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千歳の章17
***
「デェトは楽しかった? どう、織さま。千歳、とても優しい人でしょう?」
「……暦さん」
ほんの少しの間の、二人の時間。織が千歳という人物像が掴み始めた頃、再び暦が姿を現した。
「ふふ。また、千歳と会ってくださる?」
暦は織と千歳の姿を認めるなり、嬉しそうに微笑んだ。二人が無事、距離を縮めることができたことを感じ取ったようだ。
――また、千歳と二人の時間を過ごす。鈴懸という恋人を想えば断りたい話なのだが、暦に頼まれてしまっては断れない。暦はそんな織の心情を知ってか知らずか、ただにこにこと笑っている。
「ねえ、千歳。また、織さまとデェトしましょう。私も、貴方が幸せそうな姿を見ていたいわ」
――しかし。織は、そんな暦の瞳に、どこか違和感を覚えてしまった。千歳を見つめ、嬉しそうにしている暦。艷やかな髪の毛を揺らし優雅に微笑む彼女の目は――ただ、千歳を見つめている。
「……っ、暦さん」
「なんでしょう」
「……、……いえ。なんでもないです」
その瞳は、似ている。
織を見つめる千歳の目に、似ていた。
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