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おぼえているよ
君に出会った日
想いを告げた日
初めて君を抱いた日
君が泣いた日
そして君を愛おしいと思った日。
全て俺の宝物だ。君へと繋がる日、そして俺達の未来へと繋がる日。
目が醒めると隣に隼人がいない。時計を見ればまだ夜が明ける少し前。トイレかな…そう思いながらウトウトと眠りが誘う。誘われるまま瞳を閉じて意識を手放した。
ゆらゆらと波の上に浮かんでいるような心地のいい感覚に酔いしれる。疲れが溜まっていたのはわかっている。片付けなければいけない案件と新事業所の設立。山のような仕事をこなし、少しでも隼人といたいと急いで家路につく。
玄関を開ければ美陽が隼人と一緒に夕飯の支度をしているんだろういい匂いが漂っている。
俺達は他人同士。美陽と俺は連れ子同士で血は繋がっていない。美紅との血の繋がりがあるだけだ。
それなのに俺達は仲良くやっている。隼人の気遣いと美陽の持ち前の明るさが関係をうまく続けている。
「ただいま」
振り返った美紅が一目散に駆けてくる。その後に美陽が美紅を迎えに来る。
そして隼人が躊躇いながらも近づいて「お帰りなさい」と俺の抱擁を待っている。抱きしめて頬にキスをすれば真っ赤に頬を染める。そう毎日。美陽と美紅がいない日はキスを強請るような仕草がたまらなく可愛い。
食卓を囲み、家族団欒で楽しい夕食に片付けは俺も手伝い2人でキッチンに立つ。いくら疲れていてもこれだけは隼人と一緒にすると決めている。嫁を貰った訳じゃない。俺達はパートナーなんだ。隼人だって仕事で疲れて帰ってからの家事は俺と同じ。
これをしない事で責めるようなやつじゃないが、これは俺たちのルール。
お互いを想いあって生きていきたい。
「疲れてるのにありがとう」
必ずそう言ってくれる隼人も想い合う気持ちを忘れない。歳を取って爺さんになってもこの気持ちを忘れてはいけないと思っている。
初めて心が通じ合った日、心に溜め込んでしまう隼人の言葉が聞きたかった。まだまだ心根を口にできる隼人じゃない。それを聞き出して共有する。それが俺のコミュニケーションだと思っている。
「今日は仕事どうだった?」
そう聞けば少しずつ話してくれる。
「琥太郎さん…ありがとう。いつも聞いてくれて」
「隼人のことはなんだって知りたいんだよ。言葉で思ってる事を聞きたいんだ。聞かれたくない事もあるだろうけど」
「聞かれたくない事なんてないです…琥太郎さんは最初から僕の気持ちをちゃんと聞いてくれた。僕は琥太郎さんに何でも話したい、そう、思ってます」
そう思うようになったのは隼人が心を開いてくれたからだ。俺を信頼してくれているからだろうと自負している。
君と寄り添って行くために。こんな楽しみがこれからもずっと続くんだと思うと嬉しさが溢れてくる。傲らない関係でいるために。
ずっと心に忍ばせて、忘れずずっと、おぼえているよ。
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