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特別な日
誕生日、付き合い始めた日、あれやこれやと記念日にしようとすれば沢山ある。
なのに隼人は記念日らしい事をしようとはしないし聞こうともしない。
以前付き合っていた女は、一ヶ月記念日やら初めてデートした記念日やら、なにかとこじつけて記念日を作って、正直言って鬱陶しかった。
女と男の違いなのか、あっさりし過ぎてる。何かしら言って欲しい気さえしてくるんだ。
週末うちに来れば嬉しそうに美紅と遊び一緒に食事を作る。お菓子を作りたいと美紅も交えて楽しく作ってみたりいつも楽しそうに過ごしてる。
その表情を見てる俺は幸せだ。幸せだけどそれだけじゃなんとなく物足りない。
言われると鬱陶しく思うのに言われないと寂しいなんて勝手なものだ。
「隼人、誕生日は?」
「3月15日です」
「俺は?」
「…6月…23日…です…」
ちゃんと知ってるじゃないか。まあ、入園の際の書類に書いたからな。想いを寄せてくれてたなら知ってて当然だ。むしろ知っててもらわないと困る。
「どうしたんですか?急に」
ソファに座り何やら険しい顔で雑誌を見ながら問いに応える。
「記念日…とか気にしないのかと思って」
「記念日?なんのです?」
「付き合って1ヶ月経ったとか…初めてキスして2ヶ月経ったとか…」
言ってて恥ずかしくなってきた。俺が気にしてるみたいじゃないか。いや…気にしてるけど。隼人が気にしなさ過ぎるんだ。
雑誌から視線は俺へと向く。その哀れんだ目はやめてくれないか。
「びっくりです。高嶺さんがそんな事言うなんて。記念日、作りますか?」
作りますか?って言われてはいそうですね。って言うのも変じゃないのか?
「…どっちでもいんだけど…」
「記念日って特別な日って事ですよね?」
「そうだよな、普通は…」
「作ってたらキリありませんよね」
「どうして?」
「だって…僕にとっては特別な日ばかり…だからです」
特別な日ばかり?
「だって…毎週のこの時間、毎朝の僅かな時間でも僕にとっては特別なんです。そんなことを決めてたら365日、毎日です。どうしましょう。特別な日ばかりです」
頬を染め潤んだ瞳で毎日が特別だなんて訴えてくる。
参ったな…可愛い。可愛い過ぎるだろう。やんわりと胸に囲うと擦り寄るように収まってくる。
「毎日か、そうか…じゃ毎日大切にしないとな。隼人との特別な日だから」
「そうですね。毎日大切です」
「じゃ早速、今日はちょっといつもより特別な日にしよう」
抱きしめたままソファに押し倒して隼人を見つめる。何をちょっと特別にするのか察したんだろう。
「高嶺さん…エロオヤジなセリフ…」
そんな事を言いながらでもその腕を伸ばして俺を引き寄せる隼人は潤んだ瞳で俺を誘う。
今日のこの日。また特別な思い出になる。
そんな沢山のちょっと特別な日。
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