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第26話Scoured②

小笠原は、俺を抱きしめたまま、指を下半身まで滑らせて穴にあてがった。 思わず体が震えて拒否反応を示すが、また強く抱きしめられてそれを制された。 「中、ちゃんと洗うからちょっとだけ我慢してね…」 「ん…っや…やだ…」 「じっとして。後で辛いのは双木くんのほうだよ。無理に指で掻き出すと傷つけちゃうから…シャワー使うね」 そう言うと、指でゆっくりとそこを広げた。少し切れていたのか痛みがはしる。それだけでも恥ずかしくて辛かったが、中から小笠原が出したものが出てくるのがわかってよりいっそう逃げ出したくなる。しかしそれを許してはくれず、逃げないようにしっかりとホールドされていた。 穴を広げたまま、ぬるいシャワーのお湯をそこへあてがうと、中にはいってくるのがわかった。 少しお湯を入れてから離し、また囁かれる。 「ちょっと苦しいかもしれないけど、ゆっくり力抜いて。」 言われた通り力を抜くと、腹を小笠原に押されて今度は力が入る。力むと、穴から先程入れたお湯が出てくるのがわかる。それを見られているのかと思うと死ぬほど恥ずかしくて、ぎりぎりと歯を噛み締めた。 「うっ…くっ…んん…」 「苦しかったら、どっか噛んでていいよ」 噛むつもりはなかったのだが、そう言われると無意識に小笠原の肩を噛んだ。小笠原も痛みに顔を歪めるが、すぐに優しく笑う。 数回その工程を繰り返し、小笠原はシャワーで俺と自分の体をよく流した。 いつの間にか小笠原の肩には俺の噛み跡がいくつか残ってしまっている。 「ぁ…わりぃ…俺…」 「気にしないで、大丈夫だから」 そう言うと、再びぎゅっと抱きしめてくる。 小笠原のものが硬くなっているのが分かったが、あいつなりに我慢をしているのかもしれない。苦しそうな顔をしているのが伺える。 耳元では少し荒い息遣いが聞こえてくる。つらそうな声で、小笠原が呟く。 「ねぇ…今は、我慢しておこうと思うんだけど……キスだけ、してもいい?」 顔を見ると、切なそうな表情だった。その顔で見つめられると何も言えなくなる。どうせ俺には拒否権がないのに、どうしてわざわざ質問をしてくるのだろうか。すこし、ずるいと思った。 間を置いて、俯いて暫く考え、首を縦に振った。 すると間入れず、小笠原が唇に噛み付くようなキスをする。少しずつ舌が侵入してきて、絡みつく。溶かされるように気持ちが良くて、自然と自分の舌をあいつの舌と絡めるように動かす。 一度受け入れてしまうと、お互い求めるように舌を絡め合う。その形容し難い快感に、心も溶かされていくようだった。 濡れた体が冷えて、それでもお互い体に熱を帯びてその熱を奪い合う。 息継ぎと共にに甘い声が漏れる。水に濡れて目にかかりそうだった前髪をかきあげるように梳かれると、その手の優しさに胸が締め付けられた。 どれくらい時間が経ったかわからないが、しばらくすると小笠原は口を離した。お互いの口から糸が引くのを見るとまた恥ずかしくなる。 「っ…あ、ごめん…余計我慢出来なくなりそうだから、この辺でやめておく…」 「んっ…はぁ…はぁ…」 「体冷えちゃうから、ちょっと湯船浸かって待ってて。着替えとタオル出してくるね。」 そう言って俺の体を抱き上げ、少し広めの浴槽に入れられた。小笠原が浴室から出ていくと、一人になる。 まだ体が火照っている気がして、熱い。 手首の傷がしみるので、浴槽の淵に腕をかけた。下半身からも痛みが伴う。恐らく切れてしまったところだろう。 今日はいろいろ起こりすぎた。ほとんどはあの男のせいなのだが、自分も何度か求めてしまったのだからそこは言い逃れができない。さっきも…不本意ながら凄く気持ちがよかったし、自分からも舌を絡めてしまった。もしかしたら、まだ酒が残っているのかもしれない。あの男、小笠原におかしくされてしまった。 そんなことを思っていると浴室のドアが開く。 小笠原は既にTシャツとスウェットを着ていた。 「ごめん、着られそうなもの探したんだけど俺の中学ジャージくらいしか無かった。パンツはちゃんと未開封のあるからそれ使ってね。歯ブラシも買ってあるから出たら歯磨くといいよ。」 「…わかった」 未開封の下着と歯ブラシに関してはどうしてあるのか疑問だがつっこまないほうがいいのだろう。 小笠原はバスタオルを広げて待ち構えている。自分で拭けるから別にいいのだがきっと言っても聞かないだろう。 観念して浴室を出ると、バスタオルに包まれる。 体をくまなく拭かれ、髪の毛の水分をタオルでとると、俺の肩にかけた。 「ちょっと両手出して。」 痛かったので一瞬迷ったが、言われた通り両手を差し出す。未だに痛々しい色をしていた。 「擦り傷あるとしみたでしょ。ごめんね」 小笠原は軟膏のようなものを手にとると、手首の傷へと塗りこんだ。時々痛くて顔をしかめると嬉しそうに笑うので、あまり顔に出さないように気を使った。 「じゃあ、後ろ向いて洗面台に手ついてもらってもいい?…そう、そのまま」 そう言うと、小笠原がしゃがんだ気配がする。そして下半身に手が触れると、切れた穴のあたりにも軟膏を塗り込まれる。その刺激と僅かな痛みに体がビクっと反応する。 「ごめん、我慢してて…あーやっぱ切れてるかぁ…痛い?」 「んっ…別に…」 「そう…?」 痛いというのも癪だったので嘘をつくと、軟膏のついた指をそのまま中に侵入させてくる。 流石にいきなりだったので痛みがはしった。 「い゛っ…?!」 「やっぱり痛いんじゃん。無理しないで」 「無理…してなっ…」 「……ねえ、ここに入れたのって俺が初めて?」 「は…、当たり前だろっ…」 「…そう…あ〜ダメだ、これ以上は俺の方がもたない」 指が引き抜かれるとまた体が反応した。 息を整えて、小笠原から渡されたジャージを受け取る。五中のものだったので見たことがあった、中学のジャージらしい紺色のものだ。『小笠原』と書かれている。しかし三年間使っている割には綺麗だ。着てみると、ひと回り大きかったので少し複雑な気分になった。 「俺中学の時は部活も入ってなかったから。結構綺麗でしょ。あれ、ちょっと大きかった?てっきり中学のときのおれもそれくらいだとおもってたんだけど…可愛いね、こういうの彼ジャージっていうんだっけ?」 「…うるせぇ」 「…高校入ってから伸びたって人もいるから大丈夫だよ」 「余計なお世話だ…」 「怒らないでよ〜髪の毛乾かしてあげるから歯磨いてて」 「髪?別にいい、いつもこのままだし…」 「ダメ。風邪ひくだろ。大体今日は俺のベッドで寝てもらうし、濡れてたら困るんだけど。」 そう言われると何も返せない。話していて気づいたが、小笠原は時々口調が荒くなる時がある。五中の頭だったんだ、おそらくこっちが素なんだろう。 洗面台の上を見ると、確かに新しい歯ブラシがある。言われるがままそれを手に取り、歯を磨き始めた。小笠原はドライヤーで俺の髪の毛を乾かす。ペットかなにかになった気分だった。断じて違うが。 頭を洗ってからだいぶ経っていたのですぐ乾きそうだった。しかし乾かされている間は頭を動かせないので歯ブラシを口に突っ込んだまま終わるのを待つ。 「髪…やっぱ綺麗だね…ワックス使ってないと前髪結構長いし、女の子みたい」 口に歯ブラシをくわえていたし、ドライヤーの音で何を言っているのかは分からなくて何も答えられなかった。 ドライヤーの音が止まったので、口に入っていたものを洗面台に吐き出して口をゆすぐ。前髪が邪魔なので耳にかけた。 ふと横を見ると、小笠原は口に手を当てて静止している。 「あ?何見てんだよ…」 「いや……なにその、耳に髪かけるの」 「いや、普通に邪魔だから」 「…めっちゃエロい…」 「殺すぞ」 すぐに髪の毛を元に戻す。目にかかって鬱陶しかったが、こいつが面倒くさい。 「ちょっと俺も髪の毛乾かすから待っててね」 脱衣所の壁にもたれて小笠原が終わるのを待つ。 今ここでこいつをぶっ殺せたらどんなにいいだろうか。でもそんなことをしたらきっとただでは済まされないし、こいつは何回殺しても生き返ってきそうだ。 しかし、見れば見るほど全てが整っているのがわかる。体格は良いがゴリラという訳でもない。線は細めで女が好きそうな体型だ。髪が濡れていてもなお爽やかで、すこし艶っぽい。だがこいつの本性は最悪だ。だからこそ余計に腹が立つ。家柄にも容姿にもすべて恵まれていて、やはり住む世界の違いを感じる。それなのにどうしてこいつはそれを全て悪用するんだ。 俺の視線に気づいたのか、ドライヤーを終えてこちらを振り返る。 「なに、そんなに見つめちゃって。えっちする?」 「死ね…!」 「もう、そればっかりじゃん〜。そろそろ寝る?今日はなんもしないから一緒に寝よう。まだ双木くんの布団届いてないから。」 そう言って腕を引かれる。傷がある手首は触らないように気を使っているらしい。それだけで別に好感を持ったわけではないが。 しかしその前にどうしても許せないことがあったので口を開く。 「おい、ドライヤーコード抜いてちゃんとしまえ。あと制服も脱いだなら自分で持っていけよ。」 「…はーい…お母さん」 「誰がお母さんだ」

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