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千歳の章5

***  織が霊障を祓い終えた頃には、すっかり日が暮れていた。二人は泉の近くにある、小さな村の宿を訪ねてみる。旅の途中に宿に泊まるというこの行為もなんだか久々で、緊張した。  宿の女将がでてきて、にこにこと穏和な笑顔を浮かべながら訪ねてくる。 「お二人様?」 「……!」  いつものように鈴懸の姿を確認されず、一人として扱われるのかと思い込んでいた織はわずかに驚いて、ぱちくりと目を瞬かせた。  ……もう、すっかり、鈴懸の力が戻ってきている。    すごく、喜ばしいことだ。もう少しで竜の姿になることもできるだろう。自分の鈴懸への想いが彼をそうさせているのだと実感した織は、静かに微笑んだ。 「布団は、二組でいい?」 「……いえ。一組で」

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