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第73話Preparation
風呂に入ってあらかた洗ったはいいが、どうも中を洗うのに手間取った。小笠原はどうしていただろうか。シャワーを使ったのは覚えているのだが…思い出すと顔が熱くなってくる。
ボディソープを手に取って、そっとそこにあててみるがそれ以上指を進められない。暫く悪戦苦闘し、やっとのことでそこを指で広げる。シャワーをのお湯を入れるのにも時間がかかったが、なんとかしてある程度洗うことが出来た。
洗い終わってものすごい悲壮感に駆られる。自分で洗うのもやはりきつかった。何か入れられたときに痛くないかが不安で、指を一本いれてみる。思いの外痛くなかったので、ぬこうとしたらうっかり指を曲げてしまい中の壁を擦ってしまう。
「ぁ…んっ…」
思わず漏れた声を自分の手でばっと抑える。久しくこの刺激がなかったから体が慣れていなかった。この後耐えられるかどうか早速怪しくなってきたが、そろそろ意を決して出ようと思い立ち上がる。
すると、あることに気づく。さっきの刺激で、自分のものが硬くなってきている。放っておけば戻ると思ったが、そうもいかない。いや、もし小笠原に何かされてすぐに勃ってしまったらまたバカにされる。それなら今のうちに抜いてしまった方がいいのではないか?
これはこれですこし屈辱的だったが、ひとりで抜いてから風呂を出た。
そのとき下着を持ってくるのを忘れたことに気づいたが、どうせ汚れるしいらないだろうと思い、そのままハーフパンツを履いた。
さっきの部屋の前に立ち、右往左往した後に、何も言わずドアを開いた。
「…遅かったね、ちゃんとできた?」
「……ん」
「じゃ、おいで」
少し躊躇してから、小笠原の元へ行く。そばにあった机の上には、ダンボールの中から選んだ玩具が置かれている。さっき抜いたからか、少し冷静になっていて、今日は大丈夫な気がしてきた。
「座って」
言われた通りベッドに座る。またすこし緊張してきた、小笠原は一切そのような表情は見せていない、やはり慣れているのか。また微かにのこっている甘い香りが劈くように胸を刺激する。
「ずっと我慢してたから、少し焦ってるかも…キスしてもいい?」
小笠原にいつもの余裕はなさそうだった。いつの間にか傷の治った手首を優しく握られて、顔を近づけてくる。否と言わせる気は無いのだろう。
「舌、出して」
「ん…」
少し戸惑いながら舌を軽く出すと、小笠原の舌で掬いとるようにして吸い付かれる。そして唇を重ね合わせると同時にゆっくりベッドへ押し倒された。
こうなるともう拒むことは出来ない、後戻りできない。何日ぶりかのキスは、自分でも驚くくらいに気持ちが良かった。仕方なくしてやってるだけだと思いながら、小笠原の舌の動きに応える。
「んっ…んぅっ…はぁっ…」
久しぶり…と言っても俺からしたらそんなに経っていないと思うのだが、小笠原のキスが前以上にしつこい。何度も角度を変えては唇を食み、もうどちらの唾液なのかも分からないくらいに口内をかき回された。
「っはぁ…長いっ…んん」
息継ぎついでに言葉を発したが、それも遮るようにまたキスを続ける。そろそろ慣れてきてしまいそうだったが、男とキスするのに慣れるなんて御免だ。好きでやってるわけじゃないのに、どうしてこんなに…
「っ?!んっんうっ…はっあっ…んん!」
いつの間にか、小笠原の手が服の中に侵入してきている。ただのTシャツ一枚しか着ていないから、なんの抵抗もなく胸元まで手が伸びてくる。爪で引っ掻くように乳首を刺激されると、思わず声が漏れた。
この感覚は屈辱だ。抑えようと思っても体は勝手に感じてしまう。今日は何も使われていないのに、どうして…
やっと小笠原は口を離すが、未だに手は服の中だ。身をよじってもベッドに押さえつけられているのでその刺激から逃れることはできない。
「んっ…や、あっ…も、いいだろ…!」
「なに、そんなに早くオモチャ使ってほしい?」
「ちが…っそ、いう…ことじゃ…なっ」
「今日は家の中だし、声我慢しなくていいんだよ…?」
「誰が、声なんかっ…んっあっ、やめ…っ」
口を開いたのを見計らって、わざと強く抓ったり摘んだりする。声を出してしまうのが悔しくて、必死に口を噤んだ。
それでも刺激は止まなくて、このままではさっき抜いた意味がなくなってしまう。
「んっんん……ちょっ…お前、どこに手、入れて…!」
「ハーフパンツって、裾広いからついつい手入れたくなるよね」
「や、めろ…馬鹿っ!!」
小笠原は、ズボンの裾に手を入れて脚を撫で回す。裸で触られるよりもなんだか恥ずかしかった。脚を撫でる手は少しずつ上に上がっていき、内腿を触られるとくすぐったくて身をよじってしまう。しかしその手つきがいやらしく、執拗に内腿を撫でられ、もどかしくて変な気分になりそうだった。
最悪なことに、その内腿の刺激のせいで俺のものは再び硬さを取り戻してしまった。小笠原はまだ気づいていないようだったがこれも時間の問題だ。更に上まで手を入れると、小笠原は焦ったような表情をする。
「ん…あれ?…布が、ないんだけど…」
「…どうせ、汚れるし…履いてない」
「え……?」
小笠原は、驚嘆の表情を浮かべてフリーズしたかと思うと、いきなり俺の体をベッドの中央まで移動させて自らもベッドに乗り上げた。
「なっ…なにするんだよ!」
「悪いのはそっちでしょ…?」
そういうと、俺に覆いかぶさってズボンを下ろそうとしてくる。なんとなく分かってしまったが、挿入する体勢になろうとしている。必死に自分でズボンを掴んで抵抗するが、ぐいぐいとひっぱられてどんどんウエストのゴムが伸びていく。
「や…めろって!」
「ちょっとだけだから!」
「何がちょっとだよ!ここまでするのは認めてねえからな!!」
「知らないよそんなの、もう我慢出来ないんだって!」
「約束と、ちがっ…」
「約束…?あっ」
今度は急に手がピタリと止まる。その間にズボンを履き直した。
「ごめん、ノーパンに気を取られて完全に約束のこと忘れてた」
「馬鹿じゃねえの」
「本当は今すぐやりたいところだけど、約束通り勇也が選んだオモチャ使っていこっか」
「俺が好きで選んだみたいな言い方すんな」
小笠原はテーブルから、細いもの2本を取ってこちらに見せる。固そうな素材のものと、シリコンのものだ。
「最初はちょっと痛いかもしれないけど、ちゃんとゼリー塗っておけば大丈夫だから。」
「痛い…?そんなに細いのに…」
「ん?ああ、これはお尻にいれるものじゃないよ。ほら、手術とかする時に尿道カテーテル使う人もいるでしょ?」
「尿道…って…」
「だから、ここにいれるんだよ。先に細い方から使っていくから安心して。叔父さんに教わったから安全面も気をつけるし…」
そう言って俺のものを指さす。つまり、あの管をこの中に…?そんなの無理に決まっているじゃないか。固くなっていたはずのものは次第に萎えていく。
汗がダラダラと垂れてくる。そんなの、最初から知っていたら絶対に選ばなかったのに。怖いし、ありえないし、絶対に無理だ。
〝逃げるが勝ち〟という言葉をどこかで聞いたことがある気がする。逃げたあとどうなるかはさておき、今は自分の安全を確保するのが第一だ。小笠原が近くの棚へ歩いていったのを見てすぐに部屋から逃げ出した。
「あ、なんで逃げるの!」
そんな小笠原の声が聞こえてくるが、もちろん止まる訳にはいかない。自分の部屋に入るが鍵をかける暇はない、すぐにクローゼットの中に隠れた。クローゼットはウォークインになっていて、物もそう多くないので窮屈ではなかった。
あまり見たことがなかったので気付かなかったが、ハンガーをかける2本のパイプがある。片方は普通の高さなのだが、もう片方はどうも低すぎる気がする…設計ミスだろうか。
隣の小笠原の部屋から俺を探す声がする。しばらくするとここの部屋の扉が開く。ここで気づいたが、もし今見つかったら袋の鼠だ。クローゼットの扉を抑えながら、息を潜めた。
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