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覚の章18

「あんまり、妖力が変わってないな」  満月の夜。異世界への扉が開く、その日に、鈴懸と白百合は紫檀の山に来ていた。件の桂の木は、月の光を浴びてどこかきらきらと輝いていた。 「鈴懸、おまえの今の妖力は、織の信頼頼りなんだろう? 未だ妖力に変化がないということは、織が今でもおまえを信じているということかもしれないな」 「……!」 「ただし、玉桂の力をなめてはいけない。確実に織は、おまえの知る織ではなくなっているだろう。そう簡単に織を取り返せると思うな」 「ああ……」  心を惑わす玉桂の力。それに、織の心の中にいる自分は勝てるのだろうか。まだ織の中で、自分は存在しているのだろうか。  触れ合った時間の短い、鈴懸と織。ましてや力は圧倒的に玉桂の方が強い。玉桂のもとにいる織が、再びこちらに戻りたいと願うということは、一縷の希望。最悪、すでに織は玉桂と結婚して、人間ではなくなっているかもしれない。  織を取り戻せるだろうか。再び抱き締めることができるだろうか。  輝く桂の木に、鈴懸が触れる。そうすれば、静かに異界への入り口が開き始めた。

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