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第35話Aphrodisiac⑦

頭が真っ白だ、何も考えられない。 いや、この体の疼きをどうにかすることしか頭にない。 今小笠原のものが自分の中に入っているというだけでも気持ちいい。動いたらどうなってしまうのだろう。でも動かないとこの疼きは収まらない。でもそうしたら屈してしまうことになる。どうすればいい?頭の中がぐるぐると回る。何もしていないのに吐息がどんどん激しい呼吸になって、身体中全て性感帯になってしまったかのようだ。 そんな俺の理性にとどめを刺すかのように、小笠原が耳元で囁く。 「気持ちよくなりたいんでしょ、我慢しなくていいんだよ。ユウヤ」 名前を呼ばれたのはいつぶりだろう。名前を耳元で囁かれただけで、理性の糸はプツリと切れた。 それと同時に小笠原は腰を動かし始める。とにかく奥にあたって気持ちがよかった。自然と自分も腰を降ってしまう。 「あっあっあぁ!いっ、あっ奥、当たって…っんっあ、いやぁっ!」 「っ…効果抜群だね…あっ…俺も飲んじゃったから、やば…っ」 小笠原も苦しそうに顔を歪める。小笠原の体の熱がこちらまで伝わってきた。 そして胸のあたりにまた別の刺激が加えられ、上半身が仰け反る。 「っあっあぁ!いや、だ!そこっ…あぁ!」 「嫌じゃ、ないでしょ…触ってないのに乳首勃ってるじゃん」 そこをきつく抓られると、痛みと共に大きな快感に襲われた。充血して勃ってしまった乳首に舌を這わされ、小笠原の肩をつかむが離す様子もない。快感から逃れようと頭を振ってもなんの意味もなく、無意識に、一心不乱に腰も動かしてしまう。まだぎりぎり意識を保っているからか、自分の弱いところには当てまいとするがどこを擦っても気持ちがよくて声があがってしまう。 「あっあ、あぁっやだ、あ、も、むり…っなんか、へんっ…あ、いやだ、あっあ!!」 「っ…こっち触ってないのにイきそうなの?」 「ちがっ、あっ、わかんなっ、いやっあっ!」 もう達してしまいそうだったが、自分のものに触れたわけでもないし、射精とは違うなにかが迫ってきている気がした。内側の、中への刺激から、この前感じたようなあの弾けるような感覚が再び起こっていた。昨日はそれと同時に終わったから良かったものの、今はもうその限界を超えている。急にまた小笠原も腰を動かすと、奥へと当たっていっそうその波が迫る。 「あっ、だめ、だめ…っくる、なんかっいやっあっあん、んんっ…!」 「いいよ、イッて。我慢しないで…っ」 「あっ…!あっ、いや、あっあっぁ…んっあぁ!!!」 再び小笠原が深く突き上げると、一瞬目の前が真っ白になった。快感が強すぎてもう訳が分からない。余韻でまだ腰を振ってしまうが、射精した感覚はなかった。中がビクビクと脈動して小笠原のものを締め付けているのが自分でもわかる。 自分に触れる空気も、吐息も、小笠原の肌も、全てが気持ちよかった。 ぐったりとするが、俺のものはまだ刺激が足りないとばかりに硬く、脈を打つ。絶頂という感覚はあるのに射精をしていない、何が起きているか判断がつかなかった。 「はぁっ…!あぁっ…んっ…んう」 「っ…ど、したの…?出ちゃった?」 「あ…っわかんなっ…でて、なっ…でも…っ」 「もしかして…勇也、中でイッちゃった…?」 その言葉に頭が混乱する。小笠原もすこし驚いているようだった。男が中でイくことなんてあるのだろうか?でも実際今自分は絶頂してしまった。確かにその感覚はあったのだから。いまはもう恥ずかしさも悔しさも快感にかき消されてしまっているが、男のもので、今入っている小笠原のものでイかされてしまった。それを認識すると体が熱を増していった気がした。 中でイッたところで疼きはまだ収まっておらず、もっと快感がほしいと全身が求めていた。 最後に残っていた自尊心という名の灯火は、いとも簡単に吹き消されたのだった。 「あっ…あっまだ…うう…ん…」 「っ…なに?急に締めたら、やばいって…」 「足りなっ…あっ…も、おかしくなるっ…」 「…っ待って、中きつい…可愛いよ、勇也」 そう言って、小笠原は俺の頬にキスをすると、腰を激しく動かし始めた。 頭が本当におかしくなったみたいに俺も腰を振った。自分の気持ちいいところに当たるように、必死に無我夢中に乱れる。 「あっぁっ、いぃ…っきもち、いっ!」 「っ…いいよ、俺も気持ちいい…っ、やっぱり淫乱だね、勇也は」 「あっんんっちがっ、ちが、うっいん、らんじゃなっ…あっあぁん!」 小笠原は俺の上半身を引き寄せて抱きしめる。 気持ちが良くてわけがわからなくて、耐えきれない快感に思わず小笠原の肩に何度も噛み付く。 その度に小笠原も僅かに顔を歪めるが、「大丈夫だよ」と言って俺の頭を撫でた。 「好きだよ、勇也。ずっと…っ初めて見た時から…酷いことして、ごめんね…っでも、気持ちの伝え方が、俺、わかんなくて」 小笠原は苦しそうに、切なそうに俺のことを見つめて何度も色んなところにキスを落とした。 小笠原が何を喋っているかは意識が朦朧としていて所々しかわからなかったが、好きだという言葉に胸がズキズキと痛んだ。 小笠原は、限界が近づいているのか息がいっそう荒くなり、俺の硬くなったものを掴んで扱き始めた。やっとそこの快感を得られたので、嬌声もよりいっそう大きくなり、腰の動きも早まった。 「あぁっあっあん…や、あっも、でちゃっあっイく、あっあぁ!」 「俺も…っも、出るっ…」 「あっやだっあっ、中、出さな…っで…あっあんっあっんんっあっあぁ!!」 「っごめ、むり…っ中だすからっ…くっ…!!」 ビクビクと体が震えて、精を吐き出した。小笠原の熱い精は自分の中にドクドクと注ぎ込まれ、それもまた気持ちが良くてどうしようもなかった。 小笠原に抱きつくように倒れ込むと、汗ばんだ体が滑り合う。 昼休みがもうすぐ終わることを知らせる予鈴が聞こえた気がした。

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