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第8話Roof⑤

本気で逃げようともがいてみるが、動けば動くほどアザに紐が食い込み、摩擦で擦り傷ができてしまう。 どうやらこれは麻紐のようで、細いから余計にチクチクとした痛みが少しずつ俺を追い詰めていた。 「やっぱり、最近ケンカしてないみたいだから双木くんも落ちぶれちゃったね。いいんだよ、本気で逃げて。まあ、絶対に逃がしたりしないけどね?」 「くそ…っなめやがって…!!」 「こらこら、余計腕に傷ついちゃうよ。俺は全然それでも構わないけど。むしろ、興奮する…もっと顔を歪めてよ、せっかく綺麗な顔なんだからさ…」 〝綺麗な顔〟とこいつに言われると、馬鹿にされているようで腹が立った。 「そうそう、こういうの大事だよね。今飲ませてあげるから待ってて」 そう言うと、またもやポケットから何かを取り出した。 ひとつは透明の液体が入ったプラスチックのボトル、もうひとつはラベル付きのガラスの小瓶。まさか、薬か何かを盛る気なのか? 「即効性で効き目のある媚薬、なんてものは滅多にないからね。今日はちゃんとしたもの持ってないし、手に入りづらいんだよアレ。だから今日はこれね、何かわかる?」 「知るか…んなもん」 「これね、ウォッカなんだ。どこで買ったって言ってたっけな…確かアルコール度数は60…くらい?普通のテキーラでも50そこらのが多いからかなり強めだよね。やばいのは90超えもあるらしいけど…それは流石にねえ?」 「お前、それどうする気だよ…」 酒は飲んだことがない。中学の周りの奴らは飲んでいたが、俺は断っていた。 アルコール依存していた母の影響が大きかったのかもしれない。 ただ、うちの家系は酒に強くないことはよく知っていた。あれを、飲まされたら__ 「どうって、飲むでしょ。考えろよ。あ、なに、未成年だからお酒はダメ〜って感じ?ははっ、不良が何言ってんだって話でしょ」 馬鹿にしたように笑うと、そのボトルの蓋を開けて、何故か小笠原自身が口に含み始めた。 「お前、どういうつもり…っ!!!」 すると、飲み込まず口に含んだまま再び唇を押し付けてくる。いきなりの事で驚き、口移しされたそれを飲んでしまう。 もっとも、倒されている状況だから嫌でも飲み込んでしまうのだが。 むせそうになるのを全て口で塞がれ、息が苦しくなった。 「んっ…んん!!…は…ぁ…やめろ…!」 「ふぅ…俺もきついな。あれ、双木くんお酒まわるの早くない?もう大分出来上がってきてるじゃん」 こいつの言う通り、もう限界に近かった。 抵抗したいのに体の自由が利かなくて、頭の中がチカチカする。意識も朦朧としてきた。 「まずいな…もうちょっとゆっくり攻めていきたかったんだけど、俺の方も持ちそうにないや」 嬉嬉としてそう呟き、俺が着ていたパーカーの裾をゆっくりと捲っていく。 「や…め…ろ」 「まだ抵抗しようとするんだ、可愛いよ」 そのとき、硬くなった小笠原のその〝モノ〟が俺の内ももに当たっているのが分かった。 それと同時に、先ほど口移しをされたときからか、自分のそれも芯を持ち始めてしまっていたことに得体の知れない恐怖を感じた。

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