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第36話Fever
絶頂を迎えて意識が飛んでしまったのか、目が覚めると保健室にいた。腰と喉が痛い。体はまだ微かに熱を帯びていて、だるい。まるで本当に風邪をひいて熱を出しかのような感覚だった。
原液で飲まされたそれの効果はそう簡単には薄れてくれず、いつの間にか着ていた服が擦れて辛い。
「っはぁ…っあっ…」
時間を確かめようとベッドを降りようとするが、自分の意思で動くことが出来ない。すると、ベッドを囲っていたカーテンが開けられる。教師かもしれないと思って身構えるが、そこに居たのは小笠原だった。その顔を見て、怒りかなにかわからない感情が沸き起こって掴みかかる。
「ってめぇ…っはぁっ…よくも…!」
「ごめんね、無理しないで」
小笠原は全く動じず、俺を宥めるように撫でた。
その手に感じてしまい体が震える。
「っん…ふざけ、んな…」
「まだ薬きれてないから辛いよね。俺、授業出てくるから…待ってられる?」
「っ、いい…帰る」
「そんな状態で帰れるわけないじゃん。てか、ノーパンでしょ?」
「は…っ?なに、が…」
そう言えば、下半身が妙な感じだ。下着の締め付けのようなものを感じない。カーッと顔が熱くなっていく。
「あんなベタベタなの履けないだろうから、俺が預かっておくね」
「なっ…!いい…それでいい、から…返せ!!」
「だめだよ。勇也みたいな淫乱な子にはパンツなんかいらないよね?あんなに汚して…」
「っんっ…名前…やめろよ」
どうやら俺は、耳元で下の名前を呼ばれるのに弱いらしい。それに小笠原も気づいているらしく、わざと名前を呼んでは俺の反応を楽しんでいる。
クスクスと笑うように囁かれる。耳にかかる吐息がくすぐったい。
「だって反応が可愛いんだもん…じゃあ、いい子にして待っててね」
「あっ、待てよ!!っくそ…死ね変態!!」
追いかけようにもこの状態じゃ歩けない。下着を履いていないから迂闊に動くと直接ズボンと擦れてしまう。息があがり、仕方なくベッドに戻る。保健室に誰もいないのが救いだった。
寝れば鎮まるだろうと思い横になる。しかし、体は火照って疼くばかりでちっとも寝られない。一人ベッドの中で悶えるしかなかった。
意識しないようにしても、肌に触れるもの全てに感じてしまい、俺のものはいとも簡単に勃ってしまった。今ここで抜くわけにもいかない、かと言ってトイレまで歩いていくのですら辛い。
保健室内に誰もいないかを確認し、近くの棚に置いてあったティッシュの箱をベッドまで持って行ってカーテンを閉めた。
鼓動が早くなる。やめようかとも思ったが、抜いておかないと気がおかしくなりそうだった。ティッシュを数枚手に取り、ベッドに座って壁にもたれかかる。チャックだけを下ろすと、すぐに自分の硬くなったものが出てくる。少しそれに触れただけで気持ちがよかった。それを上下に擦って刺激を与える。自分で口元を抑えるが甘い声が手の隙間から漏れていくようだった。先走りがだらだらと垂れてきて、勝手に滑りが良くなっていく。
「んっ…あっ…っくそ…こんなっ」
全てあいつのせいだ。薬を盛られていなければ、一人でするなんてことにはならなかったはずなのに。悔しい。あの時解放されていればまた薬を飲まされずに済んだはずだ。後悔ばかりが募る。
しかし、気持ちよくなると脳裏には小笠原の顔しか浮かんでこない。かき消そうと目を瞑っても、あの冷たい目や、切なそうな顔、苦しそうな声が蘇ってくる。俺の方が辛いに決まってるのに、どうしてあいつまで辛そうにするのか分からない。愛し方がわからない、そんなことを言っていた気がする。
刺激を与えて気持ちよくなっても、何か物足りない。中への刺激が足りないのだと、気づきたくなかった。流石に中は自分でいじる訳にはいかない。前への刺激だけで我慢する。知らぬ間に小笠原に触られたことを思い出しながら自分で扱いていた。
「はぁっ…ん…っあっ、ん…っ」
こんなの絶対だめなのに、手が止まらない。
自分の気持ちいいと思うところを好きに刺激できたので、物足りなさはあったもののすぐに出そうだった。
「んっあっ…あっ…あっあっ…んんっ!」
体がビクっと震えて、ティッシュの中に出す。
息を整えながら、チャックを閉めた。一度出すと幾分かマシになる。カーテンを開けてゴミ箱にティッシュを捨てた。やってしまったあとで、罪悪感に襲われる。保健室でなんてことしてるんだ、俺は。再びベッドに腰掛けると、保健室のドアが開く音がして思わずビクっとする。
カーテンから覗いてみると、そこに居たのは小笠原ではなく、あの隣の席の真田だった。
「あれ、双木くんいたんだ!昼休み見に来た時はいなかったからさ」
「あっ…いや…」
昼休みと言われてドキリとする。そうだよな、まさかトイレにいるなんて思わないだろう。思い出して少し顔が熱くなる。
「顔赤いけど大丈夫か?熱測る?」
「っいい…なんで来たんだよ…授業中だろ」
「いや、保健室行ったはずの人がいなくなってたら普通心配するっしょ。先生出張してて自習中だからそのへんは大丈夫」
「…俺は、大丈夫だから。さっさと帰れ」
真田は俺みたいな奴にでも普通に接してくれるから悪い奴ではないのだろうけど、小笠原と仲がいいと聞くと少し気が引ける。というか、まだ薬が効いている状態で人と接したくない。
「せっかくだし俺も一緒にサボろうかな」
「…俺はサボってねぇ」
「じゃあやっぱり具合悪いの?」
「っそういうわけじゃ…」
すると突然、真田はなにか気づいたようにこちらに寄ってくる。掛け布団を掴んで少し身構えた。
「…なぁ、これ…どうしたの?」
真田が俺の口元あたりを指差して言った。
何かあったかと思い自分でも撫でてみる。
「なんか…アザ?みたいになってるけど」
「アザ…?っあ、ちが、これはっ…」
小笠原が口元にキスマークをつけていたのを思い出す。更に顔が赤くなった気がした。
咄嗟に下手な言い訳をする。
「これは、その…虫に刺された」
「あ〜蚊かなんか?内出血してるみたいだけど、痒そうだな」
なんとかこの場を凌ぐことができてひと安心する。しかし真田は帰る気配がない。
保健室にあるデスク周りで探し物をするようにうろうろと歩いていた。
そして何かを見つけてこちらに持ってくる。
「…なんだよ、もう寝るからいいだろ…」
「いやちょっと待ってよ、体温計持ってきたからちゃんと熱測って」
「っ…だからいいって!」
「熱あったら困るのお前だろ?今お前クラスで病弱ヤンキーっていわれてるからね」
「はぁ?!」
「二日も保健室行ってるしな。昨日はみんなただのサボりだと思ってたけど、今日はほんとに具合悪そうだったから…」
少し笑っている。真田はどこか犬のように笑うやつだった。目立つとはいえ、小笠原とはまた違うタイプのようだ。笑われたこと自体は腹が立つ。クラスのやつらもふざけるなよ。これも全て小笠原のせいで…
そう思っていると、真田の手が伸びてきてシャツのボタンを外そうとする。人の手が今触れるのはまずいので必死に拒否をする。学ランの前は閉めていなかったので簡単にシャツのボタンが外される。相手にはそんな気がないのに、手が少し触れただけで震えてしまう。
そして、シャツの上からでも分かるくらいに乳首が硬くなってしまっているのが自分でもわかった。真田にバレていないか気が気でなくて、ボタンを外そうとする手への抵抗が疎かになる。
結局第三ボタンまで外され、無理矢理脇に体温計を挟まれた。落とさないようにと押さえつけられ、体温計のヒヤッとした感触に身震いする。
すぐに測れるタイプだったようで、10秒程で機械音がなる。
「…38.7℃…熱あるじゃん!もう帰った方がいいよ、双木くんの荷物持ってきてあげるね」
「えっ、いや…そんな」
自分でも驚いた。確かに目が覚めてから異常にだるかったが、それは薬のせいだと思っていたからだ。薬で体が火照っただけでなく、どうやら本当に熱を出したらしい。真田は既に保健室を出ていくところだった。シャツのボタンを閉めながら、呆然とする。
そうか、帰れるのか
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