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第3話Encounter②
なぜ自分がこいつに呼ばれたのかがわからない。
こいつとは面識はなかったはずだ。
この学校の生徒なら誰もが知ってるであろうこの男は小笠原 遥人 。女子から絶大な人気を誇っていたからか、嫌でも毎日その名前を耳にした。
身長は180近くあるだろうか、端正な顔立ちに明るい性格、実家も裕福らしく、非の打ち所がない。俺と接点があるはずなどなかった。
「あ、もしかして、君がマタギくん?」
ついうっかり見つめてしまっていたからか、目が合うと俺の方へと歩み寄ってくる。
「…誰だお前」
もちろん知っていたがあいつの意図が読めず、こう答えるしかなかった。
「あ、俺?俺は小笠原遥人。遥人でいいよ。隣のクラスだからよろしく〜」
鼻につく笑顔でおどけたように話す。
結局意図は掴めない。
「何の用だ」
短く答えると、その明るい調子のまま続けた
「俺じゃんけんで負けて風紀委員になったんだけどさ、ちょっと先生から双木くん呼んでこいって言われてて。来てくれない?」
そういうことか。それなら行く必要はない。
そいつを無視してスタスタとドアに向かって歩いていく。相変わらず教室内はざわついていた。
「え、ちょっと待てよ!頼むよ〜俺だって怒られるの嫌だからさ」
「放っておけよ」
そう吐き捨ててそいつを睨みつけると、周りは急に静かになった。しかし当の本人は何故か笑みを浮かべてついてくる。
「そう言わずにさ、ね?」
不気味なほどの笑顔だった。気分が悪くなったから、相変わらず着いてくる足音を背に、教室を出て屋上へ向かう。
昼休みが終わるチャイムが校内に響き渡っていた。
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