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第74話Preparation②ー遥人ー

ついにこの日が来た。国語は不安だったが、数学で100点をとった時点である程度勝利の確証は得ていた。 オモチャに関しては、きっと俺が選んだら露骨に嫌がるだろうから、勇也にえらばせた。それに、そっちの方が興奮する。きっと自分が選んでいるものが何か知らないんだろうなぁ… といっても、俺だって勇也を好きになるまで男なんて興味なかったし、オモチャも使ったことは無かった。エネマグラなんて初めて聞いた、使い方を調べたり叔父さんに聞いたりしてみたけれど、多分勇也なら全力で嫌がってくれると思う。 「…はは、すごいマニアックなラインナップだね」 「え…そうなのか?」 不安そうに眉を下げる勇也。きっとこれを使ったらぐずぐず泣いて嫌がるんだろうなぁ…今はまだ黙っておこう。 「いや、いいと思うよ」 ー正直、駆け引きに簡単に乗ってくれるとは思わなかった。しかし煽ってみればすんなり受け入れてくれたので、調子に乗って条件を重ねていけば、ほとんどのことは意地を張って約束してくれた。 案外ちょろかったな…自分から喧嘩は売らない、しかし売られた喧嘩は必ず買う。それが双木勇也だ。この単純さを他のやつに利用されないか少し心配ではあるが… 今日はなんて素晴らしい日なのだろうか。勇也の作ったご飯を食べて、勇也とお風呂に入って、その後は…ああ、もう待ちきれない。 セックスをする許可は貰っていなかったような気もするが、勇也をその気にさせてしまえばなんの問題もない。というか、その気にさせなくても俺が我慢出来ずに挿入してしまうきがする。 夕飯の時間になったが、勇也は全く箸が進んでいない。緊張しているのだろうか、そんなところも可愛い。 そういえば、今日はどこの部屋を使おうか。今までまともにベッドなんか使わないでしていたからすっかり考えるのを忘れていた。あそこの部屋を使うか…汚れていないとはいえ、なんとなく勇也をあそこに入れるのは抵抗がある。 「ちょっと来てもらってもいい?」 部屋のドアを開ける。丁度勇也が来る前の日曜に佳代子さんが掃除してくれた。匂いもそれなりに消えているはずだ。 「…寝室?」 「ん〜まぁ、うん」 寝室といえば確かに寝室か…ある意味寝ることが目的だし嘘はついてない。勇也は部屋を見渡して、何かを察したようだった。匂いの話題になると怪訝な顔をされる。この前嗅ぎすぎたか?でも、本当に勇也の匂いは落ち着くし興奮する…なんだか矛盾している気もするけれど。 部屋から出るとき、勇也は心なしか悲しそうな表情を浮かべる。そんなにここでするのが嫌だっただろうか。勇也が嫌がる分にはいいのだが、嫌悪というより哀愁を纏ったような、そんな顔をしている。何を考えているのだろうか。 「そろそろ、お風呂入る?」 「…ほんとに、一緒に…?」 そんなに不安がらなくても、お風呂では何もしないから安心してほしい…多分、多分何もしない。しかし洗浄もしなければならないし…いや、多分何もしないことは無い。何かしらするが安心してほしい。 自分でやると言い張る勇也。下心がバレてしまったか?せっかくテストに勝ったんだからお風呂くらいいいじゃないか。しかし、勇也がひとりで準備をしてくるというのもなかなか良いな… 「…うん、じゃあ俺先に入ってからそこの部屋で待ってるから、準備できたら来て。よくよく考えたら一緒にお風呂入ってそのまま襲っちゃう気がするし」 「…わかった」 ……………… 遅い、勇也が遅すぎる。1時間以上風呂から出てこない。女の子並みに長くないか?中を洗うために頑張っているのだろうか。その姿を想像していたら、普通に勃ってしまった。元々こんなに勃ちやすいわけではなかったのに、どうしたものか… 仕方ないから一発抜いて、ベッドに座って待った。しばらくすると、何も言わずに勇也が入ってくる。また自分のTシャツとハーフパンツを着ている。ルームウェア着ろって言ってるのに。 しかし、まだ少し乾かしきれていない髪の毛も、ゆるい襟元から見える鎖骨も全て艶やかだ。急かすように勇也を隣に座らせて、キスを要求する。断られたところで止めるつもりはなかったが、少し迷いながらも舌を出してくれる。 久しぶりのキス。勇也相手だとどうも止まらない。こうして密着するとまた勇也の匂いがよくわかる。 香水をつけていないボディソープの香り、緊張で少し汗ばんだ肌、キスするだけで真っ赤に染まる顔、グロスもリップもつけていない、薄い桜色の唇。女の子とは違う、でもその何倍も可愛らしくて、また煽情的だった。 もう我慢ができなくて、服の中に手を入れる。少し刺激すれば、可愛い声をあげて嫌がる。嫌がれば嫌がるほど、こちらは興奮するというのに。もっと声が聞きたくてしつこく同じところを責めた。 ジタバタと暴れる足元を見ると、ハーフパンツの広い裾から白い太ももが覗いている。ついつい手を入れたくなってしまい、その脚を撫で回した。くすぐったそうに身をよじる姿がたまらない。 内腿を撫で、さらにその上まで手を伸ばすと、あるはずの下着の感触がない。少し手で探るが、やはりない。 「ん…あれ?…布が、ないんだけど…」 「…どうせ、汚れるし…履いてない」 「え……?」 履いてない?ということは…ノーパン?なんで、どうしてそんなことを?おそらく何も考えていないのだろうが、俺の中の箍が外れてしまった。 勇也をベッドの中央まで移動させて、その上に乗り上げた。ただ勇也を犯したい一心だった。ズボンを下ろそうとするが必死に抵抗される。抵抗されると余計我慢出来ない。 「約束と、ちがっ…」 「約束…?あっ」 そうだ、今の一瞬で完璧に忘れていた。危ない危ない、余計嫌われるところだった。しかしノーパンの勇也がベッドの上にいるのに犯さないことがあるだろうか、いやない、犯す。抑えた俺を褒めて欲しい。 気を取り直してオモチャを手に取る。まずは尿道を責める道具…勇也が最初に選んだもの。きっと細いから選んだのだろうけど、いきなりハードだ。叔父さんから尿道カテーテルの使用について説明を受けたときになんとなく聞いたから、衛生面安全面は配慮できるはずだ。 「尿道…って…」 使用方法を説明すると、真っ赤だった勇也の顔が青ざめていく。怖いのかな、怖いよね…嫌だよね…そんな顔を見ると滾ってしまう。棚の中にゼリーやローションをしまったので、それを取りに行こうとすると、後ろから物音がする。見ると、部屋のドアが開いて勇也は脱走していた。 「あ、なんで逃げるの!」 全く、逃げ足だけは速いんだから。階段を降りる音はしなかったし、おそらく2階のどこかにいるだろう。約束なのに破ったのは勇也の方だ、これは優しくしてあげられない…優しくするつもりなど毛頭なかったけれど。でもこれで酷くしてもいい口実ができた。 使用するオモチャなどを箱に入れて、どこかに隠れた勇也を探しに行った。

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