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第19話Hidden⑧

息を整えて、自分で立とうと小笠原のことを押し返したが、逃がさないとばかりに体を引き寄せられる。その際に傷だらけの手首を掴まれて鈍い痛みがはしった。 「は…なせ、よ」 「ごめん…もうすこし…」 「あっ」 小笠原の手は、いつのまにか俺のものを掴み刺激を与え始めた。既に先走りで濡れていた先端を、指で愛撫される。せっかく終わったと思っていたのに、思い出したように体が熱を帯びて快感を得始めた。 「一緒にイくって難しいのかな…女の子と勝手が違うからわかんないよ、俺…」 「うっ…くっ…やめ、ろ…も、いいだろ…っ」 「良くない。全然良くないよ。双木くん、結構感じやすかったし、ウォッカも効いてたはずなんだけど…ねえ、気持ちよくなかった?」 手首を掴む手に力が込められ、腕の痛みと下に与えられる快感に唇を噛み締める。小笠原はどうやら無意識に力を入れているようで、手首の痛みは徐々に強くなる。 「いっ…手、離せよ…んっ」 「あ、ごめん…でも、これくらいの痛みどうってことないでしょ?ていうか質問に答えてよ。どうだった?俺下手だったかな?」 「…っんなこと、関係…っあっ、やっ…」 「感じてるの、演技だった?そんなことない?」 「はぁ?!っんなわけ、ねぇ、だろ…っ!」 「そう…?じゃあほんとに気持ちよかったんだね、よかった」 何を言ってるんだこいつは。手首を掴む力は幾分か弱くなって痛みは減ったが、その分快感がより明確に伝わってきて耐えられない。体重を預けてしまっているので下手に動くことも出来なかった。 「これ以上はっ…ほんとに、あっ、やめ…ろっ」 「これ以上したらどうなるの?」 「どうって…あっ、んんっ…いや、だっ…」 「言わないとわからないよ。ちゃんと言って?」 先端を指先で弄び、焦らすように弱い刺激を与えてくる。耳元で囁かれると、ぞわぞわとした感覚に襲われて体が震えた。 なんとか顔を上げて、口を開く。言いたくもなかったしこれ以上プライドを捨てたくなかったが、とにかくこの時間が早く終わらせたかった。 「んっ…あ、…ちゃ…から…っ」 「ん…?なに?」 「っく…でちゃう…からっ…」 2回も言わされて顔が熱くなる。自分で言っておいてあとから恥ずかしさがこみ上げてきた。小笠原を見上げて少し睨んだつもりだったが、力が入っていないので気迫なんてものはなかっただろう。目にはすこし涙が溜まっていて、不良という言葉には不相応だった。 格好悪いで済めばいいが、それだけじゃない。今まではガンつけたら相手を怯ませることだってできたのに、今はそのような表情を作ることもできない。 すると、急に小笠原の手の動きが止まった。 まさか本当にやめてくれたのか?顔を見ると俺のことを見つめて呆然としている。 「……ごめん、勃った…」 「…は?」 「そんなのずるくない…?わざとやってんの?」 「わざとって…なんだっ…あ、ちょ、なにしっ…んん」 俺のものに小笠原の硬くなったものがあたる。何回勃ったら気が済むんだこいつは。それだけでも少し気持ち悪いのだが、小笠原はそれをどちらも手で包み込んで刺激を与えてくる。 「っこれ、やばいね…クセになりそう…」 「やっ…あっ、やめろ…よっ…」 びくびくと小笠原のそれが脈打つのが伝わってくる。さっきまで自分の中にこれが入っていたのかと思うとゾッとする。 流石に片手で2人のものを掴むのは厳しかったのか、一度手を離す。ひと安心したのもつかの間、掴んでいた俺の手をそのまま小笠原のものへと宛てがう。自分のものより幾分か大きいそれを掴むのは気が引けたし、なにより他人のものを触るのはほんとうに嫌だった。どうすればいいか分からない訳では無い。ただ、何かを思い出してしまうのが嫌だった。 下半身に目を向けるのは嫌だったし、かといって小笠原の顔を見ると調子が狂ってしまいそうで見ていられない。小笠原の鎖骨あたりに額をあてて目を瞑った。 「…俺の、触って。今度こそ、一緒にイこ…?」 また耳元で囁かれる。小笠原は、片手で俺のものを扱いて、空いた方の腕は俺の腰に回した。 言われたから仕方なく小笠原のものを扱く。刺激を加えると息が荒くなるのがわかった。もう片方の手は行き場がなく、無意識に小笠原の腰あたりの服を掴んでいた。 「んっ…あ、あっ、んん…う」 「まって…んっ…双木くん、なんかうまくない…っ?」 「ん…んっ気のせ…い、んっ」 「指…細いけど、骨が角張ってて…いいね」 確かに、小笠原の指と比べると関節の骨がよく目立つ指だった。しょっちゅう喧嘩をしていたから仕方がないのかもしれない。 さっさと達してしまえばいいと思い、俺も手の動きをはやめて搾るように指を動かした。 「あ、ちょっと…ね、双木くん、なんでそんなにっ…うっ…」 「んっ…ん…はや、く…イけよ…っ」 「これ、やばい…っめちゃくちゃ気持ちいい」 やはり遅漏気味なのか、小笠原はなかなか達する兆しを見せない。目を瞑っているから、どんな顔をしているのかは分からないが、確かに感じてはいるはずだった。どこで小笠原が息を荒くするのか感じ取りながら探っていく。すると次第に声はもっと苦しそうなものに変わってきた。 しかし俺の方もそろそろ限界だ。視界が閉ざされている分どう責められているかわからないし、触られる感覚が過敏に伝わってくる気がする。 一緒に達してやるものかと、反抗心からひたすらに手の動きをはやめた。小笠原も、そろそろ限界のはずであった。

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