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第75話Escape
部屋の中を回り、俺の名前を呼びながら小笠原が歩いているのがわかる。そして、俺がいるクローゼットの前でピタリと足音が止んだ。汗が吹き出て、鼓動がありえないくらい早くなる。逃げない方が良かったのではないか、ここで見つかって捕まえられたらもっと酷い目にあわされる気がする。
「勇也…いい子だから出ておいで」
何も答えず、息を殺す。
「…今出てきたら怒らないから」
出ていった方がいいのか?いや、でもそうしたらこいつの思うつぼだ。
「…そう、わかった。勇也はそれでいいんだね」
何がわかったんだよ。どうすればいいんだ、出ても出なくても既に怒ってるじゃないか。
小笠原の足音が離れていく気がした。なんだ、諦めたのか?珍しい…しかし諦めたのならそれでいい、明日に持ち越しになるかもしれない。
次の瞬間
何が起きたのか分からなかった。強い衝撃を受けて、気づけばクローゼットの扉から手を離していた。というより、クローゼットの扉がおかしい。固定されていた金具の部分が経し曲がっている。まさかと思い、へたり座り込んだまま見上げると、小笠原が仁王立ちしていた。
「いってぇ…少しやりすぎたな…」
そう呟いて、壊れたクローゼットの扉に手をかけると、バコッと音を立ててその扉を外した。金具の壊れたそれは簡単に、と言ってもかなりの力は必要とされるはずだが、軽々と外され部屋の床に置かれた。置いたそれを邪魔だとでも言うように蹴って部屋の隅へ追いやる。
「お、お前…なに、して…」
「よくよく考えたら、クローゼットなんて鍵かかってるわけでもないんだし体当たりするほどでもなかったかな…」
まさか、タックルで扉をぶっ壊したのか?普通にこじ開けるほどの力はあるはずなのに…こいつの力を見せつけられると、どうしても怖気づいてしまう。
「はい、隠れんぼはおしまい」
「や…やっぱり、今日は嫌…」
「は?お前に口答えする権利なんてあると思ってんの?」
ギロリと睨みつけられ足がすくむ。冷たい目だが、どこか楽しんでいるようにも見える。まるでその視線に縛られてしまったかのように体が動かない。どうしよう、とりあえず謝ったほうがいいのか?
「…ほん、とに…悪かったって」
「誠意が見えねぇんだよなぁ〜」
「どう…すれば」
「どうすればって…うーん…じゃ、とりあえず脱いで」
「は?!なんでっ…」
「いいだろ、どうせ脱ぐんだから」
確かにそうかもしれないけれど、小笠原の見ている前で服を脱ぐというのは難しい。恥ずかしさや屈辱があるのもそうだが、自ら脱ぐのはなんだか小笠原を受け入れてしまっているようで嫌だった。
「ほら、どうしたの?早くして」
「ちょっと、待っ…」
「待たない」
「っ…でも」
「俺に脱がせてほしい?」
「違…そういうわけじゃ」
相手は男だ、恥ずかしがることない…しかし自分のことを普通の目で見ているわけではないから、やはり脱ぎづらい。
Tシャツの裾を握って、少しずつ捲りあげていく。小笠原にじっと見つめられると、これ以上脱ぎたくなくなる。しかし急かすように顎で指図してくるので、覚悟を決めてTシャツを一気に脱ぎ捨てた。
「やっぱり細いね」
「んっ…触んな…」
しゃがみ込んだ小笠原に腰周りを撫でられる。そのままズボンに手をかけたのだがなかなか下ろせない。自分でも馬鹿だと思う、なぜ下着を履かなくてもいいという結論に至ってしまったのか。ただ、この理論でいくと今服をすべて脱ぐのも理にかなってはいる。
「まだ?」
「ま、まだ…」
「あ、そっか…パンツ履いてないんだったね」
「それは…あっ」
ズボンの上から俺のものに触れると、思わず声が出てしまう。余計に脱ぎづらくなってしまった。萎えていたそこにゆるい刺激が加えられる。
「こうされるの期待してわざと履かなかったの?」
「ち、違っ…脱ぐ、から…やめろっ…」
「こっちはどれくらい我慢したと思ってるの?」
「そ…んなの、知らな」
「…もういいよ、俺がやるから」
そう言うと、下半身から手を離して今度は俺の手首を掴む。嫌な予感がして力を込めて抵抗するがもう遅い。小笠原は片手で箱からロープを取り出す。麻紐よりもずっと丈夫そうな太いものだ。何故そんなものが家にあるのか知らないが、そのロープを俺の手首にきつく巻き付ける。
「いっ…」
「痛い?でも、こうしないと勇也逃げちゃうから」
「っもう、逃げねえ…から、離し…」
「だめ」
がっちりと固定された両手を上に挙げられ、設計ミスかと思っていた低い方のパイプへとロープで結びつけた。座り込んでいる俺が腕をあげたのと丁度合う位置にパイプがある。その為にこの位置についていたというのか?まさか、そんなはずはない。
「うん、丁度いい位置だね。今は廃止されちゃったけど、座高のデータがあって助かったよ」
「は…?なんの話…」
「ちなみに高い方は立ったときの高さに合わせてるよ。167.9cmだったよね?」
「どうして、それ…!」
「データ自体は中学生のときのだからね、高校入ってちょっと伸びた?168.2くらいあるんだっけ」
確かに、小笠原の言う身長は1ミリと違わず測定通りだ。何でそんなことまでこいつが知っているんだ。ということは、やはりこのクローゼットは…
「まぁ、勇也と住む前提で設計してもらったしね。無駄にならなくて良かったよ。ここに隠れるなんて、運命的だね?」
「なんで、そんなことまで…」
「勇也は俺のものになるって決まってるから」
耳元でそう囁かれると、背筋が寒くなった。やはりこいつはおかしい。そのまま唇を重ねられ、ズボンに手をかけられる。必死にもがくが、腕が動かないし立つことも出来ない。
「んっんう…っん!」
「…キスだけで半勃ちするんだね。勃つと入れにくいんだけどなぁ」
「こ、れは…ちが…あっ」
「何が違うの?気持ちよかったんでしょ、俺とのキス」
そう言われて顔が熱くなっていく。ズボンを下げられて露わになったそこは、確かに熱を帯びて硬くなり始めていた。否定しようと首を横に振ると不機嫌そうな顔になる。
「…素直になりなよ」
「うるせぇ…くそ、変態…っ死ね!」
「あーあ、そんなこと言っちゃうんだ?」
「は…?」
「優しくしてあげられないけど、いいよね?」
そう言って、箱から細い棒を取り出す。尿道に入れると言っていたアレだ。そしてなにかジェルのようなものが入った容器を開ける。
「それ…嫌だ…ち、違うやつに、変え…」
「今更できないよ、そんなこと。元はと言えば勇也のせいだし、選んだのだって勇也でしょ?」
「それは、知らなかったから…!」
「どっちにしろ嫌がってもらった方が嬉しいし、そっちのほうがもえるでしょ」
「…そんなの入らない」
「ちゃんと入るよ、そういう風に出来てるんだから。消毒済みだし大丈夫。ごちゃごちゃ言ってないでさっさとやらないと、日付変わっちゃうよ」
「や…ほんとに、やめ…」
硬くなっていたものはまた萎え始めた。それを見計らって、俺のものを持ち上げる。ジェルを手にはつけず、その棒にだけ塗り込めて尿道の入り口に擦り付ける。指で少し入口をぐっと広げて、棒の先端が中に入ってきた。まだ数ミリしか入っていないが、違和感と恐怖に襲われる。
「やだ…やっ…あっ」
「ちゃんとほぐそうね…一気には入れないから大丈夫」
「なんだよ…これっ」
「ステンレス製の尿道ブジーグッズ。細すぎても刺さっちゃうから危ないし、最初は幅5mmで長さは20cmくらいが妥当かなぁ」
「そういう…ことじゃ、なっ…あ」
「シリコンの方は、こっちで慣れてから後で使おうね。なんでこんなことするのか知ってる?」
「んっ…しら、な」
「前立腺刺激するの、これで。中いれたとき、気持ちいいところあったでしょ?これやると中イキしやすくなるんだってさ」
嫌だ。中でなんかイキたくない。そんなことする必要全くない。どうして平気でこんなことできるんだ。テスト期間中こいつの事を認め始めていたというのに、終わったらすぐこれだ。そもそも駆け引きの条件だっておかしい…いや、これに関しては引き受けたのも逃げたのも俺が完全に悪いのだが。
「んん…も、もう嫌だ…」
「まだ入れてないのに、なんで?」
「こ、怖…い、から」
「っ…可愛いけど…!そんなこと言ってもダメだから……そろそろ入れるよ」
怖くなって体を動かそうとするが、動かしたら余計危なそうであまり意味の無い動きばかりしてしまう。きつく縛られたロープが軋んで腕が痛む。
ついにその棒が、尿道の中へゆっくり入っていった。
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