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覚の章28(2)

「あぅっ……んぅっ……!」  ぎゅっ、ぎゅっ、と乳首を引っ張られるたびに、ぷしゅっ、ぷしゅっ、と小さな噴水があがる。玉桂は「可愛い。可愛い。」と楽しそうにいいながら、そんな織を見つめていた。 「竜神。おまえはこいつが好きなんだろう? 好きな奴の体くらい自分の思いのまま調教できなくてはな。おまえから奪ったときなんて、まだまだ真新しい処女のような体だったぞ?」 「……なにが、調教だよ。おまえは織の意志なんて無視して、自分勝手に織を汚しただけじゃねえか」 「ん~?」  玉桂が織の乳首をぴんっ、と弾いて、織を解放する。その瞬間に、織は「あぁんっ……!」と甘い声をあげながらくたりと倒れ込んでしまった。ぴく……ぴく……と震えながら、涙を流している。 玉桂はにんまりと笑って、織を抱き上げた。鈴懸に顔が見えるように抱き抱えてやると、織の顎を掴みぬるりと頬を舐めあげる。 「織……竜神は、私がおまえの意志を無視したなどと言っておるぞ……? それは本当なのか?」 「……、」 「ふふ、でたらめだよなあ? おまえは私に「もっともっと」と甘えていたもんな?」 「……っ」  ふ、と織の唇から嗚咽が漏れる。  織は玉桂の言葉を否定できずに、声をあげて泣き出してしまった。いくら玉桂に快楽漬けにされまともな理性が働かない状態にされていたとはいえ、自らの言葉で玉桂にねだったのは事実。鈴懸に見つめられ、自分のそんな浅ましさを実感した織は、悲しくてたまらなかった。 「くく、竜神。おまえが知っている以上に、織は淫らな人間なのだ。知っているか? 織が……おまえの名を呼んで自らの体を慰める、いやらしい人間だということを」 「……っ!? やっ……! い、言わないで……言わないでください……たまかつらさま……」 「織は……「すずかけ、すずかけ」と甘ったるい声で呼びながら、……指を尻穴にずぼずぼといれていたのだ。はは、純粋な人間だとでも思ったか? 織はおまえへの想いすらも、淫らな欲望で染まっているのだ」  とうとう織は玉桂の胸に顔を埋めて、大声をあげて泣いてしまう。  鈴懸に、きたないところを知られてしまった。淫らな自分を知られてしまった。本当に幻滅されてしまう、気持ち悪いって思われてしまう。  そんな恐怖に囚われたのだ。 「……」  玉桂は黙り込む鈴懸を見ると、すうっと目を細める。そして、織を抱えたまま立ち上がると、そのまま鈴懸に背を向けた。 「さあ、わかっただろう。たとえおまえが織を私から奪い返したところで、おまえは織と幸せになんてなれないぞ」  ゆっくり、歩き出す。覚たちもその後ろをついて行くように、鈴懸に背を向けた。  織の泣き声と、覚の重い足音だけがしばらく響き――玉桂が部屋を出ようとしたところで、鈴懸が声をあげる。 「……待てよ」  玉桂が、振り向く。  完全に、勝ち誇った顔で。どうせ淫らな織に絶望した、愕然とした顔をしているだろうと思っていたから……玉桂は、鈴懸の顔を見て驚いた。  鈴懸は、じっと玉桂を見据えて、その瞳に怒りを燃やしていた。 「……おまえ、何織のことを泣かせておいて笑ってんだよ」 「……!」  玉桂が鈴懸の鋭い声色に息を呑んだ瞬間――その顔に、すさまじい早さで火の玉がぶつかった。不意をつかれた玉桂はそれを防ぐこともできずにひるんでしまい、ふらりと体をふらつかせる。その拍子に落ちそうになってしまった織を、鈴懸が勢い良く抱き留めて――その勢いで鈴懸は部屋から飛び出した。 「きっ……貴様……!」 「――っていうか、俺の名前を呼んで自慰をしていたとか、正直すっげえ興奮すんですけど!」 「まっ――待て!」  髪の毛に火が残り、動けないでいる玉桂を横目に、鈴懸は逃げてしまった。ようやく火を消化できたときには、すっかり鈴懸の気配は消えてしまっている。 「……」  玉桂は、下を向き焦げてしまった毛先を見つめる。そして、焦げた着物の襟も。  黙り込み、やがてゆっくりと顔をあげ――鈴懸の逃げた先を、澱んだ瞳でにらみつけた。 「……竜神。殺してやる」

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