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第314話Colon③
微睡みの中でふわふわと浮いているようなそんな気持ちだったが、微かにハルの姿が見える。
ビクンと腰が浮いた。どこを触られているのかもよく分からない。けれどハルに抱かれているのだという感覚は何故か自分の中にあった。
気持ちいい。ただその官能的な快感に身を委ねてしまいそうになる。
「あっ…はる、だ、め…」
制止しようとしたところでハルは止まらない。俺の言葉がまるで聞こえていないみたいにハルが奥まで入ってくる。
「やっ、あ、だめ…っ!いく、も…いっちゃ…あぁっ!」
奥深くで絶頂を迎えた後、頬を何度か軽く叩かれるような感覚を覚える。
もう一度目を見開くと、先程見えたのとは違うホテルの部屋がぼんやりと映った。
しかし相変わらず体の快感はそのままで、息は乱れて体はビクビクと震えている。確かに達した感覚はあるのに、ハルに抱かれたような形跡はまるでなかった。
「勇也、大丈夫?うなされてた…っていうか、なんていうか」
「…お前、さっき俺になにかしただろ」
「してないよ。勇也の声で起きたんだから」
言われたとおりハルは息も服も乱れていないし、寝起きのような声だ。一方俺はしっかり下半身に不快感があるし、まだ快感の余韻がある。
「うなされてた…って」
「ていうか、喘いでた…?気の所為かな」
「そんなわけあるか!」
「静かにしないと隣に聞こえるって」
ハルは慌てたように人差し指を口元に当てて俺を黙らせる。
混乱するばかりで何が起きているのかわからない。ハルが何もしていないのだとしたらさっきのは俺が見た夢だったのだろうか。
ということは、俺はその夢で__
「なんの夢見てたの?俺の夢?」
「ちげえし」
「だってさっき俺が何かしたって…」
「それは、その…」
言えない。寝る前にハルの隣で一人でしてしまったことも、ハルに抱かれる夢を見て達してしまったことも。
色情狂にでもなってしまったのだろうか。寝ている時まで快感を求めてしまうだなんて。
「そんなに俺としたかった?俺が寝ちゃったからまた拗ねてるの?」
「誰が拗ねるか!」
「静かにって言ってるでしょ」
「あっ…お前、なにして…」
掛け布団ごと覆いかぶさるように俺に跨って動きを封じられる。ハルの手が優しい手つきで俺の体を撫でていった。
「ごめんね、疲れたなんて言って。俺が誘ったのに」
「んっ…さわんな、やめ…っ」
「触って欲しかったんでしょ、
俺に。本当は抱かれたくて期待してた?」
「…んな、わけ…あっ…や…」
みるみるうちに体は熱を帯びていく。ハルの言った通りに期待していた自分が恥ずかしかった。
ただ触られているだけなのに、ハルの手が触れる度声が抑えきれず漏れてしまう。
「あんまり声は出せないけど、勇也がして欲しいなら今からでもちゃんと抱いてあげるよ。どうする?」
「んなこと、いちいち…」
「言ってくれないとわからない。俺を責めていいから、どうして欲しいか勇也の口で言って?」
わざとこうされているのか、それとも本当に寝てしまったことを詫びているのか分からない。けれど体は我慢の限界とでも言うように張り詰めた状態にあった。
修学旅行に来ていて、隣はクラスメイトの部屋。明日だって朝食の時間は早いのに。自分の欲が深いせいでついハルを求めてしまう。
もうハルに変態だなんて罵りはできないのではと思うほどには自分が欲情していることに驚いていた。
「…し、たい…」
「何を?」
「なっ…そんな、こと」
「言って。俺と何がしたいの?」
耳元で紡がれる囁き声までもが体を震わす。このままではハルに触れられただけで達してしまいそうだ。
「…したい」
「うん、だから何を?」
「…も、やだぁ…」
涙が込み上げる。こんなことで泣いてしまうだなんて自分はどうかしているのだろうけれど、気持ちがいっぱいいっぱいになってしまって訳が分からなかった。
「泣かないで、ごめんね意地悪言って。でも勇也が可愛くてついいじめたくなっちゃうんだ。だから…」
ハルがそれ以上口にする前に、そのうるさい唇へ強引に自分の唇を押し付けた。
暗いからよく見えはしないけれど、ハルはキョトンとした顔をしている。
「い…から、ハルとしたい…ハルがほしい。俺、おかしくなって…お前がしてくれないと」
「わかった、わかったから…そんな強く引っ張らないでよ、可愛いなぁ」
「うるせ…可愛いって言う、なぁっ…あっ!いきなり、そんな…んっ」
ズボンの上から俺のものを強めに撫でられる。さっき夢精のようなものをしてしまったせいで、そこはグチャグチャと濡れた音を立てた。
妙にしんとした部屋にその音だけが響いて恥ずかしい。
「なんでもう出しちゃったの?」
「それは、ちが…あっ、だって…」
「夢の中で俺とセックスでもしてた?」
聞きなれない単語ではないのに、はっきりセックスとわざとらしく俗っぽい言葉を言われて顔を赤らめる。
「あっ、ん…ん、や、あっ…そんな、やだ」
「もう硬くなってるけど。ていうか、そんな大きい声だしたら隣に聞こえるって」
「んっ…ん、そこ、ばっか…やめろ」
服と擦れていやらしい水音が聞こえる。自分で聞かないようにと思っても、触れられる度にまた溢れ出してしまう。
「俺の事思ってこんなになっちゃうんだ…」
「ちが、ちがう…っあ、あぁっ…」
「否定してるけど体は正直ってやつ?やらしいね」
「や…あっ、はやく…しろ、ばかっ」
入れて欲しいだなんて可愛く懇願することは出来ない。恥ずかしさだとか焦らされて募ったイラつきで乱暴にそう言い放ち睨みつける。
「せっかく気持ちよくさせてあげてるのにそれはないんじゃない?」
「あっ、あ、やっ…声、やだ…」
「我慢しなよ。俺のこと考えてぐちゃぐちゃになったここ、もっと濡らしたい?」
声を必死に抑えるけれど、ハルは容赦なく手の動きを早めて責め立てる。また服を着たまま射精まで追い込まれてしまい、抵抗する気も起きないほど気持ちよくて体は震えるばかりだ。
「んっ、んん…や、ぁ…でる、やだ…んっ」
「いいよ、出しな」
「ん、んっ…あ、あっ、あ…んんっ!」
枕に顔を伏せて、くぐもった声が吸収されていく。
腰だけが未だに震えたままで、肩で息をしながら焦点の合わない目で天井を見つめた。
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