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第67話Busy

飯を食べたあとは、勉強をしてまた夕飯を食べて、風呂に入って寝た。自分でも、こんなに規則正しい生活が出来ているのが不思議だ。中学生のころはこうもいかなかったものだ。 今日は国語と生物と家庭科。比較的どれもできる教科だ。国語では絶対に負けられない、ここで高得点を取らなくては。 特に学校内では何事もなくテストが終わった。そういえば上杉とやけに目が合ったがなんだったのだろうか。土日を挟んで月曜火曜とまたテストだ。この土日で残りの数Aと英語もなんとかしよう。 今日も小笠原と一緒に家へ帰った。小笠原曰く今日の教科は生物以外微妙らしいので内心嬉しい。ここで大差をつけられればいいのだが… 昼食をとっているとき、リビングにあった電話が鳴り始めた。家の電話機を使っているところを見たことがなかったので初めてその存在を知る。 「…おい、電話なってるぞ」 「え〜せっかくご飯食べるんだしいいよ…」 「急用だったらどうするんだよ」 「そういうの気にするタイプ?じゃあ勇也がでてよ」 「なんでそうなるんだよ」 「めんどくさくない?あとでかけ直せばいいでしょ」 まだ鳴り止まない電話が気になって仕方ないので、受話器をとった。その電話の声には聞き覚えがある。おそらく虎次郎だろう。 『おい、遥人。お前なんでメール見てねえんだ…遥人?おい、聞こえてんだろ?』 「…俺、小笠原じゃない」 『ん…?あぁ、あのガキか。双木…だったか?遥人はどうした』 「今…飯食ってる」 『ったく…双木、悪いが遥人に俺のメール見るよう言っておいてくれ。ケータイに電話しても全く出ねぇんだよアイツ』 「ああ、わかった」 『おう、頼んだ。飯の最中に悪かったな』 そういうと電話はプツリと切れた。虎次郎に聞きたいことかあったから、今聞いておけばよかったと電話が切れてから思った。 「電話誰からだった?」 「虎次郎」 「上杉さん?どうしたんだろ…」 「メール、見ろって」 「メール…?あぁ、そういえば女の子からの連絡が途絶えなくて通知オフにしてたんだ…ありがとね、勇也」 未だに女から解放されていないのか。まあ、これに関しては自業自得なので仕方ない。 「メール…急用なのか?」 「んー…明日、家に上杉さん来るってさ。大丈夫?」 「ああ、まぁ別に…」 「詳しくは明日話すらしいから内容はわからないや…なんかあったのかな」 まぁ、虎次郎が来たところで俺にはきっと関係ない話だし、部屋に篭っていればいいだろう。茶くらい出した方がいいのか?いやなんで俺がそんな気を使わなくてはならないんだ…でもやっぱり客人だし茶くらい出そう。コーヒーの方がいいだろうか。 その日は勉強をして、また夕飯を食べたあと風呂を終えて日付が変わるまで勉強した。 休日だしゆっくりしてもいいだろうと思い、起き上がってリビングへ降りたのは9時頃だった。 リビングへ行くと、小笠原は既に起きていたようだ。既に着替えており、ソファに座って子供向けアニメを見ていた。 「…何見てんだよ」 「ん?おはよ。久々に見てみたけど、今ってこんなアニメやってるんだね」 アニメなんて久しく見ていなかったし、そもそもテレビ自体あまり見たことがなかった。教育に悪影響だなんだと母親がうるさかったせいかもしれない。 「…虎次郎っていつ来るんだ」 「多分昼過ぎかな。お昼ご飯食べ終わったらちょうどくるくらいだと思うけど…勇也、ちゃんと着替えてね」 「あ?別にいいだろ家ん中くらい」 「いつまでそのだるっだるのTシャツ着るつもりなの…」 「毎日違うの着てるし…」 「そういう問題じゃないから!ルームウェア用意したのに着ないし…それにそのTシャツさぁ…」 そういってTシャツの襟元をぐいっと下に引っ張られる。胸元が露わになりすぐに身を引いた。 「っなにすんだよ!」 「屈んだ時も中見えるし、目のやり場に困るから…」 「男なんだから別にいいだろうが」 「そりゃ普通の男ならいいけど、勇也は特別なの、わかる?」 「わかんねえ」 「はぁ…仕方ないなぁ、ほらおいで〜」 そういうと軽々と俺の体を担ぎ上げてリビングを出る。俺だってそんなに軽い訳では無いはずだから、抱き上げられるたびに悔しい気持ちになる。 「おい!おろせよ、くそっ…」 「暴れたら落とすよ」 「階段で落とすんじゃねえ!危ないだろ!」 「ほんとに天邪鬼…」 部屋のベッドに無造作に落とされ、小笠原はクローゼットから何着か服を引っ張り出してもってくる。 「はい、バンザイして〜」 「自分で着替えるからいい!」 「自分から着替えねぇからやってるんだろ、ほら、大人しくしろよ」 「やめろって…!」 Tシャツはすぐに脱がされ、小笠原がこの前買ってきた服を頭から被せられる。大きめのTシャツ、Tシャツなんだからさっきのと変わらないじゃないか。 「…家の中だしカジュアルでいいよね。はい、これでオッケー」 「このでかいTシャツとジャージだったらさっきのでも変わんねえだろ」 「いや、変わるから。あとジャージじゃなくてジョガーパンツね」 「じょがー…?」 「シルエットはスキニーに似てるけど、ジャージ素材だからラフだし動きやすいでしょ」 何を言ってるのかさっぱりわからない。結局同じじゃないのか?何を着てたって変わらないだろう。客人と言っても相手は虎次郎だし… 「あ…お前朝飯は?」 「まだ。時間的にお昼ご飯と一緒にしちゃっていいや」 「わかった。じゃあ昼飯早めにするから」 そんな会話をして、俺は勉強にとりかかった。英語はどうも苦手だ。文法の勝手が分からない。 「そこ、主語単数だから動詞にsつけて」 「…500kilometersって複数じゃねえの?」 「うーん…なんていうのかな、その距離を一つのかたまりとして考えてみて。もしも現在完了とかで、10yearsが主語でhave passedだった場合は、積み重ねた年数だから複数扱いになるんだけど…」 「面倒くさいな英語って」 「日本語に比べたらマシだよ。とりあえず積み重ねたもの複数扱い、それ以外の時間や距離はひとかたまりって覚えてね」 「…わかった」 小笠原の教え方はやはり的確だった。小さい頃住んでいたというだけで文法までできるようになるものなのだろうか。 「でも文法ってめんどくさいよね〜感覚でやれって言われても難しいし」 「どうやって文法の勉強してるんだ?」 「まぁ参考書とかちょっと読んで、自分なりに解釈してるかな」 「…すごいな」 「え、褒めてる?嬉しい〜。ドイツ語とかも前は勉強してたな〜」 天才というより秀才と言ったほうがいいのか?勉強することに長けているというのは本当に感心する。その中に努力がない訳では無いのだろう、こいつなりにしっかり勉強はしているらしい。 しばらくして時計を見ると、11時になるところだった。そろそろ昼飯を作るかと思い、小笠原を連れてリビングへ降りた。

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