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第269話Bath③

不意打ちにしたキスは少なからずハルを驚かすことが出来たようで、力の入らない目で得意気にハルを見上げた。 「は…アホみてえな顔」 「勇也、段々煽り上手になってきたね?」 今度はハルの方から深く口付けられて、舌を絡め合いながらお互いを求める。 ハルの片手がいつの間にか背中を這い後ろの孔に触れた時、この後のことを察知してハルから離れようとしたがキスをやめてくれない。 ボディソープか何かを纏った指が中へ侵入してきた。 「んん…んっ…ぅ、あっ」 声を抑えようにもハルが舌で無理矢理に唇を開かせようとしてくるから、はしたない嬌声が唾液とともに溢れだしてくる。 「あ、あぁ…んっ…う…声、やだ…」 「可愛いから大丈夫」 「い、や…ぁ、そこっ…擦ん、なぁ…っ」 風呂場は声が響きやすい。自分の声が反響して耳に届き、恥ずかしさは増す一方だった。 キスを続ける限り中を擦る手が止まることはないし、無理矢理声を出させられる。 一番の難点は、このキスをやめたくはないと思ってしまっているところだ。 「ここ、擦ると中が締まる」 「やっ…め、あぁっ…そこ、ん…んぅ」 なにか言おうとすればその先をハルの唇に塞がれる。ハルの指が一番気持ちのいいそこを何度も指の腹で撫でてトントンと叩いて、下腹部をぐっと押した。その刺激だけでもう達してしまいそうなのを、きっとハルは知らない。 「んん…う、あっ…も、だめ、はる…指やだ」 「まだ慣らしてる途中だから我慢して」 我慢なんてできない。こみ上げてくる快感は止まることを知らず、まだ少し解しただけだというのに俺の体はビクンと大きく跳ねて中で達してしまった。 「…今イッた?」 「ちがう…そんなんじゃねえし…」 熱くなった顔を隠すようにハルの胸に顔を埋めて、自分の感じやすさを恨みながらこの恥ずかしさをどうにか消そうと努めた。 ハルは俺の顔を上げさせて、愛おしそうに顔中へ軽いキスを落としていく。 「もう挿れていいってこと?」 「ちが…ここじゃ嫌だ…」 「もう我慢出来ない、お願い勇也…だめ?」 「だ、めだ…んな、顔しても…」 その顔をしたまま、頬を擦り寄せてくるから堪らない。眉間に皺を寄せ、体は脱力させる。 「…好きにしろ、ばか」 「ん〜好き〜」 「うるせえするならさっさとしろや」 「ムードってもんが無いなぁ」 こんな所でムードもクソもあるかと思ったのも束の間、俺がハルの上に座ったその体勢のまま俺の腰を浮かせようとしてくる。 「待っ…これじゃ、奥…いや、だ…あっ!」 「ん…奥、当たるの好きでしょ?」 「うっ、うう…いやだ、やだ、あっあっ…」 向かい合わせになってハルの上に座ったまま、下からハルが突き上げる。両足はだらしなく開き、ハルの背中に爪を立てて快感から逃れようと頭を振り乱した。 顔は涙と涎でぐちゃぐちゃになって、とても恋人に見せられたもんじゃない。それなのにこいつは、俺の涙を愉快そうにペロリと舐める。 「嫌なの?気持ちいいとこ、ここじゃなかったっけ」 そう言ってハルが突くのは間違いなく一番気持ちのいい所だった。指なんかじゃ到底届かない、ハルのだからこんな奥まで抉るように突くことができる。普通なら痛いはずなのに、ハルの熱が気持ちよくて体がそれを求めてしまう。 「そこ…だ、め…んっ、だめだっ、て…あぁっ!いっ、も…いく!」 上半身が弓なりに大きく反る。さっき一度達したというのに、余計に体が敏感になったような気さえする。こんな至近距離で達した顔を見られたことが恥ずかしくて顔を覆い隠そうとすると、繋がったままハルに優しくキスをされた。 「もっとその顔見せて」 「や、だ…見んなよ…」 「俺にしか見せない顔でしょ?ちゃんと見せて」 当たり前だ。こんな顔ハル以外の前で見せられるはずがない。蕩けきった俺の顔をハルはそっと大きな手で包み込んで見つめてくる。 ハルの顔を見たことで、俺は更に顔を赤らめてしまう。 「好きだよ、勇也」 「…も、わかった…から」 「なんか今凄く中が締まったんだけど」 「うるせぇ、気の、せいだ…あほ」 自分でも分からない。覚束無い頭で考えても、ただハルが好きだという気持ちばかり浮き上がってくる。気持ちよさで頭がおかしくなったのかもしれない。今変に口を開いたら普通に好きと言ってしまいそうだ。 「好きだよ勇也、好き…大好き」 「あっ…あ、んっ…わかった、から…言わなくて、い…あぁっ」 「言いたいんだもん」 「も、むり…おく、やだ…っん、んんっ」 快感に耐えられず、咄嗟にハルの肩に噛み付く。何度も肩に噛み付いたところでハルがそれをやめるわけでも、快感が止まるわけでもない。 その歯型がハルを独占する印のような気がして、むしろ気持ちよくなってきてしまう自分はきっと頭がやられてしまっているのだろう。 「またイキそ…?」 「ん、んっ…んん…」 「そんな唇噛んだら切れちゃうよ、俺の肩噛んでていいから。でもできれば声、聞かせて」 「あっ、はる…はる…んっ、んぅ…」 名前を呼んで何度も求める。愛情を表現する方法はもっと他にもあるのかもしれないが、俺はこうして一番近くでハルを感じることで何よりも愛を伝え合える気がした。 もっと、もっと奥まで繋がりたい。離れずにずっと口付けを交わしたい。 「そんな必死にならなくても、俺はちゃんとここにいるよ」 「ぁ…いき、たい…はる…もっと、ほし…」 「締めすぎだって、ちょっと俺もやば…っ一回抜いてもいい?」 恐らくゴムをしていないから抜くと言い出したのだろう。いつもなら俺がゴムをしろと怒るところなのだが、今はどうしてもハルに離れて欲しくなくて脚をハルの体に絡ませて離れまいとしてしまう。 「勇也?!…ちょ、待って…ほんとに、もうでるから」 「んっ…だせよ、俺ん中…お、れも、いきた…あっんん、んっ!も、いく…はる」 体が仰け反るのと同時くらいに、中へ熱いものが流れ込んでくる。気持ちよさそうなハルの顔が可愛くて、赤く染まった耳を何度も甘噛みした。 「こら、勇也…っあんまり可愛いことしないの」 中からハルのものが抜けると、吐き出されたものが太腿を伝っていくのがわかった。 ようやく頭がハッキリしてきて、今さっきの自分を省みて死ぬほど恥ずかしくなる。顔を手で覆い隠すが、そんなものじゃどうにもならなかった。 「今の、事…全部忘れろ」 「今のって、俺の名前呼びながら中に出されてイッちゃったこと?それとも潮吹き…」 「うるせぇ…全部だっつってんだろ」 よろよろと立ち上がりながらシャワーを手に取って中のものを洗い流すと、ここぞとばかりにハルが俺の手を止めて微笑みかけてくる。 「俺がやったげる」 「いらねーからそういうの」 「遠慮しないでよ、出したの俺だし」 「うるせえ!…このっ、や、めろ…!」 俺の制止も虚しくハルの指が中に入ってきて中のものを掻き出そうとする。しかし俺の体は困ったことにハルが触れるとすぐに気持ちよくなってしまうらしい。 「勇也、中締めないで」 「しめて、ねぇし…はやくしろ」 「そろそろ出て髪乾かさないと風邪ひきそうだね」 「だから言っただろ…んっ…こん、なとこで…」 どろりと中から白濁した液が出ていくのが風呂場の鏡に映ってわかった。自分の情けない顔が良く見える。口に出していなくても、こんな表情じゃハルのことが好きなのがバレバレだ。 「でも、よかったでしょ?」 「…ふつー」 俺以上に分かりやすくハートを辺りに散らばせるハルは、腰の抜けた俺を抱えてようやく風呂場から出た。されるがままに服を着させられタオルを被らされる。 さっきからずっと顔を綻ばせているハルに愛おしさが溢れだしてしまいそうで堪らなくて、短いリップ音をたてて頬に口をつけてしまった。

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