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第311話Redstar Lily③

ゲームを持ってきたと言うから何をするのかと思えば、まさかの小型ゲーム機を四台持ってきたようだ。 「お前修学旅行にまでこんなもん持ってきたのかよ…」 「今日のためにわざわざ買ったんだよ、言っても皆持ってきてくれるか分からなかったし」 「俺ちょっとさっき聡志に言ったことに自信持てなくなってきたんだけど…」 「なんでそういうこと言うんだよ!いいだろゲームくらい」 仕方なく真田からゲーム機を受け取って対戦ゲームを始める。何だか四人で泊まりに来たみたいで修学旅行感は無かったかもしれないがそれなりに白熱して楽しかった。 「そろそろ夕食の時間ではないか?」 「あ、ほんとだな。じゃあ切り上げて下降りるか」 ゲーム機を真田に返し、四人揃ってホテルの下の階へ降りていった。そこで集合してから夕食をとる予定の店へと向かう。 沖縄料理は初めて見るものも多くてついどうやって作るのか気になってしまったが、どうやらハルの口には合わなかったらしい。そうとなると作る機会も無いだろうから少し残念だ。 「お前夕食あれで足りるのか」 「んー部屋でお菓子食べるからいいや」 「今日くらいは許すけど菓子ばっか食いすぎるなよ」 「はぁい」 ホテルに戻った頃にはかなり遅い時間になっていた。今日は飛行機に乗った疲れもあってかハルも眠そうだし、何かされるということは無さそうだ。 明日は海に行く予定になっている。この前初めて海をこの目で見たし、勿論海水浴なんてしたことが無い。ハルと一緒なら不安はないだろうけれど、海は少し怖い。あんなに綺麗なのに、全て飲み込まれてしまうような気がして恐ろしい。 そんな不安に駆られながらも、疲れきった体はすぐに眠りについてしまうのだった。 「晴れてよかったね」 「11月でも海入れるもんなんだな」 「そうだね。すごく綺麗なんだってさ、沖縄の海」 朝食を済ませてからバスに揺られて海へ向かう。海にいる間はほぼ自由のようであったが、一応クラスごとに班が作られている。 俺達は何故か離れたクラスの真田達と同じ班だ。何故かというかハルが仕組んだのだろうけれど、本当にこんなことをしていいのだろうか。 「勇也は泳げるんだっけ?」 「まあ、普通に」 「良かった。でもあんまり夢中になってると焼けちゃいそうだね、ちゃんと日焼け止め塗ってね」 「めんどくせぇないちいち…」 沖縄に着いてからは外に出る前や歩いている途中に何度も日焼け止めを催促されている。ハルは肌が白いのがよほど好きらしい。 「あ、見えてきたよ」 窓から見えた海は、この前ハルと見たものよりもずっと透き通っていて美しかった。 まずその色からして全く違ったように見えるから不思議なものである。 「綺麗だな」 「そういう感性とかは素直だよね」 「いつも素直だろ」 「どこが?それならもっと俺についてもっと何か言ってくれてもよくない?」 ハルの面倒臭いのが始まった。こういう時は決まってしつこい。ハルと違って俺はあまり感情を表に出すタイプではないのに。というか、ハルは逆に思ったことを全て口に出しすぎだ。 「…言わなくても分かんだろ」 「たまには言ってくれてもいいのにってこと」 「お前はいつも…その、格好いいと思ってるし…別に言う必要なんてない」 そこまで言うなら言ってやろうと思って口に出したけれど思っていたよりずっと恥ずかしい。 誤魔化すように窓の外の青を見つめた。

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