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第2話Encounter
15歳、7月
生きる気力は、無い。
もうすぐ夏休みだからか、教室は騒がしかった。
みんな群がって必死に予定を埋めようとする。
もっとも、俺には関係なかったが。
教室の中で、いや、学校の中で俺は浮いていた。
この学校はここらの地域でもそこそこのレベルだったし、校則が緩いとはいえ、中学の頃につるんでいたような奴らは一人もいない。
生前の母親に半ば強制的に受けさせられた学校だ。
校則違反の金髪、着崩した制服、耳に複数空いたピアス、悪い目付き、注意されてもそれを聞き入れない態度。
この学校で不良生徒というレッテルを貼られるには充分だったようだ。
それでも退学にさせられないのは俺の家の事情を知ってなのか、それともテストの成績だけはいいからなのか…
むしろ中学の頃は170cmあるかないかの身長、筋肉はついていたが細身であった体格、少し中性的とも言える顔のせいで他校の生徒から煽られることが多かったし、恐れられるような見た目ではなかったのだが。
どちらにせよ、寄ってくる者は一人もいない。
常に独りだった。誰とも関わる気がなかったし、どうせそのうち死ぬつもりだったからそれで良かった。
もう家に資産はほとんど残っていない。
生活がまともに出来なくなるのも時間の問題だ。
だから、これでいい。誰とも関わらず、勝手にいなくなっていけばいい。そう思っていた。
そんなことを考えながら、5限が始まる前に教室を出ようと席を立った。そのとき
「すみません、双木勇也 くん…って、いるかな?」
その妙に明るい声と、呼ばれた不良生徒の名前に反応して、教室はざわめき始めた。
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