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第33話Aphrodisiac⑤

個室の中に押し込まれると、腰が抜けてそこに座り込んでしまう。息が苦しい、体が熱い。だめだった。開放される機会を得たというのに、小笠原をイかせるどころが自分の方がイキそうになってしまった。 「こっちは移動教室の棟だからそんなに人は来ないけど…授業はやってたみたいだし、あんな大きい声で喘いでたら聞こえた人もいるかもね?まさかこの声が双木くんだなんて誰も思わないだろうな〜」 気持ちが良くて限界を迎えている俺とは対照的に余裕綽々として、へたり込んだ俺を見下す。 声は抑えたつもりなのに、そのように言われてしまうと気が気でない。また、『悲鳴』や『叫び』 ではなく『喘ぎ』と表現され、さらにそれが決して間違いではないのが悔しい。 「アンアン言っちゃって可愛いよね、プライドとか無いの?ちょっと2、3滴ジュースに薬混ぜただけなのに、もうこんなことになってるんだもんね。大嫌いな男にこうやって弄ばれる気持ちはどう?」 「…っくそ…な、んで…!」 「双木くんは足で踏まれて刺激されるのが気持ちいいんだよね。人から見られたり聞かれたりしてるかもしれないのに興奮しちゃうし。双木くんはやっぱりド変態の淫乱だね」 「っ…ちがっ…淫乱じゃなっ…」 「でも、そしたらどうして双木くんのこれは勃っちゃってるのかなぁ」 再び下着の上からそれをぐりぐりと踏まれる。先程まで張り詰めていたそれは、その刺激にまた脈打ち達してしまいそうになる 「っあ…それ、やっ…ん」 「ほら、抑えてもいやらしい声が漏れてるよ」 そしてまた足を離す。刺激が足りなくて、無意識に腰が揺れる。苦しくて、早く刺激が欲しくて、本当に自分にはプライドがないのかとおもった。 それでも今こうなってしまったのは薬のせいだし、さっきだって小笠原に邪魔をされていなければ開放されていたかもしれない。最初からずっと邪魔するつもりだったのだろう。 小笠原は屈むと俺の顎と頭の後ろを持って、半開きになっていた俺の口に吸い付いた。すぐに舌が入ってきて、それだけでもう腰が立たなくなった。力の抜けた俺をお構い無しにその行為を続ける。ここで抵抗しなくてはだめだ。このまま流されてしまう。そう思い、小笠原の唇に歯を立てて噛み付いた。その瞬間小笠原の口は反射的に離れる。見ると、小笠原の口元が少し切れている。 「っ…!……ちょっと噛みグセが悪いね、躾をちゃんとした方がいいかな?抵抗のつもりかもしれないけど、今更なんの意味もないよ。あんまり俺を怒らせないでね」 そう言うと、血の出た口元を舌なめずりするかのように拭いとり、また顔を寄せてくる。そして俺の口のはしに痛みが走ったかと思うと離れていく。小笠原には、今の抵抗は無意味だったのか、むしろ更に興奮しているようにも見えた。 どうすればここから抜け出せるか必死に考えるが、もう考える力もあまり残っていない。 「口のはしにキスマークって斬新でしょ。なんか、アザできたみたいだね、いいじゃん」 跡をつけられたところを自分の手で何気なく撫でてみる。痛みはないが、何故か体が熱くなった。 薬のせいだ。じゃなきゃとっくに殴ってる。男に弄ばされて感じたりしない。 小笠原は満足げに微笑むと、俺を無理やり立ち上がらせて壁に押し付けた。そうしたかと思うと今度は腰を引かれ、手を壁につくように腕を誘導される。 この体勢になっただけで、直感的にまずいと感じて逃げようとするがそれも制される。 「力入らないんでしょ…無理しないで。ていうか、さっき俺のことイかせられなかったんだから、今のきみは俺に従うしかないよね?」 「っでも…お前が邪魔したから…!!」 「はぁ〜?言い訳?ちょっと刺激しただけでイッちゃいそうになる双木くんが悪いんだよ。」 そう言って下着を下にさげていく。これを許したらだめだ、そう思って必死に阻止しようとするが、呆気なく足元まで下ろされてしまう。 俺の足をまた無理やり動かして、足元に落ちたそれを拾い上げた。 「ほら、見て?こんなにぐっちゃぐちゃ。こんなのもう履けないね」 そう言って床へ放り投げた。見せられた下着の中は確かにぐちゃぐちゃで、先走りが染み込んだところは変色していた。一気にカーッとなって熱がこみ上げる。こうして証拠のように突きつけられると言い逃れができない。 だまっていると、腰を掴まれた。そして小笠原の硬くなった、俺の唾液で濡れているそれを尻に擦り付けられる。体が震え、必死に拒否反応をする。 「っほん、とに、それは嫌だ…!」 「何言ってんの、さっきチャンスあげたのに双木くんが勝手にひとりで気持ちよくなったんでしょ?」 「ちが…いや、それは…っ」 昨日の惨劇が頭をよぎる。もうあんな痛い思いをしたくない。そもそも昨日の傷だってまだ治っていないのだから、今入れられたら絶対にまた痛くなる。それに、昨日微かに感じてしまった内からの快感が怖い。それを小笠原に悟られたくなかった。もう男に突っ込まれるなんて地獄を見たくない。抵抗するがバランスが悪く両手を壁に着いてしまう。 そして穴の辺りに小笠原の先端があてがわれた気配があった。やめろと何度も叫ぶが、小笠原のものはズブズブと中に侵入してくる。 「入ったね…」 「あ…あぁっ…いやだ、抜け…よ、やめろ!!」 入口で多少の痛みはあったものの、何かおかしい。昨日は入れられただけでは何ともなかったし、一部を責められなければ感じたりはしなかった。それなのに今は、小笠原のものが入ってくるだけで刺激を受ける。この行為自体に、なにか自分の体が快感を覚えてしまっているようだった。 奥までそれが届くと、体が快感に打ち震える。 「ん…まだキツいね…薬飲んだから、中も気持ちいいでしょ?いやいや言ってても、どんどん飲み込んでいくね。すごい興奮する…」 「あっ!あぁ…いや…抜けよっ…ん!」 「…動くよ」 小笠原が腰を動かし始める。それと共に今日感じたことのない快感が襲ってきた。感じてしまうのが嫌だ、怖い。内壁を擦るように刺激されると、なぜか嬌声が漏れてしまい気持ちいい。 制するつもりで、俺の腰をつかむ小笠原の手を掴むと、何を思いついたのか「そうだ」と言って壁についた俺の両手をひっぱった。 すると両腕が真っ直ぐ後ろに持っていかれ、小笠原に掴まれる。逃げられない屈辱の体勢だった。 小笠原が腕を離さない限りこの行為を受け入れるしかない。腕を引っ張られると奥まで小笠原のものが突いてきてまた声が上がる。 「っああ!やっ、はな、せ…んっ!」 「これ…っいいね…すっげぇ気持ちいい。双木くん、声我慢しないで」 「んっ…あ、やだっんっこんな…あっあ…!」 中の刺激は気持ちいいのに、既に硬くなっていた俺のものは触れられていないためもどかしい。快感から逃れたくて、また自分のものにも刺激が欲しくて腰を動かすと、まるで今の行為を自分も受け入れてしまっているようだった。 そのとき、廊下から少し声が聞こえてくる。どうやら、移動教室から帰ってくる生徒達のようだ。 「双木くん…っ声抑えてね…?」 耳元でそう囁かれ、それだけでビクっと体が震える。そうだ、こんなところで声を出したら絶対に誰かは気づいてしまう。声を押し殺すが、吐息は止まらず激しくなる。 「…っふ…はぁっ…ん…んん」 その声の集団が消え去って安心したかと思うと、そのうちの2人ほどの声がトイレへと向かってくるように感じられた。心臓がバグバクとなる。何年生でどこの誰かも分からない奴にこんな声を聞かれて、見られてしまったら。もう本当にどうしようもなくなる。その思いとは裏腹に、自分の中は締め付けるようぎゅうぎゅうと動く。 「っ…双木くん、締めすぎ…っ!誰かこっちくるから興奮しちゃった…?」 「んっんん…ちがっ…」 すると、やはりその生徒達はトイレに入って来た。小笠原の動きが止まったので必死に声を押し殺す。その生徒達は、用をたしながら何か話している。 『今日の授業めちゃくちゃ眠かったよな』 『ノートとった?俺何も書いてないんだけど』 と、そんな他愛もない話だったが、そんなことはどうでもいいから早く出ていけと切に願った。 いやでも、ここで助けを呼んだら解決するんじゃないか…?そうだ、そうしたら小笠原はもう学校にも来れない。ふとそんなことを考えると、小笠原が耳元で囁く。 「…何考えてるか知らないけど、助けを呼んだところでこんな姿見られちゃっていいの?しかも、感じてる双木くんを見たら好きでやってるようにしか見えないよね…」 悪寒がした。感じてしまったら〝好きでやっているようにしか見えない〟確かにそうかもしれない。何より今の自分のこの姿を誰かに見られるのは自殺も同然だ。 「じゃあ…動くから、我慢してて。ね?」 一瞬その言葉を疑ったが、すぐに小笠原は動き始める。静止していたところから急に動き始めたので思わず声が漏れる。が、小笠原は片手で俺の口を塞いだ。大きなその手は、俺の口元を覆い隠したが、僅かにそこからも声が漏れる。 「んんっん!」 すると、生徒達の会話がピタリと止んだ。 血の気が引いて、心臓が今までにない速さで脈動する。冷や汗が背中を伝っていくのだった。

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