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覚の章32(1)

*** 「す、ずかけさま……今、なんて……」  鈴懸に抱きしめられ、「宣言」をされた織は、ぽかんと目を瞬かせた。鈴懸がそっと織を放してその顔をのぞいてみれば……「信じられない」とでも言いたげに目を丸くしている。  鈴懸はため息をついて、織の髪の毛を撫でてやった。そして、今度は目をじっと見つめながら……言う。 「おまえを愛しているって言った」 「えっ……?」 「愛しているよ、織」  織は鈴懸の言葉を頭で反芻しているかのように、しばらくぼーっとしていた。しかし、徐々に言葉の意味を理解できていったのだろう。顔をかあーっと赤くしていって、徐々に目に涙を貯めてゆく。 「あ、あの……鈴懸さま……じょ、冗談は……」 「冗談なわけないだろ。おまえが好きだ、織」 「あっ、……あの、……」  織がふら、と一歩後退する。そして、かたかたと震えだし、目をぎゅっと瞑ってぽろりと涙を流してしまう。あまりの様子にどうしたのかと鈴懸が織に顔を近づければ……織はどんと鈴懸を突き飛ばし、へたりと座り込んでしまった。 「織……? 大丈夫か、どうしたんだ、」 「ま、まってください……話しかけないで……」 「えっ、……織、」 「な、名前を呼ばないで……あっ……」  びくんっ、織が震え、うずくまる。  一瞬、自分が拒絶されているのかと感じた鈴懸は、血の気が引きかけたが……次の瞬間に織が見せた姿に、息を呑んだ。織は肌を赤く染め上げ……そして、ビクッ! ビクッ! と体をふるわせながら、「あぁあっ……!」と甲高く儚い声ををあげたのだ。  ……イったのだ。織は、鈴懸に「愛している」と言われ、イった。 「い、いやっ……みないで……っ……あっ……!」 「織、……大丈夫か、しっかり……」 「はぅっ……、だから、……なまえっ……や、……また、――イクっ……! あっ……」  織は自分の体を抱きしめるようにして、鈴懸の目の前で何度もイってみせた。何が起こっているのかすぐに理解できなかった鈴懸は、ただ驚くばかりでどうするべきかとたじろいでしまう。おそるおそるしゃがみ込んで織の肩にふれてみれば、織はまた「はぁんっ……」と声をあげてイってしまった。 「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……あっ……こんなに、……みだらな、からだで……ごめんなさい……」 「織……大丈夫だ、……どうしたんだ?」 「……、……あなたの、……ことばが、……こえが、……だめ、なんです……イってしまう、から……」 「え……?」 「……あなたに、……愛を囁かれていることを、……想像しながら……ひとりで、してたから……だから……本物の、あなたの、声に……わたしの、体が……」  床に頬をすりつけながらヒクヒクと絶頂に喘ぐ織を見下ろし、鈴懸は言葉で表しようのない興奮が沸き上がるのを感じた。  鈴懸の知らないところで、織が鈴懸を想いながら自慰をしていたという事実。鈴懸の声だけで、織がイってしまったという事実。そのなにもかもが、鈴懸を煽ってしまった。  もっともっと愛をそそぎ込んで、どろどろにイかせて、自分のなかで溺れさせたい。織に窒息するほどの幸福を与えたい。 「――織」  鈴懸はイき続けている織を抱き寄せて、耳元に唇を寄せた。はぁ、はぁと荒く呼吸をする織は、鈴懸の吐息を感じただけでまたイってしまったようだ。鈴懸の背中に爪を立てながら、もがいている。 「本物の俺に愛を囁かれながら抱かれたら……どのくらいイクの?」 「……っ、」 「玉桂に抱かれたときよりも、イかせてやるよ。もう、自分がきたないなんて言わせない。おまえが一番乱れている姿を、俺に見せろ」

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