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第313話Colon②

「あ〜ちょっと肩焼けちゃったね」 「このくらい、別に…」 「一緒にお風呂入る?」 「嫌だ」 ハルを先に風呂場へ追いやり、自分はベッドの上に鎮座して精神統一でもするかのように目を瞑っていた。 自分は別に期待なんていていた訳じゃない。そういう訳じゃなくてもいざすると言われたら勝手に体は情事を思い起こす。 熱くなった体を抱きしめて、ゆっくりイメージトレーニングをした。 隣に声が聞こえてしまう可能性は高い。だから声は極力抑えよう。きっとハルはわざと声を出させようとしてくるだろうから。 そう考えているうちにハルは風呂から上がっていて、今度は自分の番となった。 毎回準備をしているものだから手慣れてしまったけれど、恥ずかしいことに変わりはない。風呂場の鏡に映った自分の体が少しずつ変わってきているのに顔が熱くなる。まるでハルに抱かれるための体になってしまったかのようだ。 風呂を出てから身嗜みを一応整えて鏡をよく見て確認する。 よし、大丈夫だ。 あれだけしないつもりでいたはずなのにどうして俺はこうも容易いのだろうか。 服を着てベッドの方を覗くと、ハルはすでに横になっている。恐る恐る近づいて、その肩を後ろから叩いた。 「ハル…もう、いいから」 「ん…」 「ハル?」 顔を顰めてもう一度ハルの肩を叩き、揺さぶる。そうしてもハルは小さく唸るだけで、仰向けになった顔を見ればその目は閉じられていた。 「は…?お前、寝てんの?」 「ごめ…疲れたから、きょうは、ねる」 「寝るってお前、おい…」 何度か肩を揺すったけれど、ハルが目を覚ます兆しはなかった。 変に期待して準備までわざわざしてやったというのにやっぱり寝るなどどういうつもりなのだろう。 何度か声をかけてみたものの返ってくるのは心地よさそうな寝息ばかり。 いよいよ俺も諦めて部屋の電気を消す。隣のベッドに入ろうとするとそこにはハルが買ったものや荷物が大量に置かれていて退かさないと眠れそうにない。 仕方がないからハルと同じベッドに潜り込んだ。その瞬間すぐに俺は違和感に気づく。 「こいつ、また…」 ハルから微かに香るのは例の香水のものだ。この前使うのは禁止だと決めてからしばらく嗅いでいなかったけれどすぐに分かった。 かと言って今更ベッドから出るのも面倒だ。仕方なくその匂いに包まれたまま目を瞑る。 「んっ…」 つい出てしまった声を掌に収めた。ただハルが動いて服越しに触れ合っただけだというのにこんな声を出してしまった自分が恥ずかしい。 準備して期待していた気持ちも少なからずあったからなのか体の奥が熱いような気さえした。 それを堪えようとハルの背中に縋りついて息を漏らすと、余計にその香りが色濃くなって耐えきれなくなってしまう。 「ハル…」 なんで起きないんだよ、バカ。 ハルの背中に顔を埋めたまま、ひたすら脚を擦り合わせる。どんなに我慢してもその煩悩のようなものが消えず、ついに下半身が熱を持ち始めた。 ハルは起きる気配もないし、このまますぐ寝れそうにもない。修学旅行に来てまで何をしているんだとか、こんなことをするなんておかしいとかそんな考えも薄れていった。 「んっ…ん、はる…」 ハルとその香水の香りを感じながら、自分のものにそっと手を伸ばす。体を重ねることが増えたせいで敏感になっている。 ハルと何もしない日は逆に自分もなにかが溜まってしまうようで、無心に自身のそれを柔く扱いた。 「はる…はる、あっ…」 声が出ないようにハルの背中で押さえながら、えも言われぬような背徳感に襲われて手の動きが早まっていく。 ハルに触ってほしい。本当は今日だってそのつもりだった。ハルに満たされる気でいたのに、この仕打ちはあんまりではないか。 「ばか…」 自身の掌に精を吐き出して虚しい気持ちに浸る。 手を洗ってからもう一度ベッドに入ると、疲れと先程出してしまったせいですぐに目を閉じてしまった。 ふと、何か違和感を覚えて目を開ける。

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