114 / 224

千歳の章4(2)

「……鈴懸、」 「あっ、……」  織が恥ずかしそうに、ちらりと鈴懸をかえりみる。ほんのりと頬を染めて、長い睫毛に縁取られた瞳で鈴懸を見つめる織は、これから男に抱かれる処女のように淑やかでいて艶かしい。 「……からだ、綺麗にするから、……ね」  とぷ、と片脚を泉につけた、織。鈴懸はごくりと生唾を呑んで、それを見つめていた。  ……と同時に。気付く。  泉に、精霊たちが集まってきている。木々や花、水や土の精霊たちがこの泉へやってきたのだ。そして、泉へ入って行く織を興味深けに見つめている。  織も、精霊たちに気付いたようだ。両脚で泉につかると、伏し目がちの瞳で精霊たちを見遣り……そして、熱っぽく、言う。 「……これから、……鈴懸さまに抱かれるために、体を清めます」  なぜ、この織がこんなにも淫靡なのかと、焦っていたが……理由がわかった。この「体を清める」という行為が、「鈴懸に抱かれるため」の行為だからだ。織はこの泉を見ながら、鈴懸に抱かれることを願っている――だから、こんなにも色っぽい。  精霊たちも、織の異様に艶かしいこの姿に魅了されていた。じっと織を見つめ、期待したような眼差しを送っている。 「鈴懸……見てて。」 「……ッ、」  ちゃぷ、と音をたて、ゆらゆらと水紋を水面に描き、織は泉の中央へ向かってゆく。そして、真ん中に立つと、くるりと振り返り……しっとりと肌を朱に染めて、鈴懸を見つめた。  あまりにも、美しい。そして、淫ら。こんなにも美しい泉の真ん中で、鈴懸のことを想い体を熱くして、織はびんと性器を勃たせて。じ、と鈴懸を見つめていた。 「……ん、」  織がしゃがみこみ、そして、両手で泉の水をすくう。そしてそれを、ゆっくりと……首にかけた。水はつるつると織の肌を滑り、鎖骨に一旦たまって、そしてまた胸へ落ちてゆく。何度か繰り返し水をかけていけば、織の上半身はすっかり泉の水で濡れていった。 「しっかりと……霊障、おとします……ぁ、……ん、ん、……」  織が手のひらでゆっくりと上半身を撫でてゆく。肌に転がる水滴を、しっかりと肌に塗りつけるように、優しく、優しく。 「あ、……は、ぁ……」  水を肌に塗りつけているだけなのだが……鈴懸に抱かれることを希う織の体は、甘ったるく敏感になっていた。この行為も鈴懸に抱かれるためなのだと思うと、自分の手のひらに撫でられているというのに酷く感じてしまう。  織は、自分で体を撫でながら腰をくねくねとさせ、甘い声をあげていた。勃ちあがったものがぴくん……ぴくん……と可愛らしくヒクつき、織を囲う空気を淫らなものへ変貌させてゆく。 「ここ、いっぱい、いじられた、んです……だから、ここ、ていねいに……あっ、ひっ、……」  脚をもじもじさせ、前屈み気味になりながら自分の体を触る織の姿は、あんまりにもいやらしかった。自慰を思わせるようなその様子に、鈴懸も平静を装うのが辛くなってしまう。  織は両手で乳首をつまみ、きゅっ!、と引っ張り上げた。そして、こりこりっ、と指先をこすり合わせるようにして乳首を刺激する。 「ぁっ、あんっ、……みて、鈴懸、……んっ、あっ……ここ、きれいに、ぁひっ、するから、……あぁ、」  乳首はすっかりぷくりとふくらんで、いやらしいものになっていた。そこをくりくりと自らいじめ、織は気持ちよさそうに目を閉じ口を半開きにしている。 「ぁ、はぁ……きもち、い……」 (からだが、……鈴懸のものに、なってく、……)  つまみあげた乳首のあたまを、指の腹でくりくりと撫で回し、くぼみの細部にまで水を揉みこむように、織は入念に乳首をいじっていた。  水が肌を濡らしてゆくたびに自分の体が鈴懸のものになっていくような気がして、織はたまらなく幸せな気分だった。こうして自らの体を撫で回して、感じてしまうのも……すべて、鈴懸のものになるため。こんなにも淫らな行為なのに……織の想いはどこまでも一途であった。  そんな、淫靡で純粋、相反するものを絶妙に重ね生まれ出た美しさ。精霊たちは、息をのむようにして、織を見つめている。 「はぁ、……あぁ、ん……これから、ここ、……きれいにします……」  じわじわと湧き出る快楽に蝕まれ、織のびんと勃ったものからはだらだらと蜜がいっぱい溢れ出ている。それは織の太ももを伝い、もう織の下半身はぬれぬれ。鈴懸がおもわずそのいやらしい下腹部を見つめてしまえば、織は蕩けた眼差しを鈴懸におくり……そして、鈴懸に向かって臀部を向ける。

ともだちにシェアしよう!