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第47話Carxxx②

小笠原の手に包まれたまま、小笠原のものを掴まされる。状況が分からずただ呆然と自分の手を見つめる。何がしたいんだこいつは。 「はぁ…っ勇也…」 「ちょっ…お前、何して…」 「嬉しいよ…俺のこと、信じてるって…っ」 「いや、あれは…違っ」 うっかり口走ってしまった本音。どうして、俺はこんなやつのことを…考えてもわからない。 小笠原のものが脈動するのが伝わってくる。自分に何かされている訳ではないから、振り解こうかどうか迷う。もちろんこんなこと、不快には変わりないはずなのだが。 手を重ね合わせ、それを扱く。小笠原の苦しそうな吐息がよく聞こえた。 「…っふ…うっ…」 「やめ、ろよ…こんな」 「これで…我慢、するから…好きだよ勇也」 「わかったから…っもう言うなって…」 避けるようにすこし体を反らすと、腰を引き寄せられて耳元で何度も囁かれる。その度に体が震えて耳が熱を帯びていくのがわかった。 「好き…本当に…勇也だけだよ…んっ…好き」 「言わなくて、いいって…っ」 「だって…好きだから…っ」 その言葉は俺の心を溶かしてゆくようだった。惑わされてはだめだ、分かっていてもどんどん相手のペースに巻き込まれていく。 ゆっくりと唇を重ねられて優しく舌を絡められると、自分までも気持ちよくなってしまう。男とキスするのに慣れてしまったのか、嫌なはずだったのに嫌悪感を感じなくなってきた。 ふいに重ねられた小笠原の手が離れると、自分の手も止まる。唇を離し、また耳元に口を寄せられた。 「触って…俺の。手、動かして…」 「い、やだ…」 「勇也、お願い」 「っ……」 そう言われると、自分の手はゆっくりそれを扱いていった。緩急をつけて、時折締めるように。無意識に手を動かす自分に、言い訳のように、こいつが達したらもうこの屈辱は終わりだと言い聞かせた。 「っ勇也…いいよ、好き…」 背中に腕を回され、抱きしめられる。自分の心臓の鼓動がバレてしまいそうで、あまりくっつきたくはなかった。小笠原は、俺の頭に顔を埋めるようにした。そこで深く呼吸しているのがわかる。 「な…に、して…」 「勇也の匂い…」 「やめろよ…気持ちわりぃ…」 頭から今度は首にずらして、また匂いを嗅がれる。きっと汗をかいていたし、他人に嗅がれたくなかった。 「…汗の匂い、いやらしい気分になるね」 「…っうるせぇ!嗅ぐな…っ」 小笠原のものの脈動と呼吸が早くなる。こんなことで興奮するなと思いながら、手の動きを早める。 どれ位の時間こうしているのだろう、本当はそんなに経っていないのかもしれないが、体感時間はとても長く感じる。小笠原はなかなか達する兆しを見せなかったが、ようやく表情が限界といった苦しそうなものに変わっていった。 これで終わると思いながら、手を動かした。 「あっ…勇也…もう、出すよ…」 ビクっとそれが震えると、白濁した液が放出される。シートを汚してはいけないと思い、手のひらでそれを受け止めて、残りのものを出すように搾り取った。自分の手は、小笠原が出したものでベトベトになっている。 小笠原は服を着直すと、息を荒くしたままこちらに話しかけた。 「あ…手に出したそれ、ちゃんと…」 〝 飲め〟と言われる気がして、自分の手についたそれを舌で掬いとる。相変わらず苦くて喉にひっかかる不快感があった。それでも変に逆らったらあいつを刺激しかねないと思い、手が綺麗になるまで舐めとった。前を見ると、小笠原は目を見開いて呆然としている。なにか間違えてしまったか? 「…ティッシュあるから、拭き取ろうって…言おうと思ったんだけど…」 「は……?」 顔が熱くなっていく。つまり俺は、いきなり手についた小笠原のものを舐めはじめたのだ。しかも自主的に。もう本当に死んでしまいたいと思った。むしろ殴ってくれ。 「なんで…そんなことするの?誘ってるってことでいいの?」 「や、ちが…誘ってな…!!」 だめだ、言い逃れできない。そのまま小笠原に押し倒される。先程の行いに対しての恥ずかしさもあり、とにかく暴れた。 「せっかく…我慢したのにっ…そんなことされたら我慢できない…!」 「あれはっ…違う、から!」 「…脱がすよ」 「いやだっ!や、めろ!離せ…!」 車の中で、しかも周りにいつ人が来るかわからない。子供だって来るかもしれないのに、こんなところで犯されるなんて絶対に嫌だ。 必死に抵抗したが、ズボンのベルトが外され、チャックが下ろされていき、まさに下ろされそうになった時、車のロックが外れる音がした。 扉が開き、俺も小笠原も動きを止める。 『お前ら……人の車でなにして…』 『ここ、病院の駐車場だぞ…?』 「早くても…2時間って…」 『予定が変わって今日は早く切り上げたんだよ…』 「えー…」 小笠原の動きが止まっているうちに、急いで服を元に戻す。他の誰かに見られていないだろうか。そもそもこのおっさん二人に見られただけでも充分恥ずかしいのだが。 『お楽しみのところ悪かったが、もう帰るぞ。ほら、席直さねぇと』 「俺は楽しんでねぇ!!!」 まぁ、中断してくれたあたりはこいつらに感謝すべきなのかもしれない。 小笠原は不服そうだった。また家まで帰る途中、耳元でずっと話しかけてきた。 「…さっきの勇也、凄いエロかった…」 「……」 「またやってくれないの…?」 「やらねえよ」 「じゃあ続きは今度ね」 「死ね」 ……………… また数分で小笠原の家に着く。奴らは、またこれから別件の用事があると言ってすぐに帰っていった。家に着いてからは、なにかされるかと思ったが特に何もなく、普通に寝かせられて安静にしていた。 小笠原の部屋からは何かの物音が聞こえてくるが何をしているかいまいち分からない。リビングからダンボールを運んでいるような音もした。 一人でベッドに入っている間、自分が言ったことを頭の中で反芻していた。 俺が信じてる…あいつを? 確かに心のうちではそう思っていた。でもどうして…あいつが優しかったのなんて酷かったことに比べたらほんの少しの間だけなのに。 この前勝手に改心したと思い込んでいたのだろうか。そもそも、自分も捨てられるってなんだよ、あいつのものになったつもりはない。 小笠原が改心するのが先か 俺が小笠原に引き込まれるのが先か 無理矢理犯されることを許容する訳にはいかないし、かといってさっきのようになっても困る。 俺はどうしてこんな事で悩まなければいけないんだろう。考え事をしているうちに、瞼が重くなっていった。

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