではない。
「俺、先に洗う」
そう言ってバスタブから出ると、何故かハルまで立ち上がって俺にべったりとくっついてくる。
「…お前は湯船入ってろよ」
「俺が洗ってあげる」
「いいっつーの…おい!」
無理矢理風呂椅子に座らされ、わしゃわしゃとジャンプーを泡立てて俺の頭を洗う。正直気持ちよかったし決して嫌ではなかったが、どうしても本当に洗うだけで済むかどうかを疑ってしまう。
俺の頭を洗い終わると、自身の頭を洗い始め俺はバスタブに戻される。
自分の思い過ごしだったかもしれない。流石に今のハルは恋人だし風呂場で変な気を起こすほど俺に飢えてはいないということか。それはそれでひと安心していいものだろうか。
「勇也、体も洗ったげる」
「いいって」
「ちゃんと優しくするからおいで」
「…変なことすんなよ」
俺だってハルに触れてほしくない訳では無いのだ。そのまま流されて行為に及ばないのであればいつだってハルに触れていてほしいと思う。あの綺麗な大きい手で触られるのが、認めたくはないが好きで好きで仕方がない。
「一緒にお風呂入るの久しぶりだね。旅行以来?」
頭の中で考える。確か最後に一緒に風呂に入ったのはハルの言う通り旅行で河口湖へ行ったときだ。そう考えるとかなり前になるのかと思いながら体を泡で包まれていると、ハルの手が胸板を滑ってその先端に指が引っかかった。
「あっ、ん…」
「ん、どうしたの?」
ハルを叱ろうと睨んだけれど、本当に何が起きたかわからないといった顔をしている。自分が敏感すぎてハルの指に感じてしまったのだと思うと恥ずかしくて、次こそ変な声をあげないように神経を集中させた。
しかし、意識すればするほど俺の体はおかしくなっていく。指先だけの軽い力で腹を撫でられると思わずその手を振りほどきたくなってしまうほどに体がビクビクと反応する。
「こういう所とか、よく洗った方がいいんだって」
太腿まで手が這ってきたかと思うと、今度は親指に力を込めてその付け根をゴシゴシと押しながら擦った。くすぐったいと言うべきなのだろうが、性感帯と近いこともあり俺の体は明らかに艶めかしい快感を受け取る。
「んっ…ふ…ぅ」
思わず口を押さえて声が出ないように塞いでしまう。ただ体を洗っているだけなのに感じたりしてはだめだ。その思いに反して快感の色は濃くなっていく。
我慢出来ず少し足を床から浮かせて膝を擦り合わせると、それを妨げるようにハルに膝を開かされ、内腿を泡で優しく洗い始めた。
その優しい刺激に耐えられず、ついにハルの手を掴んでしまう。
「なに?」
「も…いい、あとは自分で洗う」
「え〜せっかくなんだから俺にやらせてよ、ね?」
ハルの声が耳元で響いて肩を震わせると、数秒の間を置いて耳へ息がふっとかけられる。その不意打ちがあまりにも気持ちが良くて、息だけで全身を震わせてしまった。
「ひゃあっ…ん!」
「あは、相変わらず耳弱いね。かわいい」
内股の際どい所を泡で撫でながら、ふざけるように耳へ何度も息を吹きかける。その度に俺の体はビクンと跳ねて熱を貯め込んでいった。
「あ、やだ…はる、ほんと…にっ」
頭がぼうっとしてくる。ただその耳と脚への刺激が気持ち良くてハルの悪戯に身を委ねてしまっていると、下半身に違和感を覚えてようやくハッと正気に戻る。
「…勇也、それ」
「や…ちげえ、から…こんな、なんで」
顔がかあっと熱くなっていくのが分かる。ハルはそんな俺を意地悪そうに笑いながら見つめ、また耳元で囁き始めた。
「ちょっと勃っちゃった?」
「ちげぇって…俺は、そんな…お前が変なとこ触るから!」
「体洗ってただけなのに?へぇ、それで気持ちよくなっちゃったんだ」
「違う!そんなんじゃ、ねぇし…あっ、触んなバカ!」
ハルの手が胸へ伸びてくる。咄嗟に逃げ出そうと椅子から離れたけれど、そのまま床に手をつく形になってハルに押さえ込まれた。
「勝手に感じちゃうなんて悪い子」
「耳、元で…喋んな…」
「俺の声、好きだろ?」
少し低く甘い声でそう言われると、体は勝手にビリビリと痺れ始める。このまま流されてはいけないと分かっているのに、どこか次の刺激を待ちわびている自分がいた。
「ぁ…んっ!ん、やだ…やめろ、ばか」
「勇也、ここ敏感だもんね?」
「おま、えの…せいで…んっ」
先程は軽く触れるだけだった胸への刺激が確かなものに変わり、明らかに俺の体はそれを喜んでいる。それも恥ずかしくて首を振り続けるが、それよりも気持ちよさが先行して声が漏れてしまう。
「泡、ぬるぬるしてて気持ちいいでしょ?」
「それ、以上…あっ、あぁっ…」
「腫れて硬くなってきてる…やらしい」
「やだ、んっ…声でちゃ…」
きゅっと抓ったかと思うと、そのままクリクリと捻って刺激を与える。いつの間にかいやらしく変わってしまったそこは少し手が触れるだけでも充分な程に気持ちがよかった。
「あっ、も…そこ、やめろ…」
「そこって?」
「う…っあ、ちく、び…やだ…おかしく、なる」
「おかしくなっていいよ」
そこを爪で勢いよくカリカリと搔かれ、腰までが震えて情けない声が漏れた。爪が引っかかる度に気持ちいい。ここだけで気持ちよくなるのは男のプライドが許さなかった。
「んんっ!んぅ…ん、やだ、やめ、ろぉ…」
「乳首だけでイッちゃうくらい弱いもんねぇ、心做しか膨らんできた感じするし、服とか擦れないの?」
「…るせぇ、ばか、ばか…あっん…」
お互い裸同士だから後ろから覆いかぶさるハルの少し硬くなったものが太腿に触れて、ハルが自分に欲情しているのだと分かると余計体が敏感になっていく気がした。
体に力が入らなくなってきたところで、人差し指と親指に力を込めて思い切りぎゅっと摘まれる。
「やぁっ、あぁん…!」
痛いはずなのに気持ちいいという快感がそれを覆い隠してしまい、痛いのが気持ちいいと脳が錯覚してしまった。
またしても胸を弄られただけで頭の中が真っ白になって弾け飛んでしまったのである。
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