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第5話Roof②

ハルト。確かにあいつらは皆そう言っていた。 俺の推測が正しければ… 「お前…五中の頭、なのか」 「ん〜それはどうだろう。双木くん、高校入ってからはずいぶん大人しくなったな。」 「ふざけるなよ…何の用だ」 まるで笑いを堪えているかのような仕草をしながらこちらを見据えてくる。 一体何が目的だ?喧嘩か…しかし、五中のグループがどうなったかは知らないし、今もまだ活動しているのかさえ明確には分からない。 「さっきから言ってるじゃん。風紀委員なんだってば…あ、もしかして、俺の嘘結構バレてる?」 「何だよ嘘って。いいか、俺は喧嘩はしねぇ。お前だってここの学校で問題起こす気はねえんだろ」 そう。問題など起こしたら即退学間違い無しだ。 それくらいこいつだって分かっているはずだが、非道と言われた五中の頭なら何を考えているかわからない。 「喧嘩…?物騒だなぁ、そんなことじゃないって。まぁ、先生からの呼び出しなんて本当は無かったんだけど。そもそも、双木くんとこの勢力って既に解散してるでしょ?」 「…なんなんだよさっきから!!要件があるならさっさと言え!」 ペースを乱されるのにイラついて、つい声を張り上げる。 授業中だから、校内の人間にも聞こえているだろうか。 「授業中なんだから、静かにしてね?…ねぇ、双木くんの舎弟たち、なんで辞めていったか知ってる?」 「そんなの…知らねえ。俺が気力を失くしたからみんな呆れて」 「えー?皆結構最後まで君のこと慕ってたのになぁ。ああでも確かに、お母さん亡くなっちゃってから双木くん元気なかったもんね?可哀想に…」 「は…?てめぇ、今なんて…」 どういう事だ?何でこいつがそんなことまで知っているのだろう。 母親の死を知っているのは俺と、病院にいた人間だけのはずだ。 「キミの仲間たち、お金で揺すっちゃった」 こいつは、何を言っているんだ…? 「買収したって言った方が伝わりやすいか?慕われてた割には簡単に裏切られるんだね」 「お前…それは本当なんだろうな」 気づいた時には、体は勝手に動いて殴りかかっていた。 少し驚いてはいたが、うまくかわされて拳は空を切る。 「危ないな〜気をつけろよ。俺はさ、きみを助けに来たんだよ?」 「いい加減にしろよ…どういうことか説明しろ!」 「初めて見た時から決めてたんだ…双木勇也は絶対自分のモノにする。今まで望んで手に入らなかったものなんてほとんど無かったんだ。なぁ…」 そいつを見上げると、明らかに今までとは違う顔つきだった。形容のしがたい恐ろしさを纏ったその目に囚われそうになる。 そして俺の耳元へ顔を近づけると低い声で、耳を疑うような言葉を囁いた。 「俺のものになれよ」

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