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千歳の章6(4)

 「織、」鈴懸は切羽詰まったように織の名を呼び、一気に着物を脱ぎ捨てた。ばさっと剥ぎ取った着物から現れた逞しい肉体が、月光の薄明かりに照らされる。織は裸になった鈴懸を見るなり、はぁ、と息を呑んで、瞳にちかちかと星を散らせた。 「……、惚けた顔して。俺の体に、見惚れてる?」 「……っ、……は、い……」 「は、……それじゃあ、やっと、「同じ」だな」  鈴懸の吐息が荒い。こめかみから、つうと汗が伝っている。  鈴懸はぐ、と織に覆いかぶさると、織と顔の距離を詰めた。そして、熱く太いモノの先端を織のやわらかな孔に押し当てて、吐息を吐き出すようにして囁く。 「俺も、だ……もう、だめだ……おまえの姿を見ていたら、狂いそうだ、……体が熱くて、おかしくなる、」 「すずかけ……」 「ごめんな、「初めて」なのに……優しく、できなくて」 「……ッ、」  ぐぐ、と鈴懸が織のなかに入ってくる。織は鈴懸の顔をじっと見つめながら、飛びそうになるのを堪えていた。  びり、びり、と甘い痺れが体の奥から末端に響いてゆく。織は鈴懸の腕をぎゅーっと掴みながら、息を呑んで……そして。  ずぷんっ! と最奧に鈴懸がはいってきた瞬間。 「はっ、……ァ、……――~~ッ!!」  顔を真っ赤にして、声にならない声をあげながら……イッてしまった。 「挿れただけで、……イッた、のか……織……」 「はぁ、……は、……すずかけ、……はぁ、……」 「……可愛い、……織……」  鈴懸と一つになれた喜び。それは、織にとって、ものすごく大きなものだった。鈴懸の体をぎゅっと抱きしめながら息を整えている織に、鈴懸はぎゅっと胸が苦しくなるようなときめきを覚える。鈴懸も、もちろん織のことを愛しているから。溢れんばかりの、織からの「好き」が、愛おしい。  鈴懸も、一旦織が落ち着くまで。織のことを抱きしめ返し、呼吸を整えた。じっとしていても、燃え上がるように熱い体からは汗が吹き出てきて、熱が冷める気配はないのだが。 「織……」 「ん……」 「好きだ……織……」 「あ、……ん、……」  唇を重る。お互いの唇の味を楽しむように、舌をねぶるように……唇をくっつけたままぐいぐいと何度も角度を変え、ねっとりとした純粋な口付けをした。そして、くちゅくちゅと音がたてられ……その音に合わせるように、大きく、腰が揺れ始める。 「んっ……んっ……」  鼻息だけが、熱を逃がす。息苦しかったが、口付けはしていたかった。織も鈴懸も、きつく相手の身体を抱きしめて、無我夢中で口付けを続ける。淫らに、腰をゆらしながら。恥骨をずりずりとこすり合わせるようにして、わざと腰をいやらしくくねらせるようにして……二人は、腰を振っている。 「んっ、……!」  無我夢中で、求めていた。  織の孔は鈴懸のものを放すまいと言わんばかりに、鈴懸のものに絡みつく。ギチギチと鈴懸のものを締め付けて、奥へ奥へと誘っている。全身が鈴懸を欲しがっていて、もはや、歯止めが効かなかった。織は恥じらいも忘れて、自ら激しく腰を振る。こんなにも気持ちいいことがこの世にあるのかという、それくらいの深い快楽が、織を駆り立てていた。なかにみっちりとはいっている鈴懸のものに、イイところがあたるように腰をぐいぐいと鈴懸に擦り付けている。  鈴懸も、そんな織にますます理性を乱されて、どんどん抽挿を激しくしていった。しっかりと種付けをしたいという本能的な雄の欲求が前へ前へと出てきて、鈴懸は織の奥を目がけて思い切り腰を振り落とす。どすん! と一気に突き上げ、ごりごりと奥を擦りあげ、そして引き抜いて、また、突き上げる。織を自分のものにしたいと、抑えきれない雄の本能が、溢れ出す。 「んんっ、んー……っ、んっ、」 「はァ、……ん、……ん、」  その光景は、まるで、鈴懸に織が喰われているかのようだった。細く白い織の手足が鈴懸のがっしりとした肉体に絡みつく。覆い被さった鈴懸は、華奢な織の体が壊れてしまうのではないかというほどにズンズンと織を突き上げて、止まらない。  それほどに、鈴懸の興奮はすさまじかった。鈴懸は、もう、織のことしか見えていなかった。織が欲しくてたまらなくて仕方なかった。 「あっ……」 「織ッ……」  もっと激しく腰を振りたくて、とうとう唇を離す。開放された唇が寂しかったが、それでも欲求が収まらない。鈴懸は腰を打ち付け易いように織の尻をがしりと掴むと、そのまま勢いよく腰を振りだした。 「あっ、あッ、あっ、あっ、あっ! すずかっ、け、っあっ! あっ!」 「はぁっ、はぁ、織ッ、織っ……!」  パンパンパンパン! と肉のぶつかる音が響き、ものすごい勢いで鈴懸のものが織の奥を突き上げる。織はもう暴れ狂う快楽に引きずり込まれ、されるがままに喘ぐことしかできない。ピュクッ、ピュクッ、と精を吐き出しながら、ひっきりなしに声をあげていた。 「はぁっ、ハァ、っ、……織、……はぁっ、織、っ……! 子ども、産んでくれ、……俺のっ、……織っ、……」 「すずかけっ、アッ、あっ、あっ、おれ、っ、あっ、あっ、」 「織っ、織ッ――、好きだ、織ッ――……!」 「あっ、くるっ、……すずかけのっ、……くるっ、アッ、あぁっ、あぁあぁあッ――……!」  鈴懸は両手で織の腰を掴み、ズンッ! と思い切り突いたかと思うと――ビュルルッ、と大量の精液を織の奥に注ぎ込んだ。織はそれと同時に、ぶしゃーっ! と噴水のように潮吹きをして、恍惚と顔を蕩けさせる。 「織……織……」 「すずかけ……あ、……ぁ、……」  体が、竜だからだろうか。鈴懸の射精は、長かった。織の潮吹きが止み、呼吸が整っても、どくん、どくん……とゆっくり、たくさんの精を織のなかに注いでゆく。  織は、はぁ、はぁ……とゆっくりと息をつきながら、自らの腹に手のひらを乗せて、注がれている感覚に酔っていた。腹の中が熱くなっていくほどに、自分の体が鈴懸のものになっていくような感じがして、たまらなくなって……うっとりとした顔をしながら、精を注がれている最中の腹を凝視する。 「鈴懸……」 「俺の妻になってくれ……織……おまえが愛しくて、苦しい……」 「なりたい……鈴懸……貴方の、妻に……なりたい、鈴懸……」 「織……」  最後まで注ぎ、鈴懸は切なげに目を細め、織に口付けをした。あまりにも熱い鈴懸の求愛に……織は酩酊感すらも覚えて、頭の中を真っ白にしながら、しばらく鈴懸との口付けに夢中になっていた。

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