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ふたりだけの宴
毎年この時期になると会社やジムでチョコを貰う。
俺自身チョコはまあまあの好物だけど、今年は隼人からのチョコを心待ちにしている。
男同士でチョコをプレゼントし合うなんてどうかとも思うがどうしても隼人にはプレゼントしたい。
喜ぶ顔がみたい。可愛く控えめに微笑み頬を染める顔が見たいんだ。
「今日はうちに来てください」
午前中にそんなメッセージが来たもんだからその日は隼人の顔がちらついて仕事にならなかった。
定時になるとP Cの電源を落として帰り支度をする。いつもならあり得ない時間に退社していると開いたドアをわざとノックした美陽がニヤニヤと笑いながら立っていた。
「どこかへお出かけ?」
わかっているくせに俺に言わそうとする意地の悪い妹だ。
「隼人の家に行くから迎えよろしく」
そう言って脇を通り過ぎようとして腕を掴む。
「最近先生の家によく行くけど…来てもらってもいいのよ」
正確には来てもらう家は俺の家だけどな。美陽も隼人がお気に入りのようで隼人が来れば必ず顔をみにくる。普段は食事を作るのが面倒な時だけ来るくせに、現金なものだ。
二人の時間を邪魔されたくないものあるけど隼人のマンションは落ち着くんだ。こじんまりとした部屋は彼のパーソナルスペースに入れる距離感が好きなんだ。
「聞いて見るよ。それじゃ、よろしく」
生返事を返して会社を後にする。いつもは電車で通勤なのだが今日は車で出勤した。帰りが明日になっても車なら早朝に帰ることも可能だから。
容赦なく俺の理性を崩壊させる隼人との時間に車は必須なんだよ。
マンションの隣のパーキングに車を停めて部屋へと急ぐ。エレベーターに飛び乗って指先を小刻みに動かしてエレベーターを急かした。
マンションの合鍵は持っている。先日の急病で何かの時のためにと合鍵をさりげなく渡してくれた。
鍵を回せば開場する金属音が鳴る。それを合図のように足音が近づいてきて開けたと同時に隼人が抱きしめてくれた。
「お帰りなさい。高嶺さん」
抱えるように抱きしめた隼人の唇に触れるだけのキスをして「ただいま」と囁いた。施錠すればもう俺と隼人の時間と空間。誰にも邪魔されな異様にスマホの電源も落とした。
「今日はバレンタインでしょ、ご飯作ったんです。食べませんか?」
もちろん頂くよ。隼人が作ってくれたものなら何でも。
テーブルに所狭しと並ぶ料理に舌鼓を打つ。こんな風に愛する人と食事ができて手を伸ばして触れる距離にいてくれることが堪らなく幸せだと感じる。
「いいですね。一緒に食事が出来るって…幸せです」
同じことを話し想う隼人が愛おしい。
宴は幸せの象徴だよな。喧嘩しながら集う人はいない。こうやって幸せを感じる二人だけの宴。
「この後は愛を確かめ合う宴だな」そう言えば頬を染めながら
「オヤジ臭いです…琥太郎さん」
名前を呼ばれて絆される俺。そんな戯れ合える幸せな宴は、冬の夜長を幸せな時間にしてくれた。
「
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