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涙の理由

今朝、園に美紅を連れて行くと今まで見たこともないほど憔悴しきった隼人が立っていた。 昨日と一昨日は電話で話したけど、至っていつもと変わりなく楽しそうにその日の出来事を話してくれた。 俺を見るなり大きな瞳に涙を浮かべながら無理矢理の笑顔を作っていた。 「どうした?」 小声で話しかければ左右に首を振る。 ここでは聞けないな… 美紅を預け園を出て、ポケットからスマホを取り出した。 サクサクとメールを打って祈るように額に当てる。 何があったんだろう。誰があんな顔をさせてるんだ?苛立ちとこみ上げてくるモヤモヤでその日は憂鬱な一日だった。 何度も何度もスマホを確認したが連絡はなかった。仕事だからな…しかたがないけど…気になって仕方がない。 美紅の迎えは美陽が行くことになっている。隼人は夕方には仕事を終える。定時に終えてマンションに行こうと決めた。 残業になるだろう仕事を明日に持ち越し急いで会社を後にする。 タクシーを拾い行き先を告げた。隼人からの連絡はまだない。泣いている姿がちらつき、急く気持ちを止められなかった。 タクシーから飛び降りて隼人へと急ぐ。エレベーターは4階を示していてチッと舌打ちをし階段を駈け上がり3階のフロアに着いた。伊達に体を鍛えてるわけじゃない。息を切らすことなく歩き始める。何度か大きく深呼吸をし息を整え、インターフォンを押した。 カチャリと鍵が開く。それと同時にドアを引いた。 飛びつくように隼人は両手を広げ飛び込んできた。その身体を強く抱きしめた。 「高嶺さ…」 泣き切った声で切なく俺を呼ぶ。それが痛々しくて抱き上げて部屋に入っていく。ソファに座り跨ぐように向かい合い、泣き顔をしっかりと見つめた。 「隼人…」 「僕の…死んじゃったんです」 肝心なところが聞き取れず、もう一度聞き直す。 「僕が…買ってた…犬が…昨晩…死んじゃった…」 …犬…愛犬が死んだのか… 少しホッとした自分と、隼人が可愛いがっていただろう様子が思い浮かぶ。 家族だもんな… 心を痛めて、最期を看取ってやれなかった悲しさがリンクする。隼人が悲しい時はそばにいてやりたい。楽しい時も辛い時も。 そんな気持ちになるのは君だけだよ。いつも君と同じ気持ちでいたい。 「沢山泣いたらいいよ」抱きしめてやると、声を上げながら隼人は泣いた。 その身体をずっと抱きしめていた。

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